今月9日に、貴州省貴陽市で撮影されたという「移動式露天商」の動画がSNSに拡散され、話題を呼んでいる。

まだ若い男性である「店長」は、おそらく自分で手作りしたであろう「屋根つきの焼肉店」をかかえて、移動しながら商売をしているのだ。お腹の前の炭火で、おいしそうに焼いた串焼きは1本10元（約200円）。お客さんも次々に寄って来て、なかなか繁盛しているようだ。

「よくぞやった」の喝采コメントが殺到

場所とりをしていないため、日頃は横暴な「城管」もポカンと口を開けて見ているだけで、手出しできない。串焼きを買ったお客さんが城管の前を通り過ぎていくのは、なかなか胸がすく痛快な光景である。

動画を投稿した人は「実に心が痛む…（当局は）人をここまで追い詰めるなんて」と嘆いた。確かに、今の中国経済は瀕死の重病人のようになっているため、企業の倒産が相次ぎ、新卒学生の就職も極めて難しいのが現状だ。

その結果、街には失業者があふれている。中国共産党の高官は、不正蓄財した金を外国の銀行へ密かに移し、腹の底では常に海外脱出の機会を狙っている。

そのようななかで、中国の庶民は日々懸命に働き、この苦しい時代をなんとしても生き抜こうと頑張っているのだ。

飛び降り自殺者が続出し、社会報復の無差別殺人に走る人間が一部にいても、そうした庶民のたくましさは変わらない。だからこそ、動画へのコメント欄には「これ（移動式）ならば城管らも手出しできまい」「よくぞやった！」などの拍手喝采が殺到している。
 

城管は「制服を着た強盗団」

中国には、無許可での路上販売などを取り締まる「城管（城市管理）」という公的な組織がある。

しかし「城管」の実態は、町のゴロツキを雇って制服を着せたような連中で、その暴力的なふるまいから市民の反感や恨みを買うことも多い。職務にかこつけて、庶民が商売する売り物をごっそり奪い取っていくことも平気でするのだ。まるで、制服を着た強盗団である。

いっぽう、日々を生きていくための生業を欠かせない庶民は、たとえ「城管」の暴力の危険があったとしても、まさに命がけで路上での商売を続けている。

今月6日に、先ほどの「移動式露天商」と同じ貴陽市で撮影されたという動画がある。投稿者によると、この日「制服を着た強盗団」である城管は、直接店の中へ押し入り、スイカを段ボールごと持って行ったという。

しかし、これは明らかにおかしい。城管たちが公務執行する理由は「スイカを売る店舗が、道路を占拠したからだ」というが、ここはどう見ても路上の露店ではなく、ちゃんとした商店である。

動画投稿者は「正義はどこにある？」と嘆き、コメント欄でも「こいつら（城管）は、ただ暑いからスイカが食べたかっただけだろう」などの声が目立つ。自分たちで食べもしただろうが、この城管というゴロツキ連中は、公務で没収した商品を転売して稼ぐのである。

昨年の今頃は、まだ「清零（ゼロコロナ）政策」の最中であった。その間、例えば都市封鎖された上海などでは、郊外からの食料の供給が途絶えたため、集合住宅などは恐るべき飢餓地獄となった。

人々は、近郊の農村で野菜などを入手し、なんとかして市内へ運び込もうとしたが、それを途中で奪い取ったのも「城管」であった。

奪った野菜は、高値で転売して儲けた。平常時ならば2元の新鮮な白菜が、茶色い腐りかけになっても100元にまで高騰した。これが城管のやる「公務」である。

頭から血を流す、90歳のお婆さん

もう一つ、城管に関係するショッキングな動画がSNS上に出回っている。撮影日時や場所などは不明だが、「城管から暴力を受けた」とする野菜売りのお婆さんの動画である。

動画投稿者によると、このお婆さんは90歳になる高齢だという。竹の天秤棒で持てるだけの野菜を街へ運び、ささやかな商売をしていた。お婆さんの足元には、昔ながらの「天秤ばかり」がある。野菜が全部売れたとしても、1日の稼ぎはわずかな金額であろう。

そんな90歳のお婆さんに対して、中共という悪魔の邏卒である城管どもは、何をしたのか！

お婆さんは、割れた頭から血を流し、地面に散乱する売り物の野菜のそばに、悲しげな目をして座り込んでいた。人の世とは思えないような、信じ難い光景である。

この後、お婆さんは無事に帰宅できただろうか。出血のひどさからして、頭の傷はかなり深い。夜中に発熱して、命にかかわるようなことに、なってはいないだろうか。

関連動画には「野菜売りの高齢の老人すら容認できないとは。この国は終わった」といった嘆きのコメントが多数寄せられた。

しかし、これが中国当局が懸命に作り上げようとする「繁栄盛世」の背後にある、現代中国の真実の一幕である。90歳のお婆さんの悲しげな目が、脳裏から離れない。

（城管の暴力を受け、頭から血を流す90歳のお婆さん。悲しげな目で、座り込んでいた）