中国の主要13都市で住宅販売が停滞 売り出し中古物件が激増「とにかく早く手放したい」

2023/07/09
更新: 2023/07/09

中国では今、買い手がつかない不動産物件があふれている。中国の土地は建前上は国家のものなので(個人投資家によって)不動産として売買されるのは、主としてマンションなどの住宅である。

それ以前の社会主義時代(政治体制は現在も同じであるが)には、個人の住宅は職場から「分配」されるものであった。その政府支給方式が1998年ごろに終わり、自分で住宅を買うことが可能になるとともに、それが中国人を支配する「思想」にもなった。

つまり「マイホームを持つ」という物質的条件が、人間的な価値観を上回るようになったのである。

バブル後に残った荒涼たる風景「鬼城」

中国語でバブル景気を「泡沫経済」という。90年代末からおよそ10数年間にわたって狂乱を極めた中国の不動産バブルであったが、すでに数年前には急激に落ち込み、その文字の通り、はかない「泡」となって消えた。

その恐るべき象徴として、中国各地には、未完成のまま放置された高層マンション群など、ゴーストタウンを意味する「鬼城」が立ち並ぶ。建設再開の見込みは全くない。すでに日数が経っているので、鉄筋は錆び、もはや無価値ながれきでしかないのだ。

マイホームをもつことが中国人中間層の長年の夢であったことは理解できる。しかし、誰が初めに火を着けたのか、その住宅を「投機」の対象にしたとたん、人々は理性を失い、狂った猛牛の群れとなって暴走し始めた。

当時、未完成どころか、まだ図面上のものでしかない「高級マンション」を、わざわざ借金してまで見境なく買いあさったのである。「今買えば、将来必ず値が上がる」。そんな悪魔のささやきに、多くの中国人が踊ってしまった。

加えて、想像を絶する「おから工事(手抜き工事)」である。工事というより、もはや意図的な偽装といってもよい。マンションの外壁が落下したり、床が抜け落ちる有様では、そこに住むことさえ「命懸け」になる。

そして2023年の現在。「中国は人口減少期に入った」という、誰にも否定できない鉛のように重い空気感が後押しし、ともかく「手持ちの不動産を早く売却したい」という切迫感が人々を包んでいるのだ。

「安く譲るよ」の叩き売り状態

しかし、皆がそう考えているのでは、そう簡単に売れるものではない。すでに中国では、いわゆる「値崩れ」によって、不動産の価格下落が続いている。

仮に住宅購入を計画している人がいたとしても、今は「もっと待てば、さらに安くなる」の買い手市場であるため、すぐには買わないのだ。そのため、中古物件の取引サイクルは一層長くなり、売り出し物件数も増加の一途をたどっている。

中国の不動産専門紙「中国房地産報」6月28日付は、複数の不動産仲介機構の職員の話を引用して、「今年以来、中古物件の取引件数は芳しくなく(売り待ちの)物件数はどんどん増えている」と報じている。

中国の統計局がこのほど発表したデータによると、今年5月時点で、約70の大中規模の都市のうち「中古不動産価格が、前年同期比で横ばい、あるいは上昇した都市」は15都市にとどまっている。

いわゆる「一線都市」のなかの北京、上海、広州、深センなどの都市では、中古不動産価格がいずれも前年同期比で下落しているという。

中国の上海易居(イーハウス)房地産研究院が公開するデータによると、先月の中国の主要13都市(北京、上海、広州、深セン、重慶、成都、南京、天津、武漢、西安、瀋陽、杭州、合肥)における売り出し中の中古住宅件数は199万件。つまり、今年初めの159万件に比べて、わずか半年で25%も増加したことがわかった。

中国の不動産市場で「物件が多く売りに出されている理由」について、このほど、エポックタイムズの取材に応じた米国の経済学者・黄大衛(Davy J.Wong)氏は、その主な原因として「景気不振のなかでの、市民の消費力の低下」だと指摘した。

「(現在の)生活上の問題を解決するため、さらには将来起こりうるリスクを回避するために、いま不動産の売却を選択する人が増えている」と黄氏は分析している。

 

(中国のとある高層マンション。あちこちの部屋に「安く譲るよ(低价转让)」の幕が掲げられている。SNSより)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。