中国の「恥ずべき新語」は警察から 「激しく抵抗しなかったので、レイプではない」

2023/07/05
更新: 2023/07/05

この頃、華人圏のSNSで「2023年の最新流行語」として候補に上がっている、二つの新語がある。

この二つの新語は、いずれも公的立場の人間が関係した事件から生まれた言葉であるとともに、まことに常識外れな「恥ずべき新語」と言ってよい。

現職警官による性犯罪が発生

一つは「指鼠為鴨(ネズミを指してアヒルと為す)」である。先月、江西省のある大学の学生食堂の料理から「ネズミの頭」が出てきた。責任者は「これは(食べられる)アヒルの首だ」と言って、ごまかそうとした。あまりの稚拙な言い訳にネット上で話題沸騰。責任者や関係者が(多分に形式的ながらも)処分される事態になった。

そして、もう一つは「反抗不夠激烈(激しくは抵抗しなかった)」である。

意味を捕捉しながらこれを日本語に直すと「その時(被害女性の)抵抗の仕方が、激しくはなかった。だからレイプされたのではなく、合意の上だった」となる。

このような理解し難い説明をするのは、なんと警察当局であり、レイプ加害者は現職の警察官であることを、先に申し上げておく。

この件の加害者である警察官は、警察のPR動画にも出演している。犯行の重大性とともに、中国の警察という権力組織がもつ絶望的な隠蔽体質を明らかにするため、以下に加害者の画像と実名を添付する。

勇気ある女性の告発に、たじろぐ警察

6月27日、中国SNSウェイボー(微博)のアカウントユーザー「安眠小狗」は、次のように投稿した。

「私は昨年1月、江蘇省揚州市の蔣王派出所に所属する王建勇という警察官によってレイプされました。事件後に通報しましたが、その警官は、いかなる処分も受けていません」

同投稿によると、事件後、被害女性である「安眠小狗」が110番通報したところ、警察で12時間に及ぶ取り調べを受けたという。

それは、性犯罪の被害を受けた女性に対する事情聴取ではなく、まさに犯人扱いに等しい「取り調べ」だった。

しかも警察は、取り調べ中、家族と連絡を取ろうとする女性から携帯電話を取り上げていた。取り調べ終了後も、ホテルに宿泊する女性を監視下に置いていた。

警察側は、取り調べのなかで「レイプではなく、合意の上だった」と彼女が認めるよう、さかんに誘導したという。

 

画像は、江蘇省揚州の「蔣王派出所」。中国の「派出所」は、日本警察の交番ではなく、公安局の分局にあたる。(中国のネットより)

「浙江日報」傘下のインターネットメディア「潮新聞」はこの女性を取材し、実際の状況が投稿通りであることを確認している。取材に応じた被害女性にしてみれば、自身の辛い記憶をよみがえらせたことは想像に難くない。

警察の当局者は「反抗不夠激烈(激しくは抵抗しなかった)」と言った。

つまり警察は「女性は(その時)激しくは抵抗しなかった。だから、合意の上だった」として、彼女が主張するレイプ被害を認めなかったのである。

警察当局によるこの説明に対して、女性は「まったく納得できない」と訴えている。

警察は「投稿を削除するよう」求めてきた

はじめの投稿の翌日(6月28日)の朝、被害を受けた女性は再度SNSに投稿して、次のことを明らかにした。

「昨日のツイート投稿から1時間足らずで、警察から連絡があった。(警察は)問題解決に協力する、と言いながら、あらゆる手を使って、私に投稿を削除をさせようとしてきた」

被害女性によると、加害者である警官の王建勇には異動や降格の処分が下されたが、警察は女性に対して「激しくは抵抗しなかったこと」および「外傷もなかったこと」を理由に、本件をレイプ事件として認めなかったという。

こうした警察のあまりに理不尽な対応について、SNSに投稿することで訴え続ける女性に対し、警察側は加害者である警官から女性へ直接の謝罪および金銭的な補償をさせるなどで、なんとか収束を図ろうとしているという。

ますます卑劣な態度を見せる警察に対し、被害女性は「私は力もなく、何の後ろ盾もない一般人だ。しかし私は、口を閉ざして従順にふるまう人間にはなりたくない」として、主張を曲げる考えはないことを表明している。

このニュースが報道されてから、事件は世論の注目を集めた。その中には「一般市民が正義を求める道は、あまりにも長い。濡れ衣を晴らすにもネットの力に頼らざるを得ないなら、この世の中は終わっている」といった嘆きの声が広がっている。

なお加害者である王建勇は「揚州の名探偵」のあだ名をもつほど、90年代生まれの若手の模範警官だった。

王は以前、揚州市公安局の顔としてPR動画にも出演しており、関連動画はビリビリ動画などにもアップされている。 
 

揚州市「蔣王派出所」の王建勇。警察のPR動画より。(画像は、中国のネットをもとに大紀元合成)

 

貴州警察:「避妊具つければレイプではない」

レイプ被害をめぐる、警察の「不可解な判断基準」は過去の事件のなかにも見られる。

例えば、2011年5月17日、貴州省畢節市の中学校の英語教師・周琴(仮名、26歳)さんが、地元高官によってレイプされる事件が起きた。

周さんはこの日、勤務する学校の校長の指示により、地元の「国土資源管理所」の所長との「酒の相手」をさせられた。不本意な酒を飲まされて酔った周さんに、この所長がレイプをしたという。

事件の翌日、警察署へ赴いてレイプ被害を訴えた周さんに対し、貴州の地元警察は「(所長が)避妊具(コンドーム)を使用していた」ことを理由に、本件をレイプ事件と認めなかった。

警察から相手にされなかった周さんは、自身が受けた被害をSNSに投稿し、注目を集めた。怒った市民たちは、横断幕などを掲げて事件の「公正な処理」を求めた。

こうした世論の圧力の下、地元政府も重視せざるを得なくなり、ようやく調査チームを立ち上げることになった。そして事件から約2カ月後の7月13日、加害者である王忠貴はレイプ容疑で逮捕されたのである。

性犯罪が、被害を受けた側にとって、あまりにも辛い、極めて卑劣な犯罪であることは言うまでもない。また、事情聴取をする警察官から「被害者にも責任がある」などの心無い発言をされ、さらに精神的被害を受ける「セカンド・レイプ」もある。

本記事に見られるような「警察が加害者」「隠蔽の首謀者」は、もはや言語道断というしかないが、中国の警察には実例としてそれが多数あることは否定できない。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。