外国資本による土地買収をめぐって、その不透明な実態が問題視されている。全国規模での調査は行われておらず、売却先や規模は不明のままだ。こうした現状を懸念し、対策強化を求める声は強まっており、国土買収を想定していない登記法には「重大な欠陥がある」との指摘もある。
なぜ、外国人による土地取得の把握が困難なのか。八千代市議の若松ひろし議員(参政)は、137年前の明治19年に制定された登記法に始まる不動産登記制度に問題があると主張する。我が国に対する外国資本の土地買収を想定しておらず、不動産登記簿謄本には土地所有者の国籍事項が一切記載されていない。
このため、外国資本による土地所有や取引の実態が正確に把握できない状態にある。「外国人風の名前を持ちながら日本国籍を持っていたり、日本の個人や法人を装って外国資本が土地を購入していた場合、その実態を正確に把握することは不可能」だと若松氏は述べる。この問題を解決するためには、不動産登記法の改正が急務だとした。
日本では「重要土地等調査・規制法」が昨年9月から全面施行され、自衛隊や海上保安庁の施設、原子力発電所の敷地などの周囲1キロメートル以内の土地や離島が規制対象となった。しかしこの範囲が十分かどうかについては、議論の余地がある。例えば、米カリフォルニアでは新法が制定され、「重要インフラ施設」から10マイル(約16キロ)以内にある重要不動産の購入が規制対象となる予定だ。
米国も外国資本による土地取得の実態把握は完全ではないが、国防のために思い切った強化策に踏み切った。十数州で中国やロシア、イラン、北朝鮮など敵対的国家の組織や個人による土地購入を制限する法律が相次ぎ成立した。
消極的な政府
安全保障上重要な土地が外国人に買収されることへの懸念が高まるなか、参議院では神谷宗幣議員(参政)が規制に向けた方策を検討するよう訴えている。
神谷議員は質問主意書で、日本での中国人による土地取得と、中国での日本人による土地取得の制度的な不平等について問題提起した。中国では外国人が直接土地を所有することは許されておらず、全ての土地は国家所有あるいは農民の集団所有とされている。
二国間では「相互主義」、つまり相手国の扱いに応じて自国の扱いを決定する考えが慣例とされる。神谷氏は、この考え方に基づいて土地取得に係る規制ができないとした場合、我が国と中国との間には不公平な状態が生まれ、好ましくないとの見解を示した。
これに対し政府の答弁は一般論に終始し、具体的な方針は明らかにされていない。我が国での外国人による土地取得を規制するかどうかは、関連協定や規定によるとし、一概には答えられないとした。
国会では時折外国資本による日本の土地・不動産購入に関する質問が提出されるが、政府は具体的な解決策を示さないでいた。北海道での私有林取得や離島、自衛隊基地周辺の買収に関する質問に対し、政府は明確な回答を出していない。
自衛隊や政治中枢施設では不十分であるとして、国民民主党が規制法案を5月に提出している。研究施設や日本文化に関わる土地についても必要な規制を検討するよう求めた。
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