長尾敬氏は見た 太陽光発電の「おいしい話」に群がる再エネ事業者 外資参入など問題山積み

2023/03/16
更新: 2023/03/15

「これほどおいしいビジネスはないということで、色々な業者がわんさと永田町にやってきた」。長尾敬前衆議院議員はFIT(固定価格買取制度)導入当時の情景をこう振り返った。

民主党政権に端を発する再生可能エネルギー事業は、今や多くの問題点を孕んでいる。重要施設の周辺に太陽光パネルを敷き詰める中国系企業に対して政府は手をこまねき、森林破壊や環境汚染の懸念は高まるばかり。

「電力事業者は50年先、100年先を見据えて事業を進めるべきだ」。長尾氏は生活基盤としての電力インフラの重要性を強調し、政府の対応のあり方に疑問を呈した。

ーー日本の再生可能エネルギー問題についてどのような見解をお持ちか。

再エネそのものを全面否定する気はないが、それぞれの地域に応じた事情があり、原子力や火力、風力、太陽光など複数の電源をエネルギーミックスとすることはいざというときのリスク分散につながる。いっぽう、原子力発電所を止めてまで再エネを推進するのは行き過ぎだ。日本は一年中太陽光線が降り注ぐ国ではなく、絶えず電力を生み出すことはあり得ない。

さらに、太陽光パネルの7割から8割は中国産であり、その原材料となるシリコンの製造過程ではウイグル人の人権侵害が指摘されている。米国をはじめとする先進国は、人権侵害の上に経済が成り立つ問題を重視し、中国製太陽光パネルの輸入に制限をかけている。それでも推進しようとする人の気持ちが僕にはわからない。

ーー太陽光パネルの設置をめぐって、土砂災害や水質汚染の懸念が指摘されている。

東京都でも木を伐採し太陽光パネルを作る構想が出されているが、木は成長するのに数十年の時間を要し、その間に二酸化炭素を吸収し酸素を出してくれる。

太陽光パネルも人工物であるため、いずれは廃棄することになる。しかし廃棄するためのビジネススキームはまだ完成せず、業者は設置を行うだけで廃棄には関知しない。

太陽光パネルには毒性の強い物質が含まれており、山の奥に廃棄すれば土壌を汚染する。設置のために木を切ることもSDGsに反する本末転倒な行為だ。都合のいいところではSDGsを言いながら、都合の悪いところではSDGsを語らない。このようなダブルスタンダード、トリプルスタンダードには本当に辟易とする。

ーーSDGsや再生可能エネルギーに利権の問題は絡むのか。

三浦瑠璃さんの夫が東京地検特捜部に逮捕された。ちょうど一年前、大樹総研というシンクタンクが特捜部の捜査を受けており、今回の逮捕もその一連の流れではないかと思っている。

自民党に入る前、私は10年間民主党に在籍していた。菅直人政権の時に始めたFIT(固定価格買取制度)は、今や買取価格が4分の1になってしまったが、当時はこれほどおいしいビジネスはないということで、色々な業者が永田町にやってきたことを目の当たりにしている。

落選して太陽光パネルビジネスの業界に行った当選同期の元議員もいる。さきほどの大樹総研の研究員として働いている人もいる。私が自民党に入党すると、大樹総研の知り合いからこのように言われた。「長尾さんは清和政策研究会に所属されているが、うちはA先生(自民党重鎮)のところととっても仲がいい。長尾さんの周りの誰かを紹介してほしい」。引き受けるも、ちょうどコロナ流行期となり、昼食会や議員の紹介までいかなかった。

太陽光パネルに限らず、国全体に関わるビジネスを行う際には、永田町や霞ヶ関にロビー活動を行うこと自体どの分野にもみられる。汚職や贈収賄があるなら東京地検特捜部の威信にかけて、徹底的に捜査をしていただきたい。

ーー民主党政権と再生可能エネルギー問題にはどのようなつながりがあるのか。

民主党政権が出発点だった。ただ当時は日本の太陽光パネルが世界一だった。でも非常に高価だった。高価ではあるものの、いまだに当時の太陽光パネルは壊れてない。

私は落選した後、上場企業の社長室長を務めたが、社長から太陽光ビジネスに参入するかしないかの判断を委ねられた。私はかつて民主党に在籍し、FIT(固定価格買取制度)の法律を作った一人だった。

私の結論は「参入すべきでない」だった。いずれ中国の太陽光パネルが参入したら日本は価格競争では勝てず、FIT法による上乗せはあるものの、下降線になればビジネスとして安定性を保てないと考えた。

当時はウイグルで太陽光パネルが作られるということは考えもつかなかった。価格競争に負けるだろうから不参入を決めて、偶然事なきを得た。今日に至るまで、太陽光パネル事業に関わっている旧民主党出身者はたくさんいると思う。

ーー再生可能エネルギー政策の今後はどのようになるのか。

私が太陽光ビジネスに関わろうとしていたときは、人権侵害という概念が全く想像もつかない時代だった。しかし今や完全に人権侵害の上に成り立っている。人権侵害をなくすためには、これ以上買わないようにするしかないだろう。そもそも、原発や火力発電がベースロードであり、再生可能エネルギーだけではベースロード電源になれるはずはない。

ーー上海電力の岩国発電所などは軍事基地の付近に設置されている。どのような対策が必要と考えるか。

そのような場所に上海電力は参入してはいけないというように制限をかける法律はすでにある。それは外為法(外国為替及び外国貿易法)という法律だ。外為法を適用して、注意勧告などをすることはできるが、それをしない現在の政府のあり方に疑問を呈さざるを得ない。

重要施設周辺の土地利用を規制する法律がよく話題に上がるが、こと上海電力の参入に関しては、全く別の法枠組みで規制することができる。政府は「ダメだ」と言えるのに言わない。なぜか。おそらく、言えないようなパワーが働いているのだろう。そうだとしか考えられない。上海電力側からすると、太陽光パネルは何年持つか分からないけど、この瞬間に儲けられればそれでいい。

私の父親は電力会社に勤めていたので、私の体には半分電力マンの血が流れている。通常、生活インフラの一番の基盤となる電力インフラの話になると、事業者としては、目先の10年、20年ではなく、50年先、100年先のことも見据えて、責任を持って進めなければならない。

上海電力はそのようなことを考えてないだろう。米国では規制が厳しいから、簡単にビジネスができる日本に太陽光パネルを持っていき、儲けようとする。日本の場合、それを拒否する法律はあるけれど適用していない。今すぐにでも「ダメ」と言わないといけない。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。
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