米国海洋大気庁(NOAA)によれば、7月、8月、9月は例年より暑くなると予測されており、気温の上昇を問題視する人々にとって、大きな懸念材料となっている。
3月19日、グテーレス国連事務総長は、「地球は救難信号を発している」と述べた。最新の『地球気候情勢報告書』によれば、地球は危機に瀕しているということのようだ。
「化石燃料がもたらす汚染は気候を混乱に陥れている。すべての主要指標で危険信号が鳴り響いている: 昨年は記録的な暑さ、海面水位や海洋表面温度を記録した。中にはチャートを飛び越えてしまった記録もあった」
2023年の一般教書演説で、バイデン大統領は気候を「実存的な脅威」と呼んだ。「現実を直視しよう。あなたの州が赤い州、青い州のどちらであろうと、気候危機は党派を超える問題である」
2024年の演説では「気候危機がなくなったと思っている人はいないと思う。少なくとも、そうでないことを願っている」と語った。
グテーレス氏やバイデン大統領のような政府高官は、現在の気温を過去と比較し、さらに重要な将来の気候政策を策定するために、米国歴史気候学ネットワーク(USHCN)の気温記録(データ)を参照・利用している。
NOAAによると、このUSHCNは「正確で偏りのない最新の歴史的な気候データ」を提供するために設立されたものであり、100年以上にわたって、米国全土の観測所から日々の最高気温と最低気温を記録している。しかし、専門家によれば、観測所がどんどんなくなっているのが問題だと指摘する。
認定コンサルティング気象学者のジョン・シューチャック氏は「観測所は物理的には消えてしまったのだが、魔法のようにデータは報告されている」と語った。
「NOAAは、USHCN観測所のうち、もはや存在しない1218箇所の気温データの30%以上を捏造している」
シューチャック氏はそれらを「ゴースト」観測所と呼んでいる。同氏によると、USHCNの観測所は1957年に最大1218箇所に達したが、1990年以降、機器の老朽化と人員の退職により、稼働する観測所の数が減少し始めた。
NOAAは、周囲の観測所から気温の測定データを取得し、推定値の「E(Estimate)」を付け、ゴースト観測所の平均気温として記録している。
ハートランド研究所の気象学者で環境・気候担当シニアフェローであるアンソニー・ワッツ氏は、「ゴースト観測所のデータが加わったことで、NOAAの月次および年次の報告書は、現実を代表していない」と語る。
「もし類似のプロセスが法廷で使われたら、証拠が汚染されているとして破棄されてしまうだろう」
重要なデータ
NOAAが所蔵するUSHCNデータの完全な記録は、NOAAのウェブサイトで公開されており、産業革命以前からの気温傾向を調査する科学者にとっては、重要なツールとなっている。
米カリフォルニアのソノマ州立大学のジャマール・ムンシ名誉教授は、2017年の論文で、「USHCNの観測所とそのデータの多くは1800年代にまで遡っているため、地球温暖化の研究に広く利用されている」と述べた。
「人為的な地球温暖化という恐怖によって、気温の上昇傾向に大きな関心が集まっている。気温記録の微小な変化でさえも精査され、気候、異常気象、海面上昇に対する影響の大きさとこれらを緩和しようとする排出量削減のコストとが天秤にかけられている」
「世界のエネルギー政策と開発政策は、これらの評価によって影響を受けている」
シューチャック氏によれば、USHCNのデータは、米国が保有する気温データの中でも、唯一長期的で歴史的なものだ。
「現在では『気候危機』が明らかだといわれているので、気温観測所を維持することが最優先事項だと思われるかもしれない。実際には、何百もの観測所が消えてしまっているのに、そのデータを製造するということが行われている。実存的な脅威だと叫ばれる気候を監視する方法が、こんな奇妙なやり方だ」とシューチャック氏は語った。
「観測されたデータが本物で、改ざん捏造されたデータは本物ではない」
『noaacrappy』というウェブサイトでは、ゴーストや「ゾンビ」とも呼ばれる観測所がすべてリストアップされ、その場所、閉鎖されている期間、そしてNOAAの記録へのリンクが掲載されている。
このマップで重要なことは、気温データの内挿に使用したすべての観測点が、閉鎖観測点の近くにあるわけではないということだ。例えば、オクラホマシティの観測所はすべて「ゾンビ」であるため、内挿データは、136 マイル(約218.871キロ)以上離れたテキサス州ゲインズビルや、100 マイル(約160.934キロ)以上離れたオクラホマ州イーニッドなど、遠隔地からの送信データに依存している可能性もあるということだ。
「NOAAはさまざまな理由から、機器の問題を修正する代わりにデータを変更する必要性を感じているようだ」とシューチャック氏はいう。
「気温観測所を修理するのにロケット科学は必要ではない。ハッブル望遠鏡を修理するために宇宙に行くことができるのなら、地球に降りてきて温度計を修理することもできるはずだ」
科学者が気候変動データで大きな問題を暴露
NOAAがゴースト観測所を使用するようになったのは、最近のことではない。2014年にワッツ氏は、NOAAの国立気候データセンターの主任科学者であるトム・ピーターソン氏、テキサス州の気候学者であるジョン・ニールセン・ギャモン氏とともにゴースト観測所と不良データの問題を提起し、問題があることを確認した。
「私はテキサス州にあるUSHCNの全観測所をチェックしたところだ。13か所では良いデータの代わりに推定値を持っていた」と、ギャモン氏はワッツ氏に宛てた電子メールに書いている。
「これはバグ、大きなバグだ。ジーク(ハウスファーザー)が木曜日の夜に大まかな分析をしたところ、それが体系的なもので記録全体に及んでおり、最大10%の観測所が100年以上にわたるデータを『推定』していることを発見した」
当時、ワッツ氏は「NOAAはこの問題を真剣に受け止めており、まもなく修正案を発表するであろう」と自身の気候ウェブサイト『Watts Up With That』で報告していた。
しかし、その修正は実現されなかった。ワッツ氏は「彼らはいまだに続けているし、もっとひどい状況になっている」と語った。
USHCN観測所を含むNOAAの共同観測者プログラムは、8500人以上のボランティアによって毎日の気象観測を行うというネットワークである。ワッツ氏は、ボランティアによるプロセスは「労働集約的」であると述べた。
「最高気温と最低気温、降水量、観測時の気温を、毎日決まった時間に記録する必要がある。そして、ナッシュビルにある国立気候データセンター(現在の国立環境情報センター)に送られなければならない」
「その仕事は紙で行ったり、電話のタッチトーンで行ったりする。観察者側の献身的な努力を必要とする。その結果、オブザーバーの多くが消え去ってしまった。亡くなっていく人も多く、その仕事を引き受ける人がいなくなった」
「このような場合でも、NOAAはUSHCN観測所の総数から無人観測所を差し引くのではなく、周辺観測所から数字を作成していた」とワッツ氏は語った。
「その結果、ごちゃごちゃしたデータになり、ほとんどの場合、現実のものとは程遠いものになった」
シューチャック氏は、法医学コンサルティングの気象学者として、法律事件の専門家証人報告書を作成したと述べた。
「公式にNOAAが認定した独自の気象観測データのみを使用した。もし自分が『改ざん、捏造』されたデータを使っていたら、法廷から放り出されていた」
NOAAの防衛
NOAAの国立環境情報センターは、「ゴースト観測所」のデータを使用していると、エポックタイムズの取材で認めた。
その説明として、「NOAAは、USHCNv2.5データセットで月別の気温値が欠損している場合、その推定値を提供している。欠損値を推定するアプローチは、USHCN v2 の概要ペーパーに記載されており、推定された値は、USHCN の readme ファイルに記載されているように、特定のフラグで示されている」
「このフラグは、推定値と観測値とを区別するために使用される。月別の気温観測所の記録期間を統一するために推定値を提供するというこの方法は、数十年にわたって推定値を提供してきたUSHCN月別データにおいて、やや特有のものである」
「これらの推定値は、USHCNのデータから恩恵を受けようとする利用者へのサービスとして提供されているが、NOAA自身は閉鎖された観測所の推計値を、自らの気候モニタリング活動で直接使用することはない」
シューチャック氏はNOAAの回答に納得できなかった。
「これはペテンだ」とシューチャック氏はいう。「『USHCN』のデータは、現在、さまざまな名称のより大きなデータセットに含まれているため、公式には、単一の実体として使用されていないと主張できる」
「しかし、USHCNのデータは100年以上前に遡ることのできる唯一のデータであるため、すべての歴史的な気候研究に使用されており、この歴史的なデータがなければ、私たちはめくら同然だ」
「NOAAがUSHCNのデータを使用しないなら、なぜ私たちの税金を使ってUSHCNのデータファイルを毎日更新しているのか? なぜ彼らは私たちの税金を使って、過去に変更された気温データを定期的に遡って再変更するのか?」
より大きな問題
ワッツ氏によると、ゴースト観測所は問題だが、それはより大きな問題の一部に過ぎない。
ワッツ氏によれば、「欧州委員会および欧州宇宙機関の新たな地球観測プログラムのコペルニクス、NASAのゴダード宇宙科学研究所(GISS)、バークレーの地球表面温度(BEST)、NOAAなどいくつかの組織は、月別・年別の気候データを公開している。そして、「独立したデータ」を持っていると宣伝している」という。
しかし、こうした独立したデータについて、ワッツ氏は「嘘だ」と指摘する。
「USHCNデータセットと新しいnClimDiv気候区分データセットは、(同じ観測所を使用し、同じ問題を抱える)米国の共同観測者(プログラム)から提供されたものだ」
「同様に、世界の他の地域でも、同じように人員削減と無能の問題に苦しんでいる共同観測者(プログラム)がある。それはGHCN(世界歴史気候ネットワーク)と呼ばれている」
「私が挙げたNOAA、GISS、BESTなどすべての機関は、GHCNの所蔵する同じデータを使用している。それぞれの機関は、独自の真実性を創出するために『特別なソース』でもって調整を試みている」
「それぞれの実体が『真の神』を創造している。まるで宗教のようだ。彼らは、さまざまな数学的および統計的手法を駆使し、気候の現実について独自のビジョンを造り上げている」
「そして、すべては、世界各地に点在し、整備も不十分なゴースト観測所のデータセットに遡る。USHCNとGHCNは同じものだ。つまり、独立した気温データセットなど存在しないのだ。このように主張する人はインチキだ」
シューチャック氏は「1800年代以降に地球が経験した温暖化は、報告されてきたものより、はるかに影響の少ないものだ。仮にそうでなかったとしても、気温の上昇は人為的ではなく自然なもので、心配するほどのものではない」と述べた。
「私たちは、小氷期からの解凍しつつある段階にいる。なぜなら、ブレイとエディの太陽周期はまだ温暖化の段階にあるからだ」と彼は語った。「CO2は温室効果ガスの一種だが、今日の温暖化への寄与は些細なものだ。人為的なCO2が地球の気温をどれだけ上昇させているのかと聞かれると、私は『新しいまつげが生えると、どのくらい体重が増えるか考えてほしい』と答えるだろう」
「気候の緊急事態は存在しない。実際、竜巻やハリケーンを含めて、悪天候のあらゆる指標が減少している。さらに、地球温暖化とCO2の増加は、地球上の生命にとって良いことであり、温暖な時期(中世の温暖期など)に生命は繁栄し、寒冷期(小氷期など)に苦しむことをはっきりと歴史が示している」
シューチャック氏は、「NOAAとNASAでさえ、CO2の増加が地球を緑化し、植物の成長を増加させ、食料生産に利益をもたらしたと報告している」と指摘した。
「私たちはCO2を悪者扱いするのではなく、CO2を祝うべきだ」
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