中国では海外移住ブームが再燃している。きっかけは、今月の国境開放だ。業界筋によると、従来は資産移転したい富裕層が多数を占めていたが、今回の移民ブームでは主に中産階級や知識人、労働者階級が目立つという。移民に伴う資産の国外流出によって、中国経済はさらに悪化する可能性がある。
北京や上海で旅行代理店や移民関連のコンサルタント業を営む洪さんは、「過去1年で中国では3度の移民ブームが起きた。最新は中産階級がメインだ」と台湾の中央通訊社の取材に答えた。
「昨年6月上旬、2カ月に及んだ上海の都市封鎖が解かれた時に1度目の移民ブームが起きた。2度目は10月下旬、最高指導部(政治局常務委員)のメンバーが発表された後。3度目は今月8日で、入国時の隔離措置の撤廃発表後だ」。
習近平氏の側近や部下で固められた最高指導部の人事発表が、移住決断に拍車をかけた。洪さんによれば、発表後、会社には全国から移民関連の問い合わせが殺到。当時、1日に800件以上も寄せられたという。
中国当局による朝令暮改の政策に振り回される国民は、国家権力に対する恐怖や不満を蓄積させていた。政府の国境開放は、まさに「逃げ出す」チャンスと映ったようだ。
「移住希望者はこれまで富裕層や高官親族が多かったが、最近のブームでは中産階級や知識人、なかには労働者階級の一般人もいる」と洪さんは明かした。
過去半年で、一般市民による移民関連の問い合わせも多く、なかには「いっそのこと不法入国する方法はないか」と切り出す人もいるという。
移民先としては、従来のアメリカ、カナダ、ヨーロッパ、日本に加え、東南アジアも人気だという。最も人気があるのは航空券が安く手に入り、入国規制も緩いタイだそうだ。
また、海外移住を希望する理由は「以前のように海外でお金を稼ぐことではない」と洪さんは話す。「中国を出たがる彼らに必ずしも民主主義や自由といった政治的な要求があるわけではない。しかし、人間として最低限の尊厳は他の国にはあると考えているようだ」
海外移住には孤独や言語問題といった困難が伴う。しかし、中国共産党による突然の封鎖措置に遭い行動を制限されたり、「大白(ダーバイ、防護服姿の新型コロナ検査員)」や警察を恐れたりすることはない。
時事評論家の李林氏は23日、「習氏の再選は移民ブームを加速させた主な要因だ」との見方を大紀元に語った。
習近平政権は近年、インターネット業界など新興産業への取り締まりを強化し、学習塾産業は崩壊寸前まで追い込まれた。
「繰り返される業界の取り締まりに、富裕層や企業家らは失望させられている。最高指導部の顔ぶれを見て、中国当局に対する最後の希望も潰えた。朝令暮改の政府が次にどんな愚策を講じるのか、もはや予測不能だ」
ブルームバークによれば、中国人富裕層の海外移住は既に昨年から始まっている。コンサルティング会社の統計では、2022年は約1万800人と、19年以来の多さだったという。さらに、コロナ対策の規制撤廃後、中国人からの移住に関する問い合わせが撤廃前の4倍強に増加したという。
「資産移転や移民ブームは中国経済にとって打撃であり、政治の不信感を反映している。中国共産党政権の崩壊を早める要因の一つになりかねない」と李氏は指摘した。
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