「党への最後のご奉公」失脚した中国共産党幹部の知られざる獄中生活

2022/11/22
更新: 2022/11/22

中国共産党内の権力闘争で失脚し、収監された高官らの獄中生活の実態が明らかになった。国家転覆罪の容疑で拘束され、今年4月に釈放された台湾の人権活動家・李明哲氏はこのほど、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材で自身の見聞を語った。

インスタント麺の袋でご飯を盗む

李明哲氏は2017年3月、マカオから広東省に入った直後に拘束され、国家転覆罪の容疑で5年間収監された。中国の反体制派の家族と連絡をとっていたことが原因だとされる

同年11月、李氏は湖南省の赤山刑務所に収監され、翌18年に司法部(法務省に相当)直轄の北京・燕城監獄に移送された。同監獄には国務院(内閣に相当)局長クラスの幹部が多数収容されている。

燕城監獄で接触した数々の幹部受刑者のなかでも、李氏にとって最も印象深かったのは、中国鉄道部副総技師長の張曙光だった。高速鉄道の開発を主導し、在任中に建設した鉄道は1.8万キロに及ぶ。13年、収賄容疑で執行猶予付きの死刑判決を言い渡され、後に無期懲役に減刑された。

獄中の張曙光に「高速鉄道の第一人者」としての面影はなかった。お腹を満たすため、張曙光がインスタントラーメンの空袋にご飯を詰め込み、袖の中に隠して持ち出す様子を何度か目にした。

「現職時代に権勢をふるっていた高官でも、刑務所に入ればお腹を満たすことで精一杯なのだ」と李氏は感慨にふける。

李氏によると、司法部直轄の燕城監獄は設備が整っており、最大3人一部屋で強制労働はない。いっぽう、湖南省の赤山刑務所は10平米の部屋に16人が押し込まれ、長時間の労働を課されている。囚人の一部は、中南海(党上層部、中央省庁)の高官のために外国のニュースを翻訳するほか、書籍の校正作業も行っていた。

「燕城監獄は中国の他の刑務所より、はるかに待遇が良い。それでも受刑者の一番の関心事は食事だ。少しでも良い物を食べたいと皆が思っている」と李氏は語った。

「党への最後のご奉公」

李明哲氏が初めて元幹部の受刑者らと接触したのは湖南省留置所だった。収監されていた元幹部らは自身の犯した罪を語るとき、みな「投獄されたことは党への最後のご奉公だ」と主張していた。

ある幹部はこう語ったという。「共産党は政権を維持するため、市民に汚職撲滅の姿勢を示そうとする。我々はその見せしめになったのだ」

中国共産党幹部にとって、汚職は一種の「掟(おきて)」だと李氏は指摘した。拘束された多くの幹部は「汚職をしなければ問題人物だとみなされ、職場で干されてしまう」と話していた。みな汚職しているが、自分が逮捕されたのは権力闘争に負けたためだと彼らは考えているという。

李氏はその後、湖南省の赤山刑務所に再び戻された。他の受刑者は失脚した高官らの様子に興味津々だったが、「しょせん、刑務所は刑務所だ。燕城監獄の待遇は格別かもしれないが、受刑者の考えていることは大同小異だ」。

李沐恩
李沐恩