米上場中国企業の監査問題、中国が譲歩「ウォール街との関係中断を回避」

2022/04/14
更新: 2022/04/14

中国証券当局はこのほど、中国企業の米上場に関する規定を変更した。新規定では、米規制当局による中国企業の会計監査資料へのアクセスが可能となった。中国政府は米株式市場との切り離しを回避したい狙いがあると指摘された。

中国証券監督管理委員会が2日に公表した新規定の草案は、「海外の証券監督当局による中国企業に対する調査や証拠集めは、外国との監督管理協力メカニズムを通じて実施されるべきだ」とした一方で、中国企業に国家機密の保護を義務付けた。

中国側はこれまで、海外市場に上場する中国企業への会計審査は主に中国の規制当局が行うと定め、中国企業に対して外国規制当局に帳簿などの情報を提供することを禁じた。

ブルームバーグ2日付は、「この妥協案」により米証券当局は今後、ニューヨーク株市場に上場する中国企業200社余りの会計監査報告にアクセスする障害が取り除かれたとした。

北京大学デジタル金融研究センターの上級研究員である徐遠氏は自身のブログで、中国企業が米市場で上場廃止となれば、中国政府は「大きな損失を被る」との認識を示した。中国企業は米上場を通じて国際大企業に成長できるという利点があるほか、中国企業の米上場は「米中関係を維持するために重要であり」、「中国と外部の関係を安定させる重石だ」と主張。

徐氏は、米国の著名投資家であるウォーレン・バフェット氏や金融大手モルガン・スタンレーなどは「比較的親中で、中国内政に干渉しなかった。彼らは米国の極右・反中勢力をけん制している」と挙げ、中国企業が上場廃止となれば「この重要なつながりが切れる」と示した。

在米中国人経済学者の黄峻氏は、中国政府が企業の米上場を促した理由は、米金融市場から莫大な資金を調達できることに加えて「ウォール街との利益共同体を築くためである」とした。

「ウォール街と利益共同体になれば、米政府の中国政策をめぐってウォール街が中国の代わりに、米政府に対してロビー活動を行ってくれるからだ」

米証券取引委員会(SEC)は3月、外国企業説明責任法に基づき、会計監査に関する検査を拒否しているとして、SNS大手「微博(ウェイボー)」を含む複数の中国企業に上場廃止の可能性があると警告した。

張哲
張哲