中国退役軍人「ロシア支援のため参戦を志願」 矢板明夫氏、その狙い分析

2022/03/25
更新: 2022/03/25

最近、中国湖南省の退役軍人がSNS上で、ウクライナ侵攻を仕掛けたロシア軍を支援するため参戦を志願すると表明し、話題となった。これに対し、産経新聞の矢板明夫・台北支局長は、退役軍人が参戦志願という形で、自分たちの権益を守るよう当局に訴えていると分析する。

19日にTwitterに『湖南省常徳市の退役軍人がウクライナの戦地に赴き、ロシア支援のための参戦を志願する』と題する文章が投稿された。退役軍人47人が署名し、賛意を表明した。文章では、「NATO拡大の試みは、ロシアと偉大なる祖国の安全を脅かす」や「ロシアを守ることは偉大なる祖国を守ること」などと動機を書かれている。

中国国内では退役軍人の志願を賞賛する声がある一方、海外では「洗脳されている」と批判する声もある。矢板氏は21日のFacebook投稿で、中国で退役軍人の窮状を長年取材してきた自身の経験から、「そんな単純なものではなく、形を変えたセルフアドボカシー(自己権利擁護)のようなものだ」との見解を示した。

矢板氏によると、中越戦争(1979年)に参加した退役軍人は除隊後、医療、年金、職業の斡旋など政府が約束した福利厚生を享受できていないため、長年にわたって抗議活動を続けている。抗議の手法によって強硬派と穏健派に分かれている。

矢板氏は、志願書を提出した退役軍人は穏健派で、この婉曲的な表現を使って、当局に待遇改善を迫っていると考えている。

退役軍人たちは、若い人でもすでに60代と高齢である。戦闘員が足りなくても、中国当局が彼らを戦場に送らないことを、彼ら自身が知っている。しかも、志願書の提出先は「常徳市国防動員委員会」と「常徳市退役軍人事務局」であった。後者は退役軍人の福利厚生を担当する機関で、軍とは関係がない。

矢板氏は、2年前にも中国で同じような「自己推薦書」があったことに言及した。当時、新型コロナウイルス感染症が始まったばかりで、ボランティアとして最前線で働きたいという退役軍人の志願書がネット上に掲載された。その目的は、「私たちの存在を忘れないで、私たちは団結している」という警告メッセージを当局に送ることであった。

中国共産党の厳しい社会統制により、中国では権利擁護活動を行うことは非常に難しい。矢板氏は「多くの人は、自分の主張をさまざまな形でパッケージ化し、行間に隠されたメッセージによって注目を集めようとしている」と強調した。 「中国では額面通りには受け取れないニュースが多く、その裏にはもっと多くの戦術や実態が隠されているかもしれない」と付け加えた。

(翻訳編集・王君宜)