共産党「6中全会コミュニケ」から浮かび上がる習氏の苦境と最優先目標

2021/11/16
更新: 2021/11/16

11月8日から4日間、中国共産党第19期中央委員会第6回全体会議(以下、6中全会)が北京で開催された。今回の会議では、党史上3番目の歴史決議が採択され、習近平総書記は毛沢東、鄧小平に並ぶ指導者としての地位を確立した。専門家は会議のコミュニケから、習氏が今後も反対勢力との戦いを強いられると分析した。

11日に閉幕した6中全会では、いわゆる「重大な成果と歴史的経験に関する決議」を採択し、2022年後半に中国共産党第20回全国代表大会(20大)を開催することを決定した。20大で、習氏が3期目入りを果たすのは確実となった。

これまでのコミュニケとの比較がなされている。

毛沢東氏が政敵を排除し権威を確立した1945年の第1回歴史決議と、鄧小平氏が毛氏の文化大革命路線を修正した1981年の第2回歴史決議とは異なり、習氏が主導する第3回歴史決議は、党の先代指導者を否定せず、最大の政敵である江沢民氏を含む、歴代党首を讃える内容となっている。文化大革命や天安門事件など、中国共産党の過ちや問題については触れていない。

今回の決議は、習氏の歴史的地位が毛沢東に匹敵し、「鄧小平、江沢民、胡錦濤」に勝るものにしている。7000字を超えるコミュニケの中で、習近平氏に最も多くの紙面(2000字以上)を割いた。次いで毛沢東(951字)、胡錦濤(617字)、鄧小平(384字)、江沢民(284字)の順となっている。言及回数は、習近平氏が17回、毛沢東が7回、鄧小平が5回、江沢民と胡錦濤が各1回となっている。

この決議は、習氏が中国共産党の「成果」を総括して権力を固め、来年の20大で3期目入りへの道を固めるためのものである。

習氏の苦境

6中全会当日、官製メディアの社説は、習氏の最大の内憂を明らかにした。中国共産党の機関紙「人民日報」8日付は一面で、「党は新たな状況下で多くの深刻な課題に直面している」と述べ、「腐敗問題が大きくなればなるほど、最終的には党と国を破滅させることになる。腐敗との戦いに『鉄帽子王(罰せられない親王)』は存在しない」という習氏の言葉を引用して報じた。

2012年末に習氏が打ち出した反腐敗キャンペーンにより、周永康、郭伯雄、徐才厚、孫政才、令計画、蘇栄、楊晶など「正国級」(政治局常務委員)1人、「副国級」(政治局委員)6人、軍事委員会委員2人を含む数百人の高官が失脚した。その多くは、最大の政敵である江沢民元総書記のグループに属している。

2018年3月、習氏は憲法を改正し、再選の制限を撤廃した。北京の情報筋によると、習氏は再選を果たすために江沢民派と妥協したという。それ以来、習氏の反腐敗運動は、「党と国家の指導者」(政治局常務委員会レベル)に及ぶことはなかった。

中国共産党内でも、習氏の神格化プロパガンダや無期限の権力掌握に反対の声が上がっている。反腐敗の名のもとに行われた弾圧キャンペーンは、反対派を無慈悲にも黙らせた。

最近、国営メディアも「クーデター」「暗殺」や「鉄帽子王がいてはならない」などと報じており、党内闘争の激しさを物語っている。

9月14日、中国メディア「網易新聞」は、江蘇省公安局刑事警察隊の羅文進・元隊長と重慶市の鄧恢林・前副市長兼公安局長らが、「国家の重要な指導者」の暗殺を計画していたと報じた。また、同月の記事で、党幹部の汚職摘発などを担う中央規律検査委員会は彼らを「より大きな政治的権力を求めていた」と批判した。

いっぽう、コミュニケは現状について、「外部環境はより複雑で厳しくなり、新型コロナウイルス肺炎の予防と制御、経済を発展させるという国内の課題は格別に重く、困難なものである」と述べるにとどまっている。

習氏の最優先目標

台湾国立政治大学国家発展研究所の李酉潭教授は、習氏の最優先目標は「内部闘争を制することだ」と指摘する。

同氏は大紀元の取材に対し、「内憂外患が待ち受けるなか、党内の権力闘争がいつでも勃発する可能性がある。習氏にとって、政治闘争は民生や外交よりも重要な問題だ。20大まで政治闘争は続くだろう」との見解を述べた。

産経新聞の矢板明夫・台北支局長は12日、自身のフェイスブックで「鄧小平、江沢民、胡錦濤への賛美を並べているこの文書は各派閥の妥協の産物である。全員の意見を包括してしまうと、文書の意味がなくなってしまう」と書いた。

「現在、党内で習氏と意見が合わない派閥には、改革開放の恩恵を受けてきた(江沢民氏の)上海閥、団派(共産主義青年団派)、一部の太子党などがある。『鄧三科』(習氏より前の鄧小平、江沢民、胡錦濤の3氏の理論)を維持することは、政敵が反撃する理論的根拠と機会を残すことになる。来年の20大で習氏が総書記に再任したとしても、党内では鄧小平路線と習近平路線の争いが続くだろう」と分析した。

台湾問題について

時事評論家の唐敖氏は大紀元に対して、「習氏が6中全会で自分を高く持ち上げるほど、台湾を統一すること(台湾侵攻)が習氏にとって魅力的なものになる」と述べた。

中国共産党による台湾への軍事的挑発行為については、「3期目を目指すための政治的パフォーマンスだ」としながらも、「台湾侵攻への準備という本来の意味は薄れていない」と述べた。

中華民国建国記念日の前日である10月9日、習氏は国家統一という歴史的課題を「必ずやり遂げる」と宣言した。

6中全会のコミュニケでは、台湾問題について「『台湾独立』に断固として反対する」との一度のみの言及にとどまっている。

(文・龍騰雲、駱亜/翻訳編集・王君宜)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。