国際学術誌、中国のDNA研究論文を取り下げ 無断でウイグル人から採血か

2021/09/10
更新: 2024/04/22

国際学術誌2誌はこのほど、中国の研究者が執筆したウイグル人住民の遺伝子に関する研究論文を取り下げたことがわかった。学術誌の出版社は、研究者らは研究対象者の同意を得ずに採血した可能性があり、国際社会の道徳と倫理基準に違反した恐れがあると示した。

学術出版の世界大手、シュプリンガー・ネイチャー(Springer Nature)が発行する「国際法医学誌(International Journal of Legal Medicine)」と「人類遺伝学(Human Genetics)」が2019年、それぞれ中国人研究者が作成した論文2本を掲載した。執筆者のなかに、中国公安部(省)法医学研究所の李彩霞・主任法医学医も含まれていた。

「人類遺伝学」誌は8月30日、「国際法医学誌」は今月7日にそれぞれ声明を公開し、論文の取り下げを決定したと発表した。

2誌は、論文を発表した後、研究倫理上の懸念を指摘されたと明かした。執筆者に「倫理委員会に出した申請書と承認証明書など資料を提出するよう求めた」という。しかし、「執筆者から十分な情報が得られず、国際的な倫理基準が満たされているか、確信を持てなかった」とした。

米国のトランプ前政権は昨年5月、新疆ウイグル自治区の少数民族住民への弾圧と米技術の軍事転用に関わっているとして、中国公安部の法医学研究所を含む中国の33の企業と機関に対して、禁輸措置を発動した。

米紙ニューヨーク・タイムズの2019年の報道によると、「人類遺伝学」誌が掲載した中国人研究者の論文は、新疆のトムシュク(図木舒克)市に住むウイグル人住民612人から採血して、DNAサンプルを研究した。研究者らは、この遺伝子情報を解析して、人の顔を再現したという。

新疆の少数民族住民はこれまで、欧米メディアに対して、自分が中国当局のDNA研究の対象になっているのを知らされていないと訴えていた。中国当局が「無料の健康診断」との名目で、ウイグル人らに対し、採血を行っているという。

ニューヨーク・タイムズ紙によれば、ベルギーのルーベン・カトリック大学のイブ・モロー(Yves Moreau)工業科学部教授はここ数年間、学術界に対してウイグル人に関するDNA研究論文を撤廃するよう求めている。同氏は、すでに学術誌5誌に連絡した。うち4誌は論文を撤回した。

モロー教授は、2011~18年までに中国人研究者が発表したウイグル人のDNA関連論文529件について調査した。そのうちの約半数は、中国の警察・司法当局、中国軍の協力を得ていたという。

(翻訳編集・張哲)