マレーシアが2019年に初めて発表した国防白書には、人員の改善から軍隊の近代化に至るまでの防衛改革が盛り込まれていた。2021年の国防予算は、こうした目標の達成を見込んで組まれている。 マレーシアの防衛専門家であるアフマド・エル=ムハンマディ(Ahmad El-Muhammady)博士は、同国防白書には「地域的および世界的に浮上している新たな安保課題に対処できるように、マレーシア防衛能力の改革の基盤構築と向上に関する内容が説明されている」と述べている。
同国防白書は当時のマハティール・ビン・モハマド(Mahathir Mohamad)政権下で発行されたものである。エル=ムハンマディ博士の説明によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによる問題と経済的な制約の中にあっても、ムヒディン・ヤシン(Muhyiddin Yassin)首相(称号:Tan Sri)政権は引き続きマレーシア防衛能力の向上に取り組む姿勢を示した。
政府運営のマレーシア国営通信社(BERNAMA)の報道では、同国の2021年度国防予算は前年比1.8%増の3,840億円相当(約38億4,000万米ドル)で軽戦闘機(LCA)、特殊部隊の兵器と装備、防空レーダー、航空地上支援車両、陸軍の陸上車両と水上車両など、いくつかの新規システムの調達が計画されている。
マレーシア国防省の発表では、国防費増額の背景には不確実な安保環境と非従来型の安保脅威の出現がある。最も重点が置かれているのは、マレーシア軍(MAF)の能力開発と準備態勢の確立、および兵士や退役軍人の福利改善である。
予算には新規資産の調達と主要な既存資産の保守のための950億円相当(9億5,000万米ドル)が含まれている他、121億円相当(1億2,100万米ドル)が軍人家族の新規住宅に充てられる予定である。マレーシア政府は年金や起業家精神の訓練といった退役軍人プログラムに33億億円相当(3,300万米ドル)を費やしている。
同国防白書には、「防衛科学、技術、産業によりもたらされた利益は他の経済部門にも波及すると予想されることから、これは国の経済成長の推進力の1つとして機能する」と記されている。この目標を達成するため、マレーシアは東南アジアだけでなく、世界各国との防衛産業関係を育むことを望んでいる。
マレーシア国防省の発表によると、2021年第1四半期にイスマイル・サブリ・ヤーコブ(Ismail Sabri Yaakob)国防相はオーストラリア、インド、日本、ニュージーランドの防衛相/国防相と仮想会談を実施し、南シナ海で高まっている緊張やパンデミック対策といった多岐にわたる課題を協議するなど熱心に外交に取り組んできた。
この4月には、マレーシア空軍が米国海軍のセオドア・ルーズベルト空母打撃群と共に南シナ海で演習を実施しただけでなく、締結50周年を迎えた軍事同盟「5か国防衛取極(FPDA)」の枠組の一環として実施された2021年「ベルサマ・シールド(Bersama Shield)」にマレーシア軍がオーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、英国と共に参加した。
(Indo-Pacific Defence Forum)
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