ミャンマー選挙における不正証拠なし 軍の主張を否定 NGO報告

2021/05/28
更新: 2021/05/28

2021年5月、アジア各国の選挙を監視する国際NGO「自由選挙のためのアジアネットワーク(ANFREL)」が、ミャンマーで実施された2020年11月の総選挙は「概して国民の意思を反映している」と結論付ける報告書をまとめ、総選挙で大規模な不正があったという理由でクーデターにより権力掌握したミャンマー軍の主張を否定した。


同機関の報告書には、パンデミックにより「投票プロセス全体で手続上の制約がいくつかあったが、(中略)選挙は透明性と信頼性の高い形態で実施された」と記されている。 


しかし、軍事政権下で2008年に制定された憲法では上下両院議席の25%が「軍人枠」と規定されており改憲がほぼ不可能であることから、ミャンマーの選挙制度は「基本的に非民主的」であるとの結論に達している。同国に居住する住民の多く、特にイスラム教徒のロヒンギャ少数派は市民権を剥奪されていることで選挙権がない。 


クーデターが発生しなければ、2020年11月8日の連邦議会総選挙で圧勝したアウンサンスーチー率いる国民民主連盟(NLD)が2期目の5年間を迎えるはずであった。直接的にも間接的にも50年以上軍事規則に縛られてきたミャンマーは、2015年の総選挙で国民民主連盟が圧勝したことで民主主義に向けた歩みを開始していた。 


2021年2月1日、当時のアウンサンスーチー国家顧問と多くの与党幹部等が国軍により拘束されたことで、総選挙後初の議会が開会できない状態となった。国軍出身の暫定大統領が非常事態宣言を発出して国軍が政権掌握を一方的に宣言した。当初国軍は1年以内に総選挙を改めて実施する方針を示していたが、後に選挙がまた1年延期される可能性も示唆している。 


クーデターで政権を掌握した国軍に対して国民の激しい抗議が発生したことで、治安部隊の弾圧により数百人もの抗議者や傍観者が殺害された。 


「自由選挙のためのアジアネットワーク」がまとめた報告書には、クーデター後にすべての権力が委譲された国軍総司令官のミン・アウン・フライン(Min Aung Hlaing)上級大将が「選挙登録者の一覧を調べた結果、不正が判明した」と述べたと記されている。軍事政権の翼賛団体の後継組織である連邦団結発展党(USDP)も11月の選挙で惨敗したことから選挙の不正を訴えていた。


クーデター後、国営報道機関が選挙登録者の一覧と選挙結果が一致していないことを示すデータを公開している。 


同国の選挙法により「自由選挙のためのアジアネットワーク」は選挙登録者リストを確認することができないため、同機関は「選挙登録の不正の是非を検証するには情報が不足している」としながらも、確かな不正行為の証拠は見られなかった述べている。 


報告書によると、連邦団結発展党と独立系の観測筋が選挙について苦情を申し立てたことは事実である。 


最大の問題点は、少数民族政党が地盤とする地域で反対派の活動が激化していたことから、治安上の問題を理由に一部地域で投票が取り消されたことである。同機関の報告書は、ミャンマー選挙管理委員会(UEC)による投票取り消しは「不透明かつ恣意的で矛盾した方法」で行われたとして批判し、国民民主連盟の敵となる少数民族政党が獲得し得る議席を制限することを目的として投票取り消しが行われたと見なされたことで批判が発生したと指摘している。 


選挙の公平性に対する不満の要因として、特にイスラム教徒などの候補者が不法移民として立候補の権利を剥奪されたこと、および選挙3週間前になって統一民主党(UDP)が解体されたことが挙げられる。同報告書には、2番目に多い候補者数を有する党を失格にすることで同党の候補者にすでに票を入れていた「事前投票者の権利を剥奪した」とも記されている。 


しかし、同報告書には「上記に関わらず、十分な情報に基づき検討した結果として当機関は2020年の総選挙の結果が全般的にミャンマー国民の意思を反映したものであったと結論付ける。投票所の人員や選挙・医療関係者の努力により、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにも関わらず2,750万人が投票している。こうした投票者等の意思を無視することはできない」と記されている。  


(Indo-Pacific Defence Forum)