「交流を武器に」米高官、中国共産党の統戦工作を批判 

2020/11/04
更新: 2020/11/04

デービッド・R・スティルウェル(David R. Stilwell)米国務次官補(東アジア・太平洋地域担当)は、このほど、シンクタンクでの講演会で、中国共産党は統一戦線工作をはじめ、自由と民主の国々に悪質な影響を与えていると語った。

スティルウェル氏は10月30日、フーバー研究所で講演した。同氏は、野心的な中国共産党(以下、中共)が、世界中の多くの国々にとって基本的な政治原則である民主主義、開放性、個人の尊厳を「敵視している」ため、共通した脅威であると指摘した。

また、中共の戦略は、世界中の政府だけでなく民間も巻き込んでいるため「官民を問わず、あらゆる機関が中共の戦略を理解し、リスクを管理し、その強要性に対抗し、表現の自由を守るための対策を講じることが重要だ」と語った。

スティルウェル氏は主に、政治、経済、教育、社会、娯楽、ネット世論など多岐にわたる工作を繰り広げる、中共の統一戦線について述べた。

「米国や他の国々は何十年にもわたって、外交、貿易、投資、メディア、学術、人と人との交流を、『繁栄と信頼の共有』という楽観的で善意の期待に基づいて、中国との関係を築いてきた。しかし、悲しいことに、中共がこれらの交流を『武器』にしている」

「北京当局者は、ウィン・ウィン(Win-Win)交流や内政への不干渉を主張している。しかし、実際には、彼らの行動は組織的で、野心的かつ覇権主義的だ。中共は、世界中の言論や政治的な決定に対して、支配権や拒否権を取ろうとしている」

スティルウェル氏は、政治戦争の活動こそ、中共の統一戦線工作だと述べた。これは、毛沢東時代から今日の習近平体制まで続いており、「魔法の武器」と呼ばれている。

同氏は、オーストラリア、ニュージーランドでの工作に関する具体例を挙げた。議員への賄賂、中国政府とつながる在豪中国人からの献金、人民解放軍との関係を隠して議員になった中国出身者、中共の意向に反する中国系新聞社の広告ボイコット運動、香港デモへの支持を表明した大学生に対する中国人留学生の暴行事件などを紹介。この暴行事件について、中国領事館や統一戦線組織は「自発的な愛国運動」として称賛した。

さらには、統一戦線工作のターゲットは人だけでなく、官民にわたる大量の個人データなどの「情報」も狙っていると同氏は語った。「米国をはじめ、世界各地では、大学、企業、医学研究室などから知的財産や技術が大規模に組織的に盗まれている」とその組織的窃盗行為を指摘した。

ほかにも、国連や各国の首都における中共工作員の贈収賄スキャンダルについて取り上げた。一帯一路をはじめとする中国の海外インフラ事業は、中国当局や中国国営企業に有利な秘密契約と不透明な条件であることが多い。しかし、統一戦線のプロパガンダ活動により、中国側に「善意がある」かのように内外に対して演出している。

ポップカルチャー、芸術、スポーツも主要な戦場になっている。全米バスケットボール協会は、香港問題に関するたった一言のつぶやきで危機に陥り、強い意志を持つ選手、コーチ、オーナーでさえ、中国の話題には沈黙してしまう。

「新型コロナウイルスの誤報、医療保護具の不足、戦狼外交…これらはすべて統一戦線の仕業の表れだ。米国人が大切にしている利益と原則を踏みにじるものばかりだ。そして、すべては脅迫、隠密、腐敗が絡み合っている」と警鐘を鳴らした。

巨大な北京の工作

近年、習近平氏は統一戦線工作部に4万人の幹部を加え、外交部(外務省)の4倍の規模に拡大した。外国の当局者に影響を与えるほかの党や国家の機関を計算に入れていない。これには外交部、中央宣伝部、国家安全保障部、教育部、国際連絡部、人民解放軍政治工作部などが含まれている。

統一戦線工作部は、世界各地で活動している統戦組織を調整している。これらの統戦組織の中には、北京の支援を受けた組織もあるが、ほとんどの組織は、「独立」しているようにみえるNGO(非政府組織)、文化交流フォーラム、友好協会、商工会議所、マスメディア、学識経験者のグループとして活動を展開している。

多岐にわたる統一戦線工作による影響を停止させるために、米国はこの数カ月で多くの対策を講じた。ヒューストンの中国総領事館がスパイ活動の拠点になっているとして、今夏に閉鎖させた。また、人民解放軍が所有する数十の企業を取引禁止(ブラックリスト)に加えた。国務長官は、全米の孔子学院の年内閉鎖を発表した。

司法省は、米大学に在籍する人民軍関係者を、ビザ詐欺、経済スパイ、密輸などの容疑で起訴した。連邦捜査局(FBI)は、在外華人に圧力を加える中国工作員を取り締まっている。中共に不都合な反体制派や信仰者の在外華人を脅迫して中国帰国を強要する「キツネ狩り」関係者8人を起訴した。

スティルウェル氏は、中共統一戦線に対応するには、世界的な協力が必要だとした。各国に「外国公館法」や「外国代理人法」、司法省の「中国イニシアチブ」などスパイ活動や窃盗、汚職、ビザ詐欺、その他の不正行為を明らかにする専門組織の設置と法整備を勧めた。

同氏は最後に、「中共の覇権が実現すれば人の尊厳は軽視され、監視と統制の技術的進歩は、世界を専制政治の新たな暗黒時代へと向かわせる」と警鐘を鳴らした。 

その証拠に、連行された香港書店のオーナー・桂民海氏、リンゴ日報創業者で実業家のジミー・ライ氏、ダライ・ラマ法王、ウイグル人、台湾市民の経験に耳を傾けるよう呼びかけた。

「中共は、私たちの基本的な生活、繁栄、安全、自由のすべてを危険にさらしている。私たちの仕事は、それを認識し、他の人に警告し、一緒にわれわれの自由を守るために必要な措置を取ることだ」と付け加えた。 

(翻訳編集・佐渡道世)

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