台湾は8月6日、観光誘致策として、100年以上の歴史を持つ総督府(現・総統府)庁舎に一晩無料宿泊体験できるサービスを始めた。世界中の観光客に台湾の民主主義、自由、開放性を体験してもらいたいと説明する。台湾文化協会と台湾交通部観光局が共催する。8月1日、中国共産党政府は全面的に台湾への個人旅行を禁止した。これに応じて、蔡英文総統は自ら先頭に立ち、観光誘致の奇策を発表した。
蔡総統は8月14日、台湾政府公式のプロモーションビデオで「台湾は各国旅行者から、世界で最も友好的な国に選ばれた。皆さんにより作られた観光ブランド。総統府も台湾市民と同じように、旅行者を温かく歓迎する」「これが台湾人民の総督府であり、台湾の民主主義という名の王冠に輝く宝石」と表現した。
台湾総督府庁舎は日本統治時代の大正8年(1919年)に完成した。日本銀行の建設で知られる建築家・長野宇平治氏によりデザインされた。第二次世界大戦で米軍の空爆により半壊したが、繰り返し修繕され、国定古跡として定められている。
宿泊権の申込規定によれば、20歳以上で台湾のパスポートを所持しない人であれば、誰でも申請でき、当選は抽選となる。希望者は「なぜ台湾に行きたいのか」「台湾で最も魅力的な場所はどこか」など複数の質問に答え、訪台旅行時は日程を「独創的な映像」で記録して提出する必要がある。登録は8月12日から8月31日まで。
このサービスは、8月1日に中国共産党政府が台湾への個人旅行を禁止したことによる観光対策とみられる。他にも与党・民進党は観光誘致キャンペーン「台湾は今、最も楽しい場所!Now,It’s Time to Visit Taiwan」の動画を発表した。7月に民進党の副秘書長に就任した、民主活動「ひまわり学生運動」の元リーダー林飛帆氏は、党広報の4人と出演し、世界中から台湾への観光を呼び掛けた。
中国共産党政府は台湾旅行の規制措置が、一時的に台湾の観光産業に打撃を与えられると考ている。本土からの観光客は、訪台客の約30%を占め、1000万人以上におよぶ。台湾経済研究所の景気予測センター所長・孫明徳氏はボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対し、「下半期は観光客の30%が減ると予想する。100万人の観光客ごとに約12億米ドルの観光収入が減る」と分析する。
台湾の静宜大学観光事業学科・黄正聡副教授はVOAに対して、総統府を海外からの観光客に開放することは非常に創造的で注目を集める企画だと述べた。また、台湾の持つ自由と民主主義の特徴をアピールすることができるとも語った。
(編集・佐渡道世)