米情報技術(IT)大手グーグルの社員は11月27日、中国進出のために政府の検閲と情報統制システムを導入した検索エンジン開発プロジェクトを停止するよう、経営陣に要請した。社員は、会社の技術が中国の国家的な社会監視に利用されることを危惧している。
開発中のトンボ(Dragonfly)と呼ばれるグーグルの中国向け検索エンジンは、共産党政権が「社会の不安定要素」と見なした情報を表示させない検閲機能を備える。党が敏感話題として排除する情報は六四天安門事件、自由、民主、人権問題、台湾、ウイグル、チベット、法輪功の関連文書、画像、動画など。
60人のグーグル社員は自らの職務と実名を記した意見文書をウェブに公開した。「この数カ月、何千人もの社員は反対の声をあげてきた。国際人権団体やジャーナリストたちも問題を強調してきた。しかし、執行部の対応は不十分だ」と社員らは国際人権団体アムネスティ・インターナショナルのトンボ開発反対運動の支持を表明している。
社員らは、声明は反中姿勢ではなく、グーグルの技術力が強力な国家の監視機能と市民管理に加担することに反対するとしている。「グーグルが人権侵害と抑圧に加担することに危惧し、同時に共産党政府の利益となる情報を拡散する恐れがある」と書いている。
中国政府はAIや生体認証を駆使してオンラインや実生活の言動、思想を監視し、異見者らを拘束してきた。新疆ウイグル自治区では監視カメラが街中に設置され、100万人にもおよぶウイグル族が収容施設に拘禁されている。今夏、深センの工場で労働問題支援に関わった学生たちが相次ぎ当局者に連行され、行方不明になった。
共産党政府は、個人を格付けする信用システムの運営準備を進めている。北京政府によると個人格付けシステムは2021年までに完全導入する。
新興ネットメディア・インターセプトによると、グーグルは中国市場の再参入を図っており、中国政府によるユーザーデータ開示要求を承認する危険性があると報じた。同紙によると、8月末に辞職した上級技術者は辞職票に「検閲と監視の要求の受け入れと引き換えに中国市場に参入することは、私たちの価値の喪失だ」とつづったという。
グーグルは創設以来、企業行動規定に「悪いことはしない(Don’t Be Evil)」を示してきたが、2018年5月までにこの言葉を取り下げている。
米ニューヨーク・タイムズによると8月、グーグル社員1400人あまりは経営陣に署名付き文書を送り、中国向け検索エンジン開発プロジェクトは透明性を示し、倫理と道徳を重視するよう求めた。
(編集・佐渡道世)