第二次世界大戦以来、少数民族に対する最大規模の収容所と形容される、中国共産党による新疆ウイグル自治区の収容所。大紀元は、出所者やその家族から、所内での経験を聞いた。実名で海外メディアに収容所内の実情を明かす男性は最近、行方不明となっていた父親(78)が収容所内で死亡したとの知らせを受けた。国内の家族を脅し、国外にいるウイグル族の口を封じる狙いがある。
刑事裁判もなく弁護士への依頼も許可されず 罪も刑期も不明
2007年、新疆ウイグル自治区トルファンからカナダのカルガリーに移住したラビヤ・ムハンマドさんは、2018年2月から4カ月間、母親(65)が拘留されたと述べた。母親は4年半前、娘と孫に会いにカナダを訪問した。
「きっと彼ら(中共当局)は母の海外旅行を知って、母親を連れて行ったのです」。母親の姉(70)と弟も拘束されているという。母親の弟は、自宅にいたところ、頭に黒い袋をかぶせられ連行された。
新疆カシュガル生まれの米国博士タヒル・イミン(38)さんは大紀元に対して、中国共産党は海外に渡航するものを「社会の脅威」と捉えていると語った。「海外渡航者に中国共産党の過ちを知られてしまうと考えているからだ」
イミンさんによると、拘留された人々のための刑事裁判は開かれることなく、どのような「容疑」なのかも当局から説明はない。罪も刑期も分からない。また、異議を申し立てることも、代理人である弁護人を立てることも許可されないという。
アムネスティ・インターナショナルの東アジア担当ニコラス・ベケリン代表は、中国当局が大量に人々を拘留するのは「洗脳・拷問・罰」のためだと分析する。「海外にいる家族に、次はお前の番だ、と脅すこともできる。中国当局の意向ですべてが決まることを強調している」。中国共産党は海外旅行者を「社会への脅威」と見なしていると語った。
5種類の「罰」
実名で広く新疆ウイグル自治区における収容所の内部について海外メディアに告発した、入所経験のあるカザフスタン籍のオミール・ベクリさん(42)によると、ウイグル人は看守の命令に背けば、5つの刑罰と拷問を受ける。
英インディペンデント誌2018年5月の報道によると、べクリさんは2017年3月に新疆の両親を訪問したところ拘束された。カザフの外交官が同年夏、べクリさんと面会した。10月、ベクリさんは解放された。
べクリさんによると、収容所での睡眠時間は一日わずか3時間。ベクリさんら収容者は、食事の前に、壁に向かって共産党を称える歌を3曲歌うことを強いられる。曲目は「共産党がなければ新しい中国はない」「社会主義は素晴らしい」「祖国に捧げる」など。それぞれの歌詞には共産党を礼賛し、共産党が国民を救い導いているという内容が含まれている。
べクリさんによると、歌わなければ罰を受ける。「共産党を称える歌を歌わなければ酷く殴られる。壁に向かって立たせられ、24時間睡眠と食事はない」。もし再び歌うことを拒否すれば、固い板に手足を縛り座らされ、食べ物も与えられず、寝させない。
次は「動物のように鎖で繋がられる」という罰だ。畳2畳、3平方メートル程度の真っ暗な極小の部屋に閉じ込められる。
これが終わると、灼熱の太陽の真下で、下着以外は裸になって、熱せられたセメント板の上に立つ。新疆ウイグル自治区は夏季、地方により40度以上の高温になる。「太陽の熱で足は焼けるようになる」が、これは冬季も同様のことをさせられる。例えばウルムチの12~2月の平均気温はマイナス10度になる。
そして「(看守の)目に入るあらゆるもので激しく叩かれる」「最後に両手を縛られ吊るされる」
ほかにも、不潔で悪臭漂う腐った水のなかに1日~5日間、首から下を浸けられる水責めにもあった。「5日以上浸かっていると、多くの人は死んでいく」とべクリさんは述べた。苦痛が長引くように、小さなパン切れを口に入れられていたという。
べクリさんによると、ウイグル族の男性たちは毎日、性欲を除去する薬の服用を指示されていた。「自分が何をしているのか分からなくなるような、人を狂わせる薬だった」。べクリさんは毎日出される薬を舌の裏に隠し、水を飲むふりをして吐き出していた。「だから私は生き残れた」
収容所にいるウイグル族は、強烈な心身への圧力により自殺に追い込まれる人が多かったという。しかし、常に5~10人の看守が見張っていて、部屋に監視カメラも設置されているため、自殺も不可能だった。
10月19日付ラジオフリーアジア(RFA)は、べクリさんは父親(78)が収容所で死亡したとの連絡を受け取ったと報じた。遺体は家族の元に戻っていない。べクリさんによると、メディアに収容所内の事を話してきた彼に対して、中国当局は脅し続けてきたという。
「まだ私の母親や姉妹、兄弟が収容所にいる。しかし、私は恐れないし(告発を)後悔していない。戦い続ける」とRFAに語った。
べクリさんは、妻や子供たちと共に安全な場所で暮らせるよう欧州か米国への移住を希望している。AP通信によると9月、妻と子供はトルコ空港で3日間拘束され、カザフスタンへ送還されそうになった。
べクリさんと家族は中国国外にいてもなお、家族と安心して暮らすことができない。AP通信によると、カザフスタン在住の活動家たちは、繰り返し同国政府から、新疆の収容所に関する情報をメディアに明かさないよう警告されているという。
中国共産党政府は一帯一路構想のなかで、欧州への通過点となる東アジアに巨額投資を行っている。
国際的な反応
米議会の中国問題委員会(CECC)は10月10日、中国人権報告書を発表した。このなかで、新疆の状況は 「第二次世界大戦以来、少数民族に対する最大の収容所であり、反人道罪に値する」と記した。
同月4日、マイク・ペンス米副大統領はハドソン研究所でのスピーチで、ウイグル人の大量拘禁と洗脳は、ウイグル族を「新しい迫害の波」と形容した。
「(収容所では)24時間体制で思想改造が行われている。生存者たちは収容所での体験について、中国政府がウイグル文化を絞め殺し、信仰を根絶しようとする意図的な試みだと説明している」とペンス副大統領は述べた。
米国在住のウイグル族アイデン・アンワルさんは、大紀元に対して、新疆の収容所は「ウイグル民族浄化(政策)を隠すための手段」と信じていると語った。「なぜ遺体となって出所することになるのでしょうか。中国(政府)は本当に私たちを同化させたいのであれば、なぜ死者が出るのでしょうか」と彼女は述べた。
アムネスティの東アジア担当ベケリン代表は、中国共産党は、新疆で起きた少数民族に対する迫害を、世界中に説明しなければならないと述べた。「この大規模拘束で数十万の家族が崩壊した。家族は、愛する人に何が起こったかを知りたがっている。中国当局は答えを出すべき時が来ている」
(文=イザベル・ヴァン・ブルーゲン、翻訳編集・佐渡道世)
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