中国の人権問題を理由に、欧米各国が相次ぎ北京冬季オリンピックを外交ボイコットする中、国際オリンピック委員会(IOC)は中国政府の人権問題について沈黙を保っている。最新の調査で、IOCの主要メンバーらが中国ビジネスに関わっていることがわかった。
コーツ副会長の対中ビジネス 年間約15億円
IOCのジョン・コーツ副会長は最近、新疆(ウイグル)問題で中国政府に圧力をかけることはIOCの「権限範囲」ではないと主張し、「大会開催国の主権を尊重しなければならない」とした。
同副会長は米ニュースサイト「デイリー・ビースト」の取材に対し、この見解は「中国の人権に関するIOCと私の立場を反映したものだ」と明言した。
コーツ氏は2007年から、豪州のサラブレッドオークション会社「ウィリアム・イングリス・アンド・サン」の会長を務めている。
デイリー・ビーストの調査によると、過去10年間、中国は同社の主要な取引先国だった。同社は、同社の中国語社名「殷利殊」を冠した毎年恒例の中国競馬レース「殷利殊・中澳杯」のスポンサーになっている。
2021年、中国に出荷した馬の総額は1300万米ドル(約15億円)以上に膨らむ。出荷先にはジェノサイドが行われている新疆ウイグル自治区の馬主や牧場も含まれる。
同社の広報担当者はデイリー・ビーストの取材に対し、中国とのビジネス関係についてコメントを拒否した。
カナダIOC委員 「中国で大きなビジネス」
IOCが人権問題で中国政府に圧力をかけるべきではないという意見を持つ委員はほかにもいる。
IOCの最古参委員、カナダのディック・パウンド氏は、新疆の収容所やジェノサイドに関する質問に対して、「人権問題は政治の問題」と主張し、新疆の人権問題の解決は中国政府に任せるという考えを示し、選手たちが中国でこれらの問題を自由に議論できる保証はないとした。
パウンド氏は2013年出版の著書で、自ら顧問を務める法律事務所Stikeman Elliott LLPが中国業務を拡大していると明かした。 同事務所のホームページでは、「多くの有名な中国企業に法律サービスを提供している」とうたっており、中国石油総公司、CITICグループ、中国投資有限公司など中国の大手国営企業の名を挙げた。
中国ビジネスに依存する豪企業の社外取締役を務めるIOC委員
中国と利権関係があるIOC委員はほかにもいる。英国のセバスチャン・コーIOC委員は昨年、諸国の北京冬季オリンピック外交ボイコットは「無意味で損害を与える」とけん制し、大会ボイコットに反対の意を示した。
英誌「プライベート・アイ」によると、コー委員がオーストラリアの鉱山会社FMGグループの社外取締役を務めている。同社の2020年の数十億米ドルの年間総収益の約9割は中国ビジネスによるもので、中国の国有企業がFMGの大株主である。コー委員自身はFMGから、年間13万米ドル(約1500万円)以上の報酬を受け取っている。
(翻訳編集・叶子静)
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