国際的な係争地域である南シナ海では、中国が軍事拠点化する人工島付近を外国軍機が飛行すると「中国領土だ、直ちに立ち去れ」と中国側が退去勧告を発していることがわかった。
中国軍の警告メッセージは、米軍機に同乗していた米CNNと英BBCの撮影班が記録し、8月10日に公開した。米軍は「我々は国際法に基づき航行する」と主張した。
両メディアは、米海軍の対潜哨戒機P-8Aポセイドンに搭乗し、上空16500フィートから南シナ海スプラトリー諸島のスービ礁、フェイリークロス礁、ジョンソン礁、ミスチーフ礁を撮影した。映像から、このうち3つには大規模なドーム型レーダー施設、ミサイルなど兵器が収容されていると考えられる倉庫、軍事利用可能な滑走路が確認できる。
CNNが公開した映像によると、撮影班を載せた米軍機は、中国軍から6回、それぞれ異なる地点で、中国の領土内から離れるよう退去勧告が発せられた。
中国軍は英語で「不測の事態を避けるため、すぐに出ていきなさい」と警告した。これに対して米軍機は「国際的な空域および沿岸部における、合法的な軍事活動だ」と返答した。
米軍P-8A乗組員は、中国側から発せられた警告を含め、島しょ部での中国軍の活動を記録している。また米軍によると、中国側の反応および米国の応答も「通常」であり、活動に影響はないとしている。
またBBCによると、南シナ海の係争地域では、中国軍による強い言葉遣いの警告がフィリピン軍に向けられていると報じている。公開された音声によると、米軍に対するものとは明らかに異なる威圧的なものだ。
映像から聞き取れる限りでは、中国軍は「フィリピン軍機! 我々は何度も警告する。直ちに出ていきなさい。さもなければ、すべての結果に責任を負うことになるだろう」と警告している。
南シナ海は中国のほかフィリピン、ベトナム、マレーシア、台湾、ブルネイが領有権を主張する地域が重複している。中国は数年前から島しょ部やサンゴ礁に他国の許可なく、無断で軍事拠点化した人工島の拡張工事を続けている。
南シナ海は、欧州、中東、アジアを結ぶ重要なシーレーンの経過点であり、毎年300兆円程度の貿易額が通航する。
米軍の複数の公式ツイッターは、この中国軍による警告について、改めて回答している。米国インド洋太平洋司令部アカウントは「米国は国際法に基づいた活動の中で『警告されて退出』することはない」と述べた。
南シナ海地域を偵察するP-8Aの拠点である在日米軍のアカウントは「在日海軍のP-8Aは国際法に基づいた航行において、毎日の地域の平和と安全保障を貢献している」とコメントした。
2018年6月末、4年振りの米国防長官の訪中では、マティス長官は中国習近平主席、魏鳳和・国務委員兼国防相らと会談した。しかし、人民日報の報道によれば、中国側は米側に対して、台湾・南シナ海に関する中国の立場を再び強調したと報じ、平行線をたどった模様。
2018年6月、マティス長官はワシントンで開かれた国際的な安全保障サミットで、中国による南シナ海の軍事拠点化や兵器設置は、地域の人々の安全を脅かしていると述べ、引き続き「航行の自由」作戦を展開する姿勢を示した。
(編集・佐渡道世)
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