中国紙が印象操作 G7安倍首相の「ニセ写真」で

2018/06/12
更新: 2018/06/12

カナダのシャルルボワで6月8~9日に開かれた7カ国首脳会議(G7)では、各国首脳は吐息が届くほどの距離で白熱した議論を交わしたと報じられた。いっぽう、中国共産党政府メディア・環球時報の11日付は、安倍首相について印象操作の目的で加工写真を掲載し、米国と欧州各国の貿易慣行における対立を扇動する文言を並べた。G7では、中国関連の国際問題である政府補助金による過剰生産、技術移転強要などが議題に挙がっており、中国当局が「論点逸らし」のために安倍首相を中傷したとみられる。

異例 首脳たちの膝詰め会議

安倍首相は「会議場の外でも、朝早くから夜遅くまで首脳同士が直接、膝詰めで議論を重ねた」と9日の内外記者会見で述べた。これを裏付けるように、G7では、ドイツ政府のカメラマンが撮影したトップ画像の写真や米ホワイトハウスのサンダース報道官が公表した写真をはじめ、会議室、待合室、廊下の一角など、あらゆる場面で首脳たちが話し合っていたことが分かる。

いっぽう、G7メンバーではない中国は官製紙・環球時報11日付で「見てみろ!この記事を消したがっているのは安倍晋三だ」と扇情的なタイトルの記事を掲載した。写真は、トルドー首相を中心にトランプ大統領、メルケル首相、メイ首相らが膝詰めで話し合っているところ、隣のテーブルにひとり腰かけている安倍首相を、赤い丸で囲って強調しているという構図だ。

環球時報が使用した加工写真はニセ写真(左、いないはずの安倍首相が加えられた加工写真 右、加工前の写真)

しかし、亜州通訊の社長・徐靜波氏はSNS微博で、このたび環球時報が掲載した写真は、風刺目的のために何者かにより故意に加工された「ニセ写真」であると指摘した。この写真は日本のSNSでも出回っており、日本のネットユーザが作成した可能性もある。

中国共産党政府の官製紙は、日本の外交「蚊帳の外」論を宣伝するほか、ドイツ政府の公開した写真を利用して「トランプ大統領が欧州首脳の包囲網に遭っている」などと、米国と欧州の貿易慣行に軋轢(あつれき)があると強調した。日米と欧州の分断を図ろうとする意図が垣間見える。

G7では、中国に関連する政府補助金と過剰生産問題、南シナ海の軍事影響力の拡張問題などについて議題に挙がっており、当局は批判の矛先をかわす目的で「ニセ写真」などを利用したと考えられる。

安倍首相は9日の会見で、国名の名指しは避けたが「(政府)補助金などによる過剰生産を見過ごせない」とし、市場をゆがめる不公正な貿易、投資慣行に断固対抗するとの認識を、G7では一致させたことを明らかにした。

加工写真の工作が明らかになると、あるネットユーザはつぶやいた。「G7は経済、政治でも意見対立したとしても同盟国だ。しかし中国は貿易、軍事、情報技術でも、彼らに全面戦争を仕掛けている」

(編集・甲斐天海)