なぜ、中国共産党政権は韓国のTHAAD配備に激しく怒っているのか。どうして、一民間企業のロッテが中国当局の集中砲火を受けているのか? そもそも、中国当局は韓国のTHAAD配備に反対する立場にあるのだろうか。
2月末、韓国軍とTHAAD配備地の提供に合意したロッテグループは中国の怒りを買った。中国当局は、韓国への旅行ツアー禁止を指示し、ロッテグループが中国国内で営業するスーパーのロッテマートに営業停止処分を下した。中国国営メディアも、ロッテマートや韓国製品の不買運動を大々的に煽っている。
時事評論員の横河氏はこのたび、国際ラジオ放送「希望の声」のインタビューに応え、韓国のTHAAD配備に対する中国当局の思惑を分析を示した。下記は、横河氏のインタビュー内容の抄訳。
そもそもTHAADとは?
終末高高度防衛ミサイル(THAAD)は、米陸軍が開発した弾道迎撃ミサイルシステム。敵国が発射した弾道ミサイルが、航程の終末段階になり、大気圏に再突入している段階で、THAADはインターセプターと呼ばれる迎撃ミサイルを発射し、空中で敵国のミサイルを破壊するというもの。
米国は2008年、正式に配備した。日本は2006年7月、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル・テポドン2を発射した後、THAADの一部を導入して、航空自衛隊が試験的に配備した。
一方、韓国は中国の要望もあり、THAAD配備要請を拒み続けていた。16年に北朝鮮が4回目の核実験を行った後、ようやく韓国は配備に同意した。これは、北朝鮮の度重なる挑発に対して不満を募らせる韓国国民の意識が、配備反対から賛成へ転じたことが原因だと思われる。
北朝鮮の挑発 手をこまねく中国共産党政権
北朝鮮の挑発に、中国共産党政権(以下、中共)をただ傍観しているだけだった。韓国は絶えず、中国に対して、北朝鮮に圧力をかけるよう求めていたが、中国は韓国に、北朝鮮の核脅威に対しての安全保障を提供していない。
韓国メディアによると、当時、中韓の両政府は北朝鮮核実験をめぐって協力ホットラインを結んでいたが、中国は韓国からの協力要請の電話を無視してきたという。韓国は防衛のため、昨年7月にTHAAD配備決定を発表した。
韓国政府がTHAAD配備を拒んでいた期間に、挑発する北朝鮮に対して、中国が厳しい圧力をかけていれば、今のような状況にはならなかっただろう。
中共の詭弁
中国当局は、韓国のTHAAD配備に反対する理由として、「朝鮮半島の非核化目標に役に立たない。朝鮮半島問題を利用して、中国の正当な利益を侵害し、地域情勢をより複雑にした。中国をふくむ同地域の国家の戦略安全利益と地域の戦略均衡に害をもたらした」と主張した。
この言い分は全く理にかなってない。なぜなら、THAADは防衛用システムであって、核兵器ではない。朝鮮半島、そして東北アジアにおいて、中国以外で、核兵器を持つのは北朝鮮だけだ。北朝鮮の行動こそまさに、半島の非核化目標に相反している。侵攻される危険のある国に対して、武装解除しろと要請するのはおかしい。
実際、北朝鮮の核実験の放射能の影響を最も受けるのは、北朝鮮と隣接する中国の吉林省だ。
詭弁を展開するのはなぜか?
では、中共はなぜ韓国のTHAAD配備に反対するのか。中共は、北朝鮮の後ろ盾だからだ。金正恩は中共にとって手を焼く輩だが、しかし中共が北朝鮮金政権を支えていることは事実で、中共政権の本質と北朝鮮金政権の本質は同じで、自由主義や民主主義の国を敵視している。
中国と北朝鮮は連携協定が存在する。1961年、中共と北朝鮮は平和友好提携協定を結んだ。反対意見がなければ、この協定は20年ごとに自動更新される。1981年と2001年には自動更新された。次に更新されるのは2021年だ。
この協定は事実上、軍事同盟協定でもある。北朝鮮の金政権が他の国から軍事攻撃を受ける場合、北朝鮮の味方である中共は出兵しなければならない。
しかし、国際社会に向けて、中共は北朝鮮の核兵器やミサイルを公に支持を表明できるはずがない。いっぽう、北朝鮮の核兵器に反対するつもりはない。そのジレンマの中で、中共は韓国に矛先を向けた。「核兵器を製造する側は非核化の脅威ではなく、核兵器を防衛する側が非核化の脅威だ」という詭弁を弄している。
(つづく)
(時事評論員・横河、翻訳編集・張哲)
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