台湾と香港で中国離れが加速 共産党の「統一戦線の失敗」

2015/03/02
更新: 2015/03/02

中国共産党による「統一戦線」は苦戦しているようだ。香港で1日、日用品を買いあさる本土の観光客の締め出しを求める反中国デモが発生した。昨年2カ月ほど続いた民主化デモが沈静化したばかりだ。台湾では、政治・経済面で圧力を掛ける中国本土への警戒が高く、昨年3月には両岸協定の強行採決に反対する大学生が立法院を占拠した。「中国人ではなく台湾人」との認識が若者を中心に強まっている。

 台湾政治大学選挙研究センターの最新の調査の結果、現在、自らを「台湾人」と認識している人の割合は6割を上回った。「台湾人であり中国人」と考える人は3割強で、「中国人」と思う人は3.5%に留まった。

 また、台湾の独立と統一の支持動向については、90年代半ばの李登輝政権時は55%が統一を支持する傾向にあった。しかし、2000年代初期の陳水扁政権下では47%に減少し、馬英九政権時の現在、35%まで後退した。独立を望む声が急速に高まっている。

 2016年実施予定の総統選挙に影響する、統一地方選挙が昨年11月に行われた。最大野党の民主進歩党(民進党)が圧勝し、与党・中国国民党(国民党)は大敗を喫した。馬英九総統も引責し、兼任していた国民党主席を辞任した。

 この与党敗退は、同3月に起きた学生運動の影響が大きいとされる。馬英九政権の対中国政策に不満を持つ若者たちは「ひまわり学運」と呼ばれる学生運動を行った。両岸サービス貿易協定を阻止するため、立法院をひと月あまり占拠した。この運動は台湾国民の支持を集め、結果が選挙に反映した。

 香港は一国二制度の不支持と独立の支持

一方、香港では、香港大学学生会会誌「学苑」で、569人の香港内の学生を対象に、政治と香港の将来に関するアンケートが行なわれた。結果、中国本土と「一国二制度の維持」を賛成すると回答した学生は58%で、過半数に至るものの、前回調査の68%からは大きく数字を下げた。また、独立支持は前回15%だったのに対し、倍近くの28%まで増加した。

 また「中国当局の承認の可否にかかわらず国民投票が敢行されれば独立国家として成り立つ」と回答したものは5割以上に上った。

 台湾の馬英九総統も香港の梁振英行政長官も「北京寄り」のリーダーだが、国民からは本土警戒と独立の声が高まる一方だ。

 台湾紙・自由時報の駐ワシントン特派員の曹郁芬氏は、馬氏と梁氏による中国当局への経済の解放緩和政策のもたらした反発作用と分析する。実際には、経済上の利益を得た台湾や香港の市民はごく一部だという。

 中国共産党の政治戦略「統一戦線」は両地域で成功していない。いまだに、植民地化した国への好感度がいずれも高い。香港は、英国統治下を懐かしむ声が高く、香港英字紙サウスチャイナ・モーニングポストが2013年3月に行ったウェブアンケートの結果、9割以上が英国統治下に戻ることに賛成との結果が出た。2014年の訪日外国人は本土中国人が急増したものの、いまだに台湾がトップを飾る。
 

(翻訳編集・佐渡 道世)