【重慶亡命事件】派閥抗争が顕在化 中共分裂の予兆

2012/02/14
更新: 2012/02/14

【大紀元日本2月14日】重慶市党委員会書記である薄煕来の腹心の王立軍(重慶市副市長、政治法律委員会書記、公安局長)が、政権内の敵対勢力に狙われて調査されたため、薄煕来は自分を守るために、やむを得ず王立軍を投げ出した。これによって王立軍は米国領事館に駆け込み、助けを求めるという事態を招いた。この事件は中国だけではなく、国際的にも強い関心をひいた。この数日、中国国内の検索エンジンの最大手「百度」と海外Googleでは、重慶事件に関する検索回数がずっと上位に並んでいる。

重慶市副市長の王立軍が米国領事館に駆け込んだ事件は、国際社会の影響力が中共政権内部に介入するきっかけになり、中国共産党の閉鎖的内部権力の平衡を維持する連鎖の断裂が初めて公なものとなり、中共高層の権力闘争にアメリカが影響力を与える機会が生じた。これは歴史上、かつてなかったことだ。

王立軍は今月2日、薄煕来に重慶市公安局長の職を免じられた。その6日後の8日に米国政府は彼が米国領事館に駆け込んだことを認めた。その後、王立軍は北京に移送されている。この何日間の中で繰り広げられた王立軍と薄煕来の「暗闘劇」は、_deng_小平以来の中共高層権力間の「暗黙の了解」を破り、全面的な抗争を触発することになった。

高層権力の「暗黙の了解」

中国共産党の高層権力体制は中央集権のピラミッド構造だった。1人の絶対的権威によって権力のバランスが保たれてきた。だが、「胡温政権」になってから、この構造が崩れ、高層権力者の間では暗黙の了解と相互けん制で均衡を維持するようになった。派閥間は抗争があっても、本質的な部分は外部に漏れることがあまりなかった。

ウィキリークスに暴露された情報によれば、中国共産党政治局は決議を採択する場合、「全員一致で通過」の形式を採用している。つまり、長時間の討論を経て、与会の全政治局員の賛成を得てから始めて決議を決定する。胡錦濤の一票はただ「重みが大きい」だけだという。この構造は特定の人に権力が集中することを防止するためだと米国の外交官は指摘した。

中国共産党中央政治局委員の中で、上海派閥(江沢民派)は多数の常務委員を占めており、呉邦国、賈慶林、李長春、周永康がそれに当たる。胡錦濤の青年団派は常務委員の李克強と、委員の汪洋と李源潮などがいる。太子党に属するのは常務委員の習近平と委員の薄煕来などがおり、薄煕来はまた、背景に江沢民派を持っている。

王立軍は権力内部の抗争を公にした 

今回の重慶事件で、王立軍は米国領事館に駆け込み、中国共産党高層権力間の「暗黙の了解」を徹底的に打ち破った。王立軍の亡命で明らかになったのは中共政権内の抗争の残酷さだけでなく、薄煕来に関する内幕情報も含まれているという。これによって中共高層幹部の黒幕が、国内よりも先に、外国政府に掌握された。

米VOAによると、米国国務院スポークスマンは8日の定例記者会見で、王立軍が成都の米国領事館の高官と面会したことを認めた。

導火線は、薄煕来の「権力闘争の敗北」

2008年6月、温家宝首相の強い要求で、薄煕来は商務部長から重慶市党委員会の書記に降格された。この降格について海外の中国語メディアは、薄煕来が「まるで自分の政治生命の末路が見えた」と分析し、彼はこのままでは納得できず、権力の中央に復帰するために重慶での戦いを始めたという。

薄煕来は自分の政敵を倒すために、かつて腹心であった遼寧省錦州市公安局長の王立軍を重慶市公安局副局長に任命した。その数カ月後、王立軍は重慶市の元司法局長・文強を死刑に処した。文強は青年団派の要員で、広東省の書記(前重慶市書記)汪洋の腹心でもあった。

だが、昨年末、政治局常務委員の賀国強の管轄下の中央紀律検査委員会は密かに王立軍を召還し尋問した。自分の政治生命はもう終わりだと感じた王立軍は、処罰の軽減をねらい、薄煕来の数々の問題を摘発したという。これは政治局常務委員入りを目指す薄煕来にとって致命的な一撃となり、彼の「巻土重来」の目論みは実現から遠ざかった。今まで保たれて来た権力の平衡も薄煕来の敗北により崩れ、内部闘争が公なものとなった。

中共分裂の始まり

中国問題専門家の石臧山氏は、絶対的権威が不在の「胡温政権」で、暗黙のルールで維持してきた体制内権力バランスが崩れたきっかけは、薄煕来の「ルール違反」となる文強の死刑だと分析した。このことにより、敵もルールを無視し反撃を始めた。さらに薄煕来の腹心の「裏切り」により、中共の派閥闘争の真相が外部にさらされ、国際社会までも介入する事態となった。

石臧山氏は次のように指摘した。「これは重大なシグナルである。つまり、中共政権内部の権力平衡を維持する連鎖が切れ、全体的な内部抗争に入った。誰もが以前の『暗黙の了解』を気にとめることなく、誰もが他の人を構わなくなる。共産党の分裂はもう遠くはない」

(翻訳編集・東山)