中共「債務のわな」でザンビアが破綻危機 巨額融資の実態と国民を襲う生活苦

2026/11/02
更新: 2026/11/02

ザンビアはかつて、アフリカでも経済成長の速い国の一つだった。しかし、中国共産党(中共)から巨額の借り入れを重ねた結果、深刻な債務危機に陥り、国全体が破綻寸前に追い込まれた。国民も厳しい生活を強いられている。

中共の大手国有銀行や金融機関は、インフラ投資を餌に、ザンビア政府や国有企業への融資を続け、複雑な融資の仕組みを利用して影響力を拡大してきた。ところが、債務が膨らみ、返済能力が低下すると、金融機関は強硬な姿勢を取り、融資情報の不透明さも債務再編を難しくしている。さらに、深刻な干ばつによる電力供給の制限が重なり、その影響は一般家庭や小規模事業者にも広がっている。

電力制限で経営難に ザンビアの小規模事業者が苦境に

ザンビアでは、国民の約60%が貧困状態にあり、電力供給の大部分を水力発電に依存している。2024年、数十年に一度の深刻な干ばつによって国内の貯水池が干上がり、財政難も重なって、ザンビアの電力会社は電力供給の制限を始めた。

2024年3月以降、ザンビアでは計画停電が続き、国内の広い範囲で停電が発生している。1日の電力供給がわずか4時間に限られることもあり、一般家庭の暮らしは極めて厳しくなった。特に、電動ポンプで水をくみ上げ、販売用の農作物を栽培する小規模農家は深刻な打撃を受けている。

首都ルサカ郊外で野菜を栽培するカナングワ・ニュラブさんは、停電で畑に水をまけず、10エーカーの畑で野菜が炎天下で枯れていくのを、なすすべもなく見守るしかなかったと語った。作物を引き抜いて豚の餌にすることもあった。

ニュラブさんによると、電気が使えないため、収穫した野菜を冷蔵保存することもできず、畜産や食肉処理事業も続けられなくなった。その結果、栽培面積を大幅に縮小し、種まきの量も減らさざるを得なくなり、季節労働者を雇う余裕もなくなった。

電力会社は事前に停電の予定を公表するものの、その予定も安定していない。そのため、作物の管理計画を立てられず、損失を減らすための対策も適切なタイミングで取れない。ニュラブさんは、1日4時間の電力供給では農場の経営を続けられず、閉鎖も考えざるを得ないと語った。

ザンビア各地には、ニュラブさんと同じように、事業の存続が危ぶまれている小規模事業者が数え切れないほどいる。

中共の債務のわなに陥ったザンビア

2011年、ザンビアの国営電力会社ZESCO(ゼスコ)は、中国工商銀行と約2億8500万ドルの長期融資契約を結んだ。それから10年以上にわたり、中国工商銀行やほかの中国の金融機関から借り入れを重ね、ザンビア政府と同様、中共の「債務のわな」から抜け出せなくなった。

ザンビアは世界でも有数の重債務国であり、コロナ流行中、アフリカで初めてソブリン債務(国債や政府機関債など各国政府や政府機関が発行する債券の総称)のデフォルトに陥った国でもある。国内最大の国有企業であるZESCOも、ザンビア全体の債務を膨らませた大きな要因の一つとなっている。

国際調査報道ジャーナリスト連合が主導し、23の報道機関が参加した共同調査「チャイナ・キャピタル」では、顧客記録、デューデリジェンス報告書(譲受企業が対象会社の実態をまとめた調査結果の文書)、融資契約書、会議の議事録、中国語と英語による社内メールなど、約480万件に上る文書を調査した。

この調査は、中国工商銀行が英国の子会社やロンドン支店を通じて、ザンビア政府や企業を抜け出せないほど深刻な債務の泥沼へと追い込んでいった実態を明らかにした。

ザンビアをはじめ、多くのアフリカ諸国は天然資源が豊富だが、インフラ整備は大幅に遅れている。中共はそこに目をつけ、資金・人手・技術を提供してインフラ整備を支援すると持ちかけた。

調査によると、中国工商銀行は商業銀行を装いながら、実際にはほかの中国の金融機関と同様、中共の外交政策を進めるための道具である。

同行は世界各地の融資案件を審査する際、一帯一路構想を判断材料にすることが多かった。また、複雑な融資の仕組みを利用し、ザンビアの返済能力を超える、厳しい条件の高リスク融資を提供していた。

一方、開発事業への参入を狙う多くの中国企業も、ザンビアの国有機関に対して、借金を重ねて開発事業を進めるよう強く働きかけていた。

ザンビア政府もインフラ開発のために多額の資金を必要としており、中国からの融資は一見、容易に受けられるように見えた。こうしたさまざまな要因が重なり、ザンビアは抜け出せないほど深刻な債務の泥沼に陥った。

甘い言葉でアフリカ諸国を取り込む

2011年、ザンビア経済は成長が期待されており、政府は送電網や高速道路、競技場、空港など、全国的なインフラ整備に多額の資金を投じ始め、外国からのインフラ投資も積極的に呼び込んでいた。

同じ頃、中共もアフリカへの大規模な進出を始めていた。2013年、習近平は一帯一路構想を打ち出した。ザンビアのような貧しいアフリカの内陸国に対し、中共は西側の金融機関に代わる最良の選択肢だと自らを売り込んだ。

中共のこうした甘い言葉に、多くのアフリカ諸国が取り込まれた背景には、いくつかの理由がある。

第一に、中共の融資は西側の金融機関と比べ、経済政策上の条件が少なかった。第二に、アフリカでは西側諸国による過去の植民地支配の記憶が、今も根強く残っていた。第三に、中国の投資家は、ほかの投資家が手を出さない分野にも積極的に進出していた。

西側企業にとって、ザンビアはリスクプレミアムが高く、資本コストも高い国だった。

ドイツの経済学者で、ザンビアの健全な財政運営を支援するプロジェクトの責任者を務めるバーバラ・ドゥツラー氏は、中共の手法を次のように説明した。

中国では国家と産業界が一体となり、包括的な地政学戦略に基づいて投資を誘導・管理している。利益が出なくても、中共の政策目標の実現につながるのであれば、巨額の資金を投入するという。

国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の書面による質問に対し、中共駐ザンビア大使館は、融資を利用して政治的利益を得ようとしていることを否定した。

大使館側は、市場のルールや国際的な規範を厳格に守り、協力相手国の意思を尊重していると主張。また、他国に借り入れを強要したり、返済を迫ったり、融資契約に政治的条件を付けたりすることはなく、政治的利益も追求していないなどと説明した。

ザンビアはアフリカ第2位の銅生産国だ。2004~14年には、国際商品市場の好況と中国の旺盛な銅需要を背景に、GDPが年平均7.4%成長した。しかし、経済成長は主に都市部と鉱業部門に集中し、経済が抱える根深い構造的問題は解消しなかった。

この時期、ニュラブさんのような小規模事業者は商売が繁盛し、将来に希望を抱いていた。一方、極度の貧困状態にある人々にとって、長年の経済成長は生産的な雇用機会の増加につながらず、生活水準にも目立った改善は見えなかった。

中共が資金を提供するインフラ事業は、公開競争入札を経ずに承認されることが多かった。また、資金を効率的に使わず、建設費を不当に高く設定した事業も少なくなかった。国が優先すべき開発事業とはかけ離れ、経済成長に十分つながっていないと指摘される事業も多かった。

ザンビアでは、多くの政治家が実績を示して有権者の支持を得るため、選挙前に道路工事を急がせたり、ほかのインフラ事業を性急に進めたりしたと指摘している。その結果、ずさんな工事を行い、完成後間もなく破損し、修理が必要になるケースもあった。

一部の政府当局者は借り入れの増加を抑えようとしたが、「財政保守主義」だとして批判された。

不運にも、ザンビアが巨額の借り入れを重ねていた時期に、主要輸出品である銅の価格は下落を続けた。国際格付け会社は相次いで警告を発し、ザンビアのソブリン信用格付けを引き下げた。

2015年9月、S&Pグローバルは、銅価格の低迷によってザンビアの財政赤字がさらに拡大し、対外債務の負担も「増大する」と予測した。

ザンビアは再び重い債務負担に直面したが、中共側の債権者はそれでも巨額の融資を続けた。当時、ザンビアの債務管理能力は限られており、政府は借り入れの全体像を十分に把握できていなかった。

中国企業が融資を仲介 深まる債務のわな

2010年代には、多数の中国企業がザンビアに進出した。インフラ建設事業の契約を獲得するため、ザンビア政府や関係機関が中国工商銀行をはじめとする中国の金融機関から融資を受けられるよう、中国企業自らが積極的に手配した。

ボストン大学グローバル開発政策センターのグローバル・チャイナ・イニシアチブに所属する研究者、ウー・ティエンイー氏によると、こうした建設請負業者が融資の手配まで担う仕組みは、ザンビアで次第に制度化していった。

ザンビア政府も、融資申請や資金調達を中国の建設請負業者に直接任せる方が便利だと考えるようになった。

しかし、こうした取引では、中共が融資と建設工事の両方で利益を得る一方、ザンビア側は返済義務と財務上のリスクの大部分を負うことになった。

ザンビア財務省の元当局者は、本来は財務省が借り入れを監督するはずだったが、次第に管理が及ばなくなり、一時期は全体を統括する機関が事実上ない状態だったと語った。

中国アフリカ研究イニシアチブの調査によると、中国から融資を受けたアフリカ諸国のうち、ザンビアは融資を提供した中国の金融機関の数が最も多く、中国の融資によるインフラ事業を請け負った中国企業の数も2番目に多かった。

多くの専門家は、汚職や利益供与、制度の不備がザンビアの債務危機をさらに悪化させたとみている。

大規模なインフラ事業には巨額の資金が投じられやすく、政治家がそれに乗じて多額のリベートを受け取り、私腹を肥やす機会にもなった。

ザンビアへの融資リスクが高まっていたにもかかわらず、中国工商銀行は現地での融資を拡大し続けた。債務が膨らむにつれ、ザンビアの野党政治家や市民団体の間では、中共による融資が略奪的なものではないかとの懸念が強まった。

国際メディアも、中共の「債務のわな外交」を相次いで報じた。これは、債権国が借入国に意図的に過大な債務を負わせ、その債務を利用して譲歩を迫る手法を指す。

中共の融資が債務危機を悪化 苦しむザンビア国民

ザンビアの国営電力会社ZESCOは、中国工商銀行から2億8500万ドルを借り入れており、2018年6月に初回の2千万ドルを返済する予定だった。

しかし、当時すでにZESCOは深刻な経営難に陥っており、多額の債務を抱え、電力供給業者への支払いも滞っていた。

それにもかかわらず、中国工商銀行は、中国企業の特変電工が参加する別の電力事業について、数億ドルの融資を提供すると約束した。

中国工商銀行の内部記録によると、同行は以前からZESCOの返済能力を懸念していた。

降雨量の減少によって水力発電による収入が落ち込む一方、ZESCOは中国輸出入銀行と中国工商銀行が共同で融資した15億ドルの水力発電所建設事業の債務も抱えていた。

さらに、同社は融資管理手数料として1500万ドルを支払ったばかりで、財務状況は一段と悪化していた。

ところが、中国工商銀行の本部はロンドン支店に対し、同行がZESCOのために管理していた準備金口座から、2千万ドルを引き出すよう指示した。

内部報告によると、本部は必要書類がそろっていない段階から支払いを迫っていた。

この口座は中国工商銀行が完全に管理していたため、同行は口座内の資金を直接債務の返済に充てることができた。その結果、ZESCOはさらに大きな財務的圧力を受けた。

2014~19年、ザンビア政府が外国の債権者に負う債務の対GDP比は4倍以上に増加した。

2020年には、ZESCOの子会社が15億ドルの水力発電所建設のための融資を返済できなくなった。ザンビア政府も対外債務の返済が滞り、ソブリン債務のデフォルトに陥ったため、債権者との債務再編交渉を余儀なくされた。

財政負担を軽減するため、ザンビア政府は燃料などの補助金を削減し、電気料金を引き上げた。さらに、通貨安とインフレによって生活費が上昇し、国民の暮らしは一層厳しくなった。

2023年には過去40年間で最悪の干ばつに見舞われ、水力発電量が激減した。全国で停電が続き、企業や農場は深刻な打撃を受けた。

停電に伴って盗難被害も発生し、事業者は発電設備を購入するための追加負担も強いられた。多くの店舗や農場が廃業に追い込まれた。

中国側の融資情報が不透明 債務再編も難航

ザンビアの債務危機は、中共の融資契約に設けられた秘密保持条項の問題も浮き彫りにした。ボストン大学の研究者らによると、2021年8月時点で、ザンビアが中共系の公的・民間金融機関に負っていた未返済の対外債務は約66億ドルに上り、政府が公表していた最も高い数字のほぼ2倍に達していた。

AidDataなどの研究機関(エイドデータ研究所)が2021年に発表した調査では、中共の融資契約には厳しい秘密保持条項が盛り込まれることが多いと指摘した。

そのため、外部から実際の債務規模を把握することが難しく、ほかの債権者がザンビアの返済能力を判断するうえでも障害となっていた。

また、中共は長年にわたり債務の元本削減に応じない姿勢を貫いたため、債務再編交渉は数年に及び、ザンビア経済の回復を妨げた。

その後、中共はフランスとともに公的債権者委員会の共同議長を務めることに同意した。2024年には、中国工商銀行を含む民間金融機関との間でも、債務再編について原則合意に達した。

中共の「債務のわな」が引き起こした深刻な危機は、中国に対するザンビア国民の見方を大きく変えた。

世論調査機関アフロバロメーターによると、中国の経済的・政治的影響を肯定的に捉えるザンビアの回答者の割合は、2014年の72%から2022年には42%へと低下した。

ザンビアの事例は、中共の対外融資に、情報の不透明さや債務返済の難しさ、債務再編交渉の難航といった深刻な問題があることを示している。

中共が仕掛けた「債務のわな」は、最終的に深刻な経済危機を引き起こした。その代償を負わされているのは一般国民や企業であり、国全体の経済発展にも大きな打撃を与えている。   

李平