防衛省統合幕僚監部は10月16日、2026年度上半期(4〜9月)の航空自衛隊による緊急発進(スクランブル)が442回だったと発表した。前年同期の265回から177回、約67%増えた。2022年度以降の上半期で最も多かった2022年度の446回に近い水準となった。
対象国別ではロシア機への対応が大幅に増えた。航空方面隊別では、北部と西部の増加が目立った。
ロシア機への対応 前年同期の約2.6倍
中国共産党(中共)機への緊急発進は285回で、全体の約65%を占めた。ロシア機への対応は152回で約34%、その他は5回だった。国・地域の判別には推定を含む。
中共機への対応は、前年同期の198回から約44%増えた。ロシア機への対応は59回から約2.6倍に増え、2022年度以降の上半期で最も多くなった。
中共機への対応が引き続き全体の過半数を占める一方、今期はロシア機への対応も大きく増えた。ウクライナ侵攻が続く中、日本周辺でもロシア機への警戒が必要な状況である。
西部は7.3倍 北部は2.1倍に増加
航空方面隊別では、北部が112回、西部が102回となり、前年同期から大幅に増えた。

最も多かったのは南西航空方面隊の201回で、前年同期から約6%増えた。ただ、全体に占める割合は約71%から約45%に下がった。
一方、北部は約2.1倍、西部は約7.3倍に増えた。西部の102回は、2022年度以降の上半期で最も多い。
緊急発進は南西で多い状況が続いているが、今期は北部や西部でも対応が増えた。
中共のY-9情報収集機 9月に5日連続で飛行
統幕が上半期に「特異な飛行」として公表した事例は25件だった。このうち、中共のY-9情報収集機に関する事例が13件と、半数を超えた。
Y-9は、長崎県の男女群島南方と沖縄本島沖の間の東シナ海で、往復する飛行や一方向への飛行を繰り返した。9月は3~7日まで5日連続で飛行が確認・公表され、9日にも確認した。5月と8月には、TB-001偵察・攻撃型無人機を伴う飛行もあった。
こうした飛行には、日本側の警戒監視や対応の状況を継続して調べる狙いがあるとも考えられる。ただし、公表資料では具体的な目的は明らかにしていない。
西部航空方面隊の緊急発進が増えたことに、九州西方でのこうした飛行が関係した可能性もある。ただし、個々の飛行と方面隊別の回数との関係は、資料からは確認できない。
ロシアのIL-20 日本海から太平洋まで飛行
ロシア機では、IL-20情報収集機の飛行が目立った。上半期に公表された事例は10件だった。
多くは日本海での飛行だったが、5月22日、7月24日、9月5日の3回は、日本海からオホーツク海を経て太平洋まで往復した。
9月5日には、中共機のY-9が東シナ海を飛行し、ロシアのIL-20は日本海から太平洋にかけて飛行した。中ロが連携したかどうかは、資料からは分からない。空自は同日、異なる海域で両国の航空機に対応した。
中ロ爆撃機が同日に2度の共同飛行 四国沖へ
6月27日には、中共軍とロシアの爆撃機が、同じ日に2度の共同飛行を行った。
午前から午後にかけて、中共のH-6爆撃機2機が東シナ海から日本海に入った。その後、ロシアのTu-95爆撃機2機、Tu-142哨戒機2機と合流し、東シナ海まで共同で飛行した。
同じ日の午後には、ロシア機に、大陸方面から飛来した別のH-6爆撃機2機が合流した。沖縄本島と宮古島の間を通過し、四国沖の太平洋まで飛行した。いずれの共同飛行にも、中共軍のJ-16戦闘機が随伴した。
中ロの爆撃機は、2025年12月9日にも沖縄本島と宮古島の間を通過し、四国沖の太平洋まで共同で飛行した。両国の爆撃機が共同で四国沖まで進出したのは、この時が初めてだった。日本政府は両国に「安全保障上の重大な懸念」を伝えた。
今回は、その約半年後に再び四国沖まで飛行したことになる。日本海での合流と四国沖への飛行を同じ日に行い、日本周辺の広い範囲で共同飛行を実施した。
日中関係の緊張と回数増加の関係は不明
日中関係は、高市早苗首相の台湾有事を巡る答弁を受けて緊張した。2025年12月には、沖縄本島南東の公海上空で、中共軍空母「遼寧」から発艦した戦闘機が、自衛隊機に断続的にレーダーを照射する事案も起きた。
ただ、統幕の資料では、個々の飛行の意図は説明されていない。日中関係の緊張と緊急発進回数の増加に、直接の関係があるかどうかは分からない。
同じペースが続けば年間900回近くに
上半期に新たな領空侵犯の公表事例はなかった。統幕がこれまでに公表した領空侵犯は計49件で、直近は2025年5月に中共軍のヘリコプターが尖閣諸島の魚釣島周辺の領空に侵入した事例である。
年間の緊急発進回数は、2016年度の1168回が最も多く、2025年度は595回だった。下半期も上半期と同じペースが続けば、2026年度は900回近くになる。2010年代後半の年間900〜1千回前後の水準に近づく。
緊急発進には、戦闘機の運用に加え、パイロットや整備員、管制要員らの対応が必要となる。回数が増えれば、機体の整備や人員への負担も増す。
中ロの航空機が日本周辺の広い範囲で活動を続ければ、南西だけでなく、北部や西部の部隊でも負担が重くなる可能性がある。
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