中国の借金が膨らみ続けている。各国の中央銀行などが加盟する国際決済銀行(BIS)の統計を引用した米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、企業・政府・家計を合わせた非金融部門の債務残高は、2025年末に国内総生産(GDP)の約3倍に達した。GDPに対する債務残高の比率は、2019年末の約240%から、6年間で約60ポイント上昇したことになる。
政府の利払い負担も増している。2026年予算では、中央政府の利払い費は約8740億元(約20兆5900億円)に上る。これは、地方への移転支出を除いた中央政府自身の一般公共予算支出の約19.2%に当たる。一方、地方への移転支出などを含む中央一般公共予算支出全体に占める割合は約5.8%となる。
中央・地方政府を合わせた利払い負担も大きい。英紙フィナンシャル・タイムズが引用した米調査機関コンファレンス・ボードの推計によると、2026年の中央・地方政府の利払い総額は約1.4兆元(約32兆9800億円)に達し、2014年の約4倍となる見通しである。
政府の利払い費が増加 財政収入の伸びを上回る
問題は、財政収入の伸びが利払い費の増加に追いついていないことである。中国財政部などの公表データによると、中央政府の一般公共予算収入は、2019年の約8.93兆元(約210兆3600億円)から2025年の約9.40兆元(約221兆4300億円)へと、6年間で約5%の増加にとどまった。
一方、中央と地方を合わせた全国の一般公共予算収入は、同じ期間に約13.5%増加しており、全国で見れば収入が横ばいだったわけではない。それでも、MERICSの分析によると、全国の利払い費は2019年から5割以上増えており、収入の伸びを上回っている。
2026年予算でも、中央政府の利払い費は前年比6.7%増となる一方、中央一般公共予算収入の伸びは1.8%にとどまる見込みである。家計に例えれば、給料が少し増えても、それ以上の速さでローンの利息負担が膨らんでいく状態といえる。
しかも、公式の政府債務統計だけでは、地方政府に関連する債務の全体像を十分に把握できない。地方政府は、自ら設立した資金調達会社である地方政府融資平台(LGFV)などを通じても借り入れを行ってきた。こうした債務の一部は公式の政府債務とは別に扱われており、地方財政の実態を見極めるうえで見逃せない問題となっている。
不動産不況で土地収入が減少 地方政府の債務返済に重荷
地方財政が厳しい状況にある理由の一つは、不動産不況である。中国では都市の土地は国有で、農村などの土地は、法律で国有とされるものを除き、集団所有となっている。地方政府は国有地の使用権を開発業者に譲渡し、その収入を重要な財源としてきた。
しかし、不動産市場の低迷は、土地使用権の譲渡収入だけでなく、不動産関連の税収にも打撃を与える。台湾のシンクタンク、中華経済研究院の王国臣副研究員は、米政府系メディア「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」の取材に対し、不動産不況に伴う土地使用権の譲渡収入や関連税収の大幅な減少が、地方政府の債務返済を難しくしていると指摘した。
地方政府は、重要な財源が細る一方で、過去の借り入れに伴う返済負担を抱え続けている。王氏は、こうした状況では債務の返済は難しいとの見方を示している。
AI・半導体・EVへの低金利融資 過剰投資と企業の延命が課題
米経済誌フォーチュンによると、中国当局は欧米による技術封じ込めを打破し、「強国の夢」を実現しようとしてきた。その一環として、国有銀行にAI、半導体、電気自動車(EV)、ロボット、再生可能エネルギー分野への融資を指示している。
地方政府も、当局が後押しする産業を支援するため、低金利の融資を求めることが多い。
中国で長年続いてきた融資の拡大は、非効率な企業の延命や過剰な生産能力につながってきた。低金利で資金を供給して企業活動を支えても、その資金が収益性の低い設備投資に向かえば、債務ばかりが積み上がりかねない。
米調査会社ロジウム・グループの分析によると、2025年12月に実行された融資の58%は、貸出金利の基準となるローンプライムレート(LPR、当時3%)以下の金利だった。同社は、こうした低金利融資の割合が上昇した背景として、国有企業向け融資の割合が高まる一方、民間企業向けの割合が低下していることを挙げている。
低金利融資は企業の利払い負担を軽減するものの、一部の産業では過剰な設備投資や非効率な企業の延命を助長したと指摘している。生産能力が需要を上回れば、企業間の値下げ競争が激しくなり、利益が圧迫される。企業収益の低迷は、企業所得税などの税収を押し下げる要因にもなる。企業が赤字になっても全ての納税義務がなくなるわけではないが、収益の悪化が財政に及ぼす影響は無視できない。
英調査会社キャピタル・エコノミクスのマーク・ウィリアムズ氏は、長年の融資拡大の結果、銀行システムが利益を生まない企業を支え続け、産業界で損失が広がり、過剰生産能力が固定化したと指摘している。借り入れで生産を支えても、十分な利益を生み出せなければ、債務負担の軽減や財政難の解消にはつながりにくい。
中国の債務は金融危機につながるか 景気対策の余地に制約
債務が膨らみ続けるなか、返済負担が中国経済に及ぼす影響や、政策の余地が狭まることへの懸念が強まっている。ただし、債務の規模が大きいからといって、直ちに金融危機が起きるとは限らない。
王氏はVOAに対し、中国の債務の多くは人民元建てで、国内の貯蓄によって支えられていることから、直ちに金融危機につながる可能性は低いとの見方を示した。一方、地方政府が多額の債務を抱えていることで、財政出動によって景気を下支えする余地は狭まっている。危機が急激に表面化しなくても、財政上の制約が経済の重荷となることがある。
王氏は、工場などへの投資を優先する政策を見直し、教育の充実や、医療を含む社会保障の拡充を進めるべきだと主張する。国民が将来に抱く不安が和らげば、安心して消費にお金を回せるようになるとの考えである。生産能力を増やす投資だけでなく、家計が消費を増やす環境を整える必要があると訴えている。
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