激変する中国 違法と知りながらも選ばざるを得ない 現金化される最後の手段

中国 病院前に立つ失業者 「血でつなぐ生活」

2026/03/04
更新: 2026/03/04

「献血に補助はありますか」

そう遠回しに尋ねる。正面から「血を売りたい」とは言えない。中国では血液の売買は法律で禁じられているからだ。

このやり取りが交わされるのは、北京の301病院(中国人民解放軍総医院)の門前である。軍が運営し、高級幹部の治療も担うことで知られる中国有数の総合病院だ。

その病院の周辺では、静かな列ができることがある。
並んでいるのは、診察を待つ患者ではない。仕事を失い、生活費に困り、自分の血を差し出して現金を得ようとする人たちだ。

景気低迷が続くなか、資産を失い、借金を抱え、再就職もかなわない人が増えている。公的な支援は限られ、申請しても認められないケースも多く、追い詰められた末に残るのが、自分の体という現実だ。

こうした血液売買の実情について、北京で活動する仲介業者の男は本紙の取材に応じた。血液型によって金額が異なり、不足しがちな型ほど需要が高いという。A型やO型は800元(約1万6千円)、B型やAB型は700元(約1万4千円)。病院と連携し、献血予約を手配できるとも語った。

血液の売買は違法だ。当局は過去に仲介業者の取り締まりを強化し、知人を集めて献血させる制度も廃止と発表してきた。
しかし現場から仲介の姿が消えたわけではない。取引は今も水面下で続いている。

短期間に何度も採血を受ける人もいる。立ち上がると目の前が暗くなり、体がふらつくこともある。本来の献血は量や間隔が厳しく管理されている。しかし生活に追い込まれた人に、その間隔を守る余裕はない。

命を救うための血液が、失業と困窮の中で現金化されている。

病院の白い壁の前で交わされる小さな声は、中国社会の今の空気を静かに映している。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!