米海軍 資金投入だけでは造船危機を打開できず

2026/08/25
更新: 2026/08/25

論評

ダリル・コードル米海軍作戦部長は最近、潜水艦を巡る問題について厳しい数字を示した。米国の潜水艦引き渡し数は年間約1.2隻にとどまる一方、最低でも年間2.3隻が必要とされている。

コードル氏が3月、潜水艦産業基盤評議会で述べたように、海軍が配備するのは「何トン分の潜水艦」ではない。完全な戦闘力を備えた艦艇である。

米政府は緊急に対応している。米海軍が5月に公表した造船計画は、2027~31会計年度の計画で潜水艦建造に1249億ドルを投じるなど、造船と海洋産業基盤へ一世代に一度の規模の投資を行うとしている。海軍省は造船所、人材育成、供給業者、先進製造、オートメーション、分散型造船へ投資している。

これらはすべて必要である。しかし、投入資源の増加を生産量の増加と同一視することには危険がある。造船所は極めて多忙であっても、艦艇の建造が遅い場合がある。雇用した作業員数、支出を確定した金額、拡張した施設、着工した船体区画、追加した供給業者は、活動量を示す指標である。

戦略上の成果は、それとは異なる。完全な戦闘能力を持つ艦艇を、予測可能な間隔で艦隊へ引き渡すことである。

したがって、米海軍の造船危機は、装備調達や産業の生産能力だけの問題ではない。生産システムの問題でもある。海軍がそのような問題として管理しない限り、追加の資源は活動量を増やしても、艦隊への完成艦の引き渡し量を同じ割合で増やさない可能性がある。

多忙と生産性は同じではない

その証拠は無視し難い。米会計検査院は4月、コロンビア級弾道ミサイル潜水艦の1番艦の完成が、予定より少なくとも18か月遅れる見通しだと報告した

バージニア級潜水艦の建造は、2025年6月時点で年間約1隻のペースだった。これは海軍が掲げる年間2隻の目標の半分である。2025年に引き渡されたバージニア級潜水艦2隻は、いずれも予定より3年以上遅れた。水上艦隊では、一部のDDG-51フライトIII駆逐艦が、契約上の引き渡し日より22~58か月遅れると見積もられていた。

こうした遅延は、労働力不足、老朽化したインフラ、未成熟な設計、資材納入の遅れ、供給業者の問題、要件の変更、生産能力の不足など、個別の理由で説明されることが多い。それぞれの説明は正しい可能性があるが、別々の欠陥として扱えば、中心的な問題を見落とす。これらは一つの生産システムの中で相互に作用している。

労働力を例に考えてみる。特定の溶接工程がシステム全体の制約になっている場合、資格を持つ溶接工を増やせば生産量を高められる可能性がある。

しかし、本当の制約が設計の承認、検査能力、特殊な供給業者、試験設備、艤装工程の順序のいずれかにある場合、別の場所に溶接工を追加しても、主としてボトルネックで待機する作業が増えるだけである。個別工程の生産性が上昇しても、艦艇の引き渡しは増えない可能性がある。

インフラと供給業者についても同じことが当てはまる。工場面積を拡大しても、そこを流れる作業が設計、資材、品質保証、試験、後工程の能力と同期している場合にしか役立たない。

供給業者を増やしても、規格に適合する資材を期限通りに納入できる場合にしか効果はない。能力や品質が不十分な供給業者が不適合品、検査負担、手直しを増やせば、本来拡大するはずだった希少な生産能力を逆に消費する可能性がある。

制約工程が艦隊を左右する

生産システムは、すべての資源の平均的な速度では進まない。生産を制限している制約工程の速度で進む。この原則は、民間製造業、原子力事業、そのほか信頼性が重視される事業ではよく知られているが、海軍の造船にも戦略上の意味を持つ。

したがって、経営上の最初の問いは「どこをさらに増やせるか」ではなく、「次の完成艦の引き渡しを現在制限しているものは何か」でなければならない。

答えは艦級、造船所、建造ブロック、さらには建造工程の段階によって変わる可能性がある。このため、制約工程の管理は一度限りの産業基盤調査ではなく、継続的に行わなければならない。

制約工程を特定した後は、回避可能な混乱からその工程を守り、制約工程が実際に処理できる量に合わせて前工程の作業量を調整する必要がある。

システムが完了できる量を超えて作業を始めても、生産能力は増えない。増えるのは仕掛かり作業である。具体的には、部分的に完成した船体区画、順番待ちの検査、担当技能工が対応できないまま配置された資材、処置を待つ設計文書、予定より長期間にわたり希少な場所を占有する艦艇などである。

国家安全保障を担う事業にとって、過剰な仕掛かり作業は単に非効率なだけではない。戦闘上の価値を持たない未完成の資産に、労働力、資材、資金、日程上の余裕を閉じ込めることになる。

品質は生産能力である

第二の転換は、最初の工程で基準を満たす品質を、単なる規則順守の問題ではなく、生産速度の問題として扱うことである。

補修される溶接箇所、却下される部品、設置後に修正される図面、繰り返される試験は、いずれも熟練労働力と施設の時間を二重に消費する。労働力に制約がある産業基盤では、手直しは実質的に生産能力を減少させる。

これは、厳格な品質要件を工程短縮のために緩和することができず、緩和すべきでもない原子力艦艇の建造では特に重要である。

解決策は、品質保証を減らすことではない。工程能力を高めることである。具体的には、成熟した要件、安定した仕様、資格を持つ人員、能力のある供給業者、管理された特殊工程、信頼できる資材、欠陥が後工程へ広がる前にばらつきを早期発見する体制が必要である。

ここに、信頼性の高い生産システムの論理と、単純な「もっと速く進める」運動との違いがある。速度は、安定し、十分な能力を持つ工程の結果として生まれる。

不安定な工程に日程上の圧力を加えると、多くの場合、逆の結果を招く。緊急対応、順序を外れた作業、手直しが増え、引き渡し時期の予測が難しくなる。

加速する前に安定化を

米会計検査院は、設計が十分に成熟する前に建造を開始する危険性を繰り返し指摘している。米海軍の造船に関する同院の包括的な評価は、既存の装備調達体制内で小幅な変更を行うだけでは、遅延と費用超過の悪循環を断ち切れない可能性が高いと結論付けた。

この指摘は、装備調達体制だけでなく、生産規律にも広げるべきである。建造ペースを引き上げる前に、海軍と造船事業者は、基盤となるシステムが加速に耐えられるほど安定しているかを確認する必要がある。

設計の成熟度、仕様管理、供給業者の準備状況、作業員の資格、資材の確保、検査能力、生産工程の順序は、追加作業を始めた後に解決すべき問題ではなく、加速するための前提条件として扱わなければならない。

これは、完璧になるまで待つという意味ではない。戦闘上の緊急性を考慮すれば、リスクを見極めた上で進める必要がある。

しかし、見極めた上で取るリスクと、管理されていないばらつきは異なる。生産システムは、どこでリスクを受け入れているのか、なぜ受け入れているのか、そのリスクをどのように検知するのか、結果を吸収できる能力が後工程にあるのかを把握していなければならない。

活動量ではなく艦艇を測れ

海軍はすでに、説明責任の強化へ動いている。3月に発表した装備調達体制の再編は、ポートフォリオ責任者に対し、生産能力とサプライチェーン上のリスクを管理しながら、費用、日程、性能の間で、データに基づく判断を行うよう指示している。これは有望な基盤である。

次の段階は、全工程を通じた完成艦の引き渡し量を、組織全体の主要指標とすることである。

最上位の問いは単純である。必要な能力を持つ完成艦が、一定期間に何隻、実戦運用へ入っているのか。その割合はどの程度予測可能なのか。

その指標の下で、指導者は作業の流れを実際に左右する変数を追跡すべきである。制約工程の稼働率、待ち時間、仕掛かり作業量、初回合格率、手直しに要する時間、供給業者の納期順守と品質、設計変更の量、検査・試験に要する期間、日程の変動などである。

こうした指標は、個別工程の効率とシステム全体の成果との重大な違いを明らかにする。ある作業場が労働力の稼働率目標を達成していても、後工程に作業を送り込み、待ち行列をつくっている場合がある。

ある計画が予算を執行していても、日程上の成果が悪化する場合がある。造船所が着工数を増やしても、引き渡しの間隔が長くなる場合がある。いずれの結果も抑止力の強化にはつながらない。

海軍が造船事業に求めているのは、単に作業量を増やすことではない。より多くの作業を艦艇という成果へ変えることである。

産業投資を艦隊への供給につなげる

米国は海洋産業基盤への積極的な投資を継続すべきである。米国には、より多くの熟練技能工、より強固な供給業者、近代的な施設、先進製造技術、持続的な需要が必要である。

しかし、こうした投資は、自動的に成果を生むと想定するのではなく、生産システムの論理に基づいて構成すべきである。

これは、制約工程を特定して管理し、仕掛かり作業を抑制し、手直しを測定して排除し、生産を加速する前に設計と仕様を安定させ、単に供給業者の数を増やすのではなく、能力と品質を高めるために供給業者を育成し、完成艦が予測可能な形で艦隊へ引き渡されることによって成功を測るという意味である。

この違いは、単なる経営上の問題ではない。戦略上の問題である。

部分的に建造された潜水艦は抑止力にならない。引き渡しが遅れた駆逐艦は、防空・ミサイル防衛能力を提供できない。産業基盤への投資は、航行し、戦い、勝利できる艦艇を生み出すまで、海軍力にはならない。

米政府は、米国の造船には一世代に一度の規模の取り組みが必要であることを正しく認識している。

次の段階は、投入資源の規模と成果が生み出される速度を混同しないことである。海軍がより大規模な艦隊を望むなら、工程全体の流れを重視して造船事業を管理しなければならない。

本稿はRealClearWireから転載したものである。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。