中共 海外信託課税を全国統一へ 富裕層の海外資産を追う

2026/08/17
更新: 2026/08/17

中国共産党(中共)当局が地方の税務担当者を対象に研修を進め、海外信託への課税方法や実務上の取り扱いを全国で統一し、中国の富裕層への徴税を強化しようとしていることが分かった。これまで一部の富裕層は省レベルの税務当局と個別に和解していたが、新たな規則の下でもこうした合意が有効かどうかは明らかになっていない。

CNBCは8月15日、複数の税務顧問の話として、中共国家税務総局が地方の税務担当者に研修を行い、海外信託への課税をめぐる実務上の基準を統一しようとしていると報じた。

弁護士によると、国家税務総局はすでに中国国内の一部の法律事務所や会計事務所に指針案を送り、今後数週間以内に関係者との協議を行う予定だという。

関係者は、当局が今後さらに指針案を示し、最終的な文書を公表するとみている。

北京盈科法律事務所のパートナー、ユアン・ツァオ氏は、2023年以降に設立された信託については、設立時に20%の税負担が生じると説明した。

一方、それ以前に設立された海外信託については、過去の収益を申告する必要があるのか、何年分まで対象になるのか、未分配利益をどう扱うのかなど、不明確な点が残っているという。

税務顧問らは、多くの信託資産が海外投資の申告や海外への資金移動にも関係する可能性があると指摘している。

税務申告の手続きを済ませても、信託資金を当初中国国外へ送金した手続きが中共の外国為替管理規定に違反していた場合、外国為替当局の調査や処分の対象となる可能性がある。

7月、中共財政部は海外投資に関する申告規則を発表し、家族信託の納税義務を信託の委託者(settlor)と結び付けた。

また財政部は、外国の旅券を所持していても、所得の主な源泉が中国本土にある場合は、引き続き納税義務を負うと明記した。

中国の不動産大手SOHO中国を創業した潘石屹の一族が関わるケイマン諸島の信託は、今後の課税の行方を占う試金石となる可能性がある。

外国籍の妻が設立した信託には、これまでに100億香港ドルを超える配当金が支払われており、妻は委託者であると同時に受益者でもある。

中共当局が、すでに海外へ移住した中国の富裕層に税金をさかのぼって徴収できるかどうかも注目されている。

潘石屹の一族には3か月の猶予期間が設けられており、当局によると10月までに税務申告を行う必要がある。

英法律事務所DLA Piperでアジア税務部門の共同責任者を務めるウィンソン・リー氏は、中共国家税務総局が省・市・県の各級で内部研修を続け、海外信託への課税について各地の税務当局の解釈を統一しようとしていると明らかにした。

地域ごとに異なる課税・徴収

問題が敏感だとして匿名を条件に取材に応じた香港の弁護士は、7月に財政部が新規則を発表する以前は、地域によって税の徴収方法に大きな違いがあったと述べた。

複数の弁護士によると、一部の富裕層はこれまで、省レベルの税務当局と協議し、税務上の負担を解決するため個別に和解していた。しかし、中共が新たな規則を導入したことで、こうした合意が今後も有効かどうかは明らかになっていない。

当局は資本流出への規制も強化している。今年初めには、中共が越境オンライン証券会社3社に対し、中国本土の利用者へのサービス提供を禁止した。

中国の地方メディアによると、北京や杭州など一部の都市では、中国国民が海外の保険から受け取った保険金への課税も始まっている。

7月下旬には国務院が新たな出入国管理条例を公布した。9月に施行されるこの条例は、国民の出国を制限できる範囲を拡大し、国家の技術や産業の安全を脅かす可能性のある輸出管理規定への違反も対象に含めている。

一部の税務顧問は、この条例によって地方当局が、税金を滞納している人物の出国を制限するための法的根拠を強める可能性があると指摘している。

上半期、個人所得税の伸びが主要税目で最大

今回の徴税強化は、中国の地方財政が厳しさを増す中で進められている。

地方政府は長年、土地使用権の売却収入を主要な財源としてきた。しかし、不動産市場の低迷で売却収入が大幅に減少し、新たな財源の確保を迫られている。

ユーラシア・グループの中国部門ディレクター、王丹氏は、中共が高所得者や海外資産への課税対象を広げ、徴税を強化するにつれ、個人所得税が政府にとって一段と重要な財源になるとの見方を示した。

王丹氏によると、今年上半期の中国の個人所得税収は約9千億元で、前年同期比13%増となり、主要税目の中で最も高い伸びを記録した。

ブルームバーグのコラムは、こうした課税強化によって、中国の富裕層が海外移住をさらに加速させ、中国との関係を断つ動きを強める可能性が高いと指摘している。

林燕