米連邦最高裁が出生市民権を維持する判断を示したことを受け、米国議会と政府機関は、出産ツーリズムを制限する措置の推進を加速している。狙いは、一部の中国共産党(中共)幹部が制度上の抜け穴を利用し、子どもに米国籍を取得させる動きにある。アナリストは、関連する改革が実施されれば、中共の官僚機構は受け身の立場に追い込まれる恐れがあると指摘している。
米議員が警告「中共の将軍が妻を米国に送り出産させることを許してはならない」
米連邦最高裁は6月30日、トランプ氏が「出生市民権」の廃止を目指して出した大統領令を退けた。これに対し、一部の共和党議員から批判が出ている。
共和党のエリック・シュミット上院議員は今週の2日、Fox Newsのインタビューで、こうした国家安全保障上の脅威に対応するため、米国議会と政府が出生市民権を制限する一連の措置を取り得ると説明した。
シュミット氏は「私はこの件を実現させたい。米国の未来が本当に危機に瀕していると信じているからだ」と述べている。
さらに「われわれは、中国(中国共産党)の将軍たちが妻をわが国に送り、子どもを産ませ……その子どもが米国市民になることを許してはならない。これはあまりにもばかげている」と語った。
米連邦最高裁が「出生市民権」を維持する判断を示したことについて、一部の議員は憲法改正による対応を望んでおり、別の議員は立法による解決を主張している。シュミット氏は、この二つの方法のいずれも支持している。
シュミット氏は、短期、中期、長期の解決策があると強調した。
「短期的な方法は行政措置を取ることで、中期的な方法は議会が立法措置を取ることだ。そして長期的な方法は憲法を改正することだ。私は、これらすべての案を推進すべきだと思う」と述べた。
上院司法委員会憲法小委員会の委員長であるシュミット氏は最高裁の判断が示された日に、SNSのXに、最高裁の多数派判断は「議会に一つの扉を残した可能性がある」と投稿した。
さらにシュミット氏は「私はその扉に踏み込むための法案を提出している。同時に、米国の市民権制度を再構築するため、憲法修正案の推進にも引き続き取り組む」と述べた。
シュミット氏は以前、中共が「人を米国に送り込んで子どもを産ませている」とし、その結果、最大150万人の中国公民が米国市民権を取得したと述べていた。これらの人々の多くは生涯の大部分を中国で暮らしているにもかかわらず、米国の選挙で投票し、米国の学校に通い、米政府の福祉を受けることができるとしている。
出産ツーリズムに照準 司法省は厳格取り締まりを表明
議員による警告に加え、米国の行政・司法当局も最近「出産ツーリズム」産業を対象に一連の具体的措置を進めている。
最高裁が6月30日、出生市民権を廃止しようとしたトランプ氏の大統領令を退けた後、米司法省は直ちに連邦検察官に対し、出産ツーリズム行為を優先的に捜査するよう指示した。
司法省の高官コリン・マクドナルド氏は、SNS上に公開した全司法省職員宛ての覚書で「司法省は、われわれの移民制度を詐欺的に利用する者を捜査し、起訴することを通じ、米国市民権の神聖性を断固として守る」と記した。
「出産ツーリズム」とは、妊娠中の外国人が特定の国へ渡航し、その領土内で出産することを指す。米国とカナダは、先進7か国(G7)の中で絶対的な出生地主義を維持している唯一の先進経済体であるため、子どもに第二国籍のパスポートを取得させたい富裕層家庭の主要な渡航先となっている。
トランプ政権および保守派の一部はこれまで、一部の中国公民が出産ツーリズムを行っていると指摘してきた。すなわち、子どもに米国市民権を取得させるため、妊娠後期に意図的に米国へ渡航するというものである。そこに中共との関係が関与している可能性があることから、一部の共和党議員はこれを国家安全保障問題とみなしている。
トランプ大統領は6月30日、最高裁の「出生地主義に基づく市民権」に関する判断は中共政府にとって勝利だと述べ、皮肉を込める形で習近平に祝意を示した。
米国が関連制限を実施すれば、中共官僚は受け身に
中国問題専門家の王赫氏は大紀元に対し、現在の問題の核心は、中国共産党が制度をどのように利用しているかではなく、米国自身の内部でどのように合意を形成し、この抜け穴を速やかに塞ぐかにあると分析した。現在、トランプ政権はこの抜け穴を塞ぐため、あらゆる方法を模索しているという。
王氏は、中共にとってこれは両刃の剣だと指摘した。「一方では米国の出生市民権を利用できる。しかし他方で、中共は高級幹部や官僚が米国で子どもを産むことに対しても制限をかけている」と述べた。
王氏は、中共が、官僚の子女が外国籍を持つことで生じる政治的リスクを懸念していると分析した。
オーストラリアの学者、林松氏は大紀元に対し、米国が制度上の抜け穴を塞ごうとするなら、出生市民権のみに焦点を当てるべきではなく、中共高官の家族の渡米をさらに制限し、資産の透明性を高めるべきだと述べた。
林氏は、米国が関連制限措置を実施すれば、中共官僚機構は受け身の立場に陥る恐れがあると分析した。これまでにも、米国が中共幹部の海外資産の調査や公表を検討しているとの情報が何度も伝えられており、中共はこれに対して常に非常に敏感だという。
林氏は例として、次のように述べている。
「私が知っている古い同級生の一人は、実は当時の中共外交部副部長の息子だった。彼の姉妹はかなり早い時期に米国へ送られ、定住し、子どもを産み、すでに米国の居留資格を取得していた」
「いったん米国が関連する人物に登録を求め、入国を制限すれば、中共は激怒すると思う。しかし、どのような対策を取ればよいのか分からないだろう」
米国務省が世界規模で動き、複数の出産ツーリズムネットワークを摘発
実際、米国務省は最近、世界規模で調査を展開しており、複数の「出産ツーリズム」ネットワークが相次いで摘発されている。
英紙デイリー・テレグラフの報道によると、米国務省は最近、西アフリカ、欧州、北アフリカの複数国の大使館・領事館で、偽造書類を用い、外国人妊婦の渡米出産を支援する出産ツーリズムネットワークを摘発した。
米テキサス州はこれに先立ち、ヒューストンにある中国系住民が運営する「德愛月子護理中心(De’Ai Postpartum Care Center)」を起訴した。同センターは「出生市民権を利用し、中国公民の入国を違法に支援した……その唯一の目的は出産であった」として告発された。同センターは、1千人を超える乳児が米国で出生するのを支援したとして起訴されている。
王赫氏は、司法面ではなお争点が残るものの、トランプ政権は今後も立法と行政手段を通じて改革を推進し続けると予想されると指摘した。米国社会が国家安全保障上のリスクをますます重視する中、各界は出生市民権制度がもたらし得る影響にさらに注目することになるという。
林松氏は、米国が関連情報を公開すれば、より多くの中国国民が中共官僚機構の実態を認識する助けになると考えている。また一部の国民はすでに、中共幹部の家族が海外へ移民し、海外資産を配置している状況を理解しているとし、米国が制限措置を打ち出せば「中国の庶民はとても喜ぶだろう。彼らは、中共の官僚が言っていることと、実際にやっていることがまったく別だと知っているからだ」と述べた。
中国共産党の超限戦は手段を選ばない
シュミット氏が「中共の将軍が妻を米国に送って子どもを産ませることを絶対に許してはならない」と述べたことについて、王赫氏は大紀元に対し、これは特定の集団を対象に単一の措置を提起したものではなく、米国の出生市民権制度に抜け穴が存在し、その抜け穴が中共に利用されていることを示す鮮明な例だと述べた。
王氏は、中共は長年、いわゆる「超限戦」の思考を奉じており、さまざまな制度上の抜け穴を利用して自らの目的を達成するとみており「中国共産党の超限戦は手段を選ばない。出生市民権はまさにその一つである」と述べた。
王氏はさらに、一部の中国人家庭が米国で子どもを産み、その子女が米国市民権を得れば、米国で福祉を享受し、投票することができると指摘した。しかし、こうした制度設計は国家安全保障上の懸念をもたらす可能性があるという。
王氏は、その中には長期にわたり中国で生活し、成長過程で中共の政治宣伝を受けてきた人もいるとし「米国に来ると投票の道具となり、中共の意思を実行することになる。これは米国の国家安全保障にとって重大な脅威である」と指摘した。
そのため、王氏はシュミット氏の今回の発言について、「このような現象に対し、最も厳しい警告を発したものだ」とみている。
林松氏は大紀元に対し、中共高官が家族を米国へ送ること自体が矛盾に満ちていると指摘。「中共はこれまで一貫して庶民に対し、『米国は中国を滅ぼそうとする意図を捨てていない』『米国は中国最大の敵である』と宣伝してきた。しかし、中共の多くの高官は、自分の家族を米国に留学させ、定住させ、さらに大量の資産も米国へ移している」と述べた。
林氏は、この現象は、中共高層部が表向きには反米を掲げながら、実際には自分と家族のために海外での退路を絶えず手配していることを示していると考えている。
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