ファーストリテイリング サプライヤーの人権監視を強化

2026/06/30
更新: 2026/06/30

欧州が今後2〜3年以内に企業の人権デューデリジェンス規制を強化することを受け、カジュアルウェアチェーンのユニクロの親会社であるファーストリテイリングは、サプライチェーンにおける人権問題の監視体制をさらに強化している。

欧州新規制に対応し監査を拡充

日経新聞の報道によると、ファーストリテイリングは毎年、第三者監査機関を通じて取引工場に対し、衛生・安全・賃金・労働時間など行動規範全般にわたる包括的な監査を実施しており、一次サプライヤーの全縫製工場および主要な二次サプライヤーも監査の対象となっている。

第三者機関が監査や現地調査を行う際は、欧米の衣料品企業の基準に準拠した業界標準を用い、サプライヤーに強制労働や児童労働などの人権侵害がないかを検査するのが通例である。現在、ファーストリテイリングは国ごとに専門の監査基準を策定しており、今年5月末時点でこれらの基準が世界700超の工場に導入されている。

今回の基準改定は主に、中国・バングラデシュ・ベトナム・インドネシアなどの衣料・繊維工場を対象としている。新基準は約300項目から成り、全工場に適用されるとともにファーストリテイリングの行動規範を基準とする。加えて、各国・地域固有の問題、リスク、法律・法令に対応するため、数十項目が追加されている。

例えばマレーシアでは、外国人労働者が多く、不法雇用や劣悪な労働環境が広く蔓延しているという固有の問題に対応するため、雇用主が正規の採用手続きに従っているかどうか、また組織的にパスポートを取り上げていないかを確認する条項が新たに設けられた。

2025年8月期の複数工場を対象とした試験監査では、提供情報の虚偽や労働者の連続シフトなどの問題が発覚した28工場に対して追加調査が求められた。指摘を受けた工場は業務改善を要求され、そのうち3工場は審査を通過できず取引契約を解除された。

人権で一歩でも後れを取れば企業イメージに傷

企業人権ベンチマーク調査では、ファーストリテイリングは世界105社中11位にランクインし、日本企業の中では最高位となっている。ドイツのスポーツウェアメーカー、プーマ(Puma)は世界2位で、衣料品企業の中で最高位となっている。

ボストン コンサルティング グループの内藤潤氏は、サプライチェーン上の人権リスクへの対応は規制遵守にとどまらず、欧州市場での成長促進や消費者の信頼醸成にもつながるとし、ファーストリテイリングの今回の新たな取り組みは業界の内外に波及効果をもたらすと予測している。

ファーストリテイリングがサプライチェーン監視を強化した主な理由は、欧州で近く施行される人権保護法規にある。EUは2029年を目途に、企業に対して環境・人権のデューデリジェンス実施を統一的に義務付ける予定だ。欧州に店舗を展開するファーストリテイリングはこの新規制への対応が求められており、人権面で一歩でも後れを取ったと見なされれば企業イメージに傷がつきかねない。

2021年、ファーストリテイリングは中国・新疆ウイグル自治区でユニクロ製品を生産したことは一切ないと否定したが、米国は同社の一部のシャツの入国を一時禁止した。

李平