中国の過剰生産能力 欧州が対応強化へ

2026/05/28
更新: 2026/05/28

中国の過剰生産能力とダンピングは、現在の世界的な貿易摩擦の焦点となっている。ヨーロッパ5か国は最近、欧州委員会に対し、中国の過剰な生産能力により厳しく対応する貿易防衛措置を取るよう求めた。

中国で製造業の過剰生産を背景に輸出が急増するなか、EUの主要加盟国は、ヨーロッパの産業を守るため、ブリュッセルに対し、中国の過剰生産能力により厳しく対応するよう求めている。背景には、「不公正な貿易慣行の増加」による「チャイナ・ショック2.0」への警戒がある。

ブリュッセルで中国を主要議題とする重要な政策討議が開かれる前、スペイン、イタリア、オランダ、フランス、リトアニアは共同文書に署名した。文書は中国を直接名指ししていないが、EUの一部主要貿易相手国が「新たな貿易障壁を設け、または体系的かつ構造的な産業の過剰生産を深刻化させている」と指摘した。さらに、こうした動きはすでにヨーロッパの産業に直接的な影響を及ぼしており、2019年から2025年までに、ヨーロッパでは工業分野で100万人以上の雇用が失われたとしている。

台湾の財政専門家、黄世聡氏は「中国はここ数年、世界各地へのダンピングを積極的に進めています。特にEUがその対象となっています。EUの主要産業である自動車、工作機械、代替エネルギー分野は、いずれも中国と直接競合している。そのため、景気が低迷するなか、中国からの影響を強く受けている。EU側はその原因を、中国によるダンピングや過剰な輸出攻勢にあると見ており、この問題はEUの重要な関心事項になるだろう」と指摘した。

大紀元のコラムニスト、王赫氏は「EUの対中貿易赤字は巨額で、1日あたり10億ユーロを超えている。この数字は、EUの産業と経済にとって極めて大きな打撃だ。EUはこれを長期的に続けることはできない。しかも赤字の拡大ペースはますます強まっている。したがって、EUが自らを守るためには、対抗措置を取らざるを得ない」と分析している。

「チャイナ・ショック1.0」が、低賃金の労働力を背景に中国が世界へ衣料品や玩具を大量に供給した段階だったとすれば、「チャイナ・ショック2.0」は、国家財政を使った補助金が製造業やハイテク分野の生産ラインに注ぎ込まれる段階だといえる。その結果、国内で吸収しきれない製品が、極めて低い価格で海外市場に大量に流れ込んでいる。

王赫氏は「中国は非市場経済の国であり、政府が経済において主導的な役割を果たしている。中共は輸出主導政策を取り、国内の過剰な生産分を海外市場に流し込んでいる。かつて中国の貿易黒字は主にアメリカから生じており、アメリカは長期にわたって中国の貿易黒字の80%以上を占めていた。しかしトランプ氏が当選し、米中間で関税戦争が始まった後、現在は米中貿易のデカップリングが進んでいる。その結果、中共によるダンピングの主な対象はアメリカからEUへ移った」と語った。

中国産の安価な鉄鋼がEU域内に大量に流入するのを抑えるため、欧州議会は19日、前例のない鉄鋼保護措置を圧倒的多数で可決した。輸入鋼材への関税を50%に引き上げるとともに、免税輸入枠を大幅に削減する内容だ。

黄世聡氏は「中国はWTOに加盟したが、今では世界経済に大きなひずみをもたらす存在の一つになっている。中国が過剰生産能力を国外に輸出しているため、世界各国の産業に非常に大きな影響を及ぼす可能性がある」と述べた。その上で、「中国経済が国外の産業に及ぼす悪影響については、最初にトランプ氏が問題視し、現在ではEU、さらには多くの発展途上国もこの点を認識するようになった。対応はすでに遅れていますが、今対策を取らなければ、被害はさらに大きくなる」との見方を示した。

EUが貿易防衛措置を強化するなか、既存の反補助金関税に加え、今後は反ダンピング措置や広範な関税引き上げに踏み切る可能性がある。これにより、中国製の低価格グリーンエネルギー製品は、欧州市場での価格競争力を失う可能性がある。

王赫氏は「EUはそもそも経済連合であり、意思決定の仕組みが複雑で、対応が遅れやすいという問題がある。そのため、アメリカと比べると対応のスピードはかなり遅くなる。結果として、EUが受けた被害も非常に深刻だ。しかし、現在のEUは27か国が一致して意思決定を行う必要があり、1か国でも反対すれば政策は成立しない。この仕組みが、中共に働きかけの余地を与えてい」と指摘した。

EUはこれまで対中政策をめぐって加盟国間の意見の違いが目立っていたものの、今回は複数の加盟国が共同で圧力をかけていると見られる。これは、EUが経済安全保障をめぐり、アメリカとの足並みをそろえつつあることを示しており、「デリスキング」政策を進めているとの見方もある。

王赫氏は次のように述べた。

「EUは現在、中国にとって重要な市場だ。米中のデカップリングが進む中で、中共はEU市場まで失うわけにはいかない。EUはこの点を利用して中共に圧力をかけ、実質的な譲歩を迫ることができる」

ヨーロッパは中国の新エネルギー製品にとって最も重要な海外市場の一つだと指摘されている。仮にヨーロッパ市場への輸出が大きく制限されれば、中国製造業の生産額に直接的な打撃を与え、中国国内のデフレ圧力をさらに強める可能性がある。