最近、トランプ米大統領は国家安全保障戦略(NSS)を公表し、歴代政権とは一線を画す姿勢を明確にした。その戦略の一部には、米国第5代大統領ジェームズ・モンローが打ち出した「モンロー主義」を現代的に再構成したかのような要素が見て取れる。
もっとも、今回の戦略は、200年前にモンローが構想したものをはるかに超える内容である。モンローの基本的な発想は、米国が欧州の問題に深入りすることを避ける一方で、米州を防衛し、西半球への外国勢力の介入を阻止することにあった。これは後に「マニフェスト・デスティニー(明白な運命)」と呼ばれる思想につながった。トランプも同様の目的意識を持っているが、彼の掲げる「アメリカ・ファースト」は、より広範な対象を含むものとなっている。
確かにトランプは、遠隔地にいる外国の敵対勢力が米州において民主主義や国家安全保障を損なおうとする動きを阻止することに重点を置いている。しかし同時に、中南米の近隣諸国が米国内の安定を脅かす事態を防ぐことにも強い関心を示している。では、トランプ政権は、こうした複数の課題をどのように同時並行で処理しているのだろうか。
その手段は、外交(ビジネスや和平合意)、経済的圧力(関税)、そして必要に応じた実力行使(迅速かつ決定的な打撃)を組み合わせることにある。まず政権は南部国境の管理を強化し、法の支配を無視する幅広い外国人の強制送還手続きを迅速化している。
次に、武器・麻薬・人身売買カルテルの解体に向け、国際社会と連携を進めている。これらの犯罪組織は地域に甚大な被害をもたらしており、北京政府、イラン政権、クレムリンが関与しているとの報告もある。これらの国々の影響力は、ラテンアメリカから北米にまで及んでいる。
明るい材料として、トランプ政権はメキシコのシェインバウム大統領および、暗殺未遂を生き延び、今なおあらゆるレベルで組織犯罪と闘い続ける勇敢な法執行官、オマル・ガルシア・ハルフッチ治安・市民保護大臣から貴重な協力を得ている。さらに、メキシコの大多数の州知事や司法機関からも支持を取り付けつつある。カルテルの解体は長期戦になるものの、情報共有の進展、世論の反発の高まり、そしてカルテルの残虐な手法に対する嫌悪感を背景に、着実な前進が見られる。
第三に、これらの取り組みと並行して、政権は通商政策を活用し、中共政権に対してメキシコへのフェンタニル原料の輸出停止を迫っている。ここでは「信頼しつつ検証する」という姿勢が取られ、履行状況の確認が重視されている。一方で、ボリビア、コロンビア、ベネズエラ(マドゥロ拘束以前)から麻薬を積んだ数十隻の船舶が海上で拿捕されている。
ごく最近では、数か月にわたって計画を練ってきた作戦により、ベネズエラの社会主義指導者ニコラス・マドゥロが、米国の法執行機関、情報機関、軍によって拘束された。海軍および沿岸警備隊による圧力は以前から強まり、マドゥロ政権による権威主義国家への逃亡を阻んでいた。彼の側近から決定的な情報提供があった可能性も報道されている。加えて、麻薬船や原油タンカーの押収がさらなる圧力となった。マドゥロ失脚は、他の地域の独裁政権のみならず、北京政府、イラン政権、クレムリンに対しても明確な警告を発するものとなった。
第四に、トランプは中共が「一帯一路」構想を通じてラテンアメリカで展開する港湾やインフラ事業の影響力を抑え込もうとしている。パナマ運河に対する管理権限の強化を目指すとともに、交通・通信の要衝に設置された中国企業関連の監視システムの排除にも取り組んでいる。さらに、米軍基地周辺での中国企業による土地取得を阻止し、米国の学校における宣伝活動を封じることも重要な課題とされている。
幸いなことに、アルゼンチン、チリ、エクアドル、エルサルバドル、ホンジュラス、ペルー、パラグアイなど、複数の中南米諸国で最近行われた選挙では、より保守寄りの指導者が誕生した。これらの政権は、犯罪抑制や民主的価値の擁護を通じて、地域における社会主義・共産主義政権の影響力に対抗する役割を果たし得る。
第五は、「力による平和」という原則に基づく米軍の強化である。防衛能力と攻撃能力の双方を高めることで、抑止力と影響力の投射を図る。2025年にナイジェリア、シリア、イエメンで実施された精密攻撃や、イランの核施設を標的とした「ミッドナイト・ハンマー作戦」は、脅威に対して断固として行動するトランプ氏の姿勢を象徴している。
第六に、ハードパワーとソフトパワーを慎重に使い分けることこそが、現代版「トランプ・ドクトリン」の核心であり、これはモンロー主義をより精緻な形で拡張するものである。伝統的な同盟関係を再確認し、アフリカ、アジア、ラテンアメリカで新たなパートナーシップを育むことは、西半球における自由貿易、自由、法の支配を守る上で不可欠だ。
米国は、国家建設に踏み込むことなく途上国を支援することができる。ただし、その前提は、支援を受ける側が自国の安定に責任を持ち、米国の死活的国益に資さない紛争に引き込まないことである。この原則が、マドゥロ後のベネズエラにおける権力の空白を防ぎ、国民に自由と機会を取り戻すための取り組みを導くことが理想だ。しかし、その行方はいまだ不透明である。

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