経済の失速と不安な心理が渦巻く中国社会で、スーパーや畑に「群がる」人々の姿が近年、増えている。
最近、山西省汾陽(ふんよう)市で行われた新規スーパーの開業イベントが、思わぬ「修羅場」と化した。特価で販売されたドリアンを客が次々に割ってその場で食べ始め、わずか1日で約60箱が消えたのである。残されたのは無数の殻と、途方に暮れる経営者の姿だった。
8月21日、スーパー「発到家」が用意したのは、1個9.9元(約220円)の格安ドリアンだった。だが、混雑に乗じて未会計のまま食べる客が相次ぎ、高級フルーツまでもが「ひとかじり」されて棚に捨てられる始末。店側は人員不足で制止できず、経営者は「約60箱のドリアンが食べ尽くされた」と打ち明けた。ネットでは「恥知らず」「子供が真似する」「モラル低下もいいところ!未会計で食べるなんて信じられない」といった声が相次ぎ、映像は多くの人々に衝撃を与えた。
この光景は一度きりの出来事ではない。2024年9月、河南省商丘(しょうきゅう)市のスーパーでは「倒産の噂」で群衆が殺到。会員カードが無駄になると恐れた人々が商品をその場で飲み食いし、店内は「嵐の後」のように荒れ果てた。さらに広東省潮州(ちょうしゅう)市では、路上の商品が大勢に奪われ、松葉杖の老婆まで加わる異様な光景が監視カメラに残された。

「なぜ頻繁にこんなことが起きるのか」「中国は一体どうなってしまったのか」。こうした疑問の声が後を絶たない。実際、略奪はスーパーや街中に限られない。いまや各地の畑でも起きている。
河南省南陽(なんよう)市では2023年11月、農村の穀物畑で住民が集団略奪を行い、作物を盗んだ挙句に持ち主を罵るという信じがたい光景が広がった。「あなたたちは恥知らずだ!」「恥知らずなのはお前だ!」と罵り合う姿は、道徳観念の崩壊を象徴していた。
中国政法大学出身で国際法を専攻した専門家の頼建平氏(米国在住)は、エポックタイムズの取材にこう指摘している。「窃盗事件は社会全体の問題であり、根源は共産党の理念と統治にある。共産党自身が民衆を搾取し、財産を強奪している。その『悪のお手本』を見ながら暮らす庶民が、同じことを繰り返すのは必然だ」。

現地警察も「法不責衆(ほうふせきしゅう)」を理由に見て見ぬふりをし、ときには村ぐるみで略奪者をかばい、励ます例すらある。
なお「法不責衆」とは、本来「違法でも大勢でやれば法律の手が及ばない」という意味だ。言い換えれば「皆でやれば捕まらない」という発想である。その考えが中国社会に深く染み込み、スーパーや畑を荒らす群衆心理となって噴き出している。

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