8月6日、広島市の平和記念公園で「広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式」が行われ、80年前に原子爆弾が投下された犠牲者を追悼するとともに、恒久平和を願う場となった。式典には石破茂内閣総理大臣をはじめ、多くの被爆者や遺族、市民、国外からの来賓も参列した。

石破首相は本日、式典で挨拶し、首相官邸ウェブサイトを通じて式典での挨拶文を公開した。挨拶のなかで首相は、80年前の今日、一発の原爆により十数万ともいわれる尊い命が失われ、多くの人々が筆舌に尽くしがたい苦しみに見舞われたことに深い哀悼の意を表した。

首相は「原子爆弾の犠牲となられた方々の御霊に謹んで哀悼の誠を捧げる」と述べ、今なお後遺症に苦しむ被爆者の方々にもお見舞いの言葉を寄せた。さらに、唯一の戦争被爆国として「核兵器のない世界」を目指すことが日本の使命だと強調し、国際社会に向けて核軍縮の取り組みを主導していく決意を示した。

挨拶では、来年の核拡散防止条約（NPT）運用検討会議への積極的な関与や、「ヒロシマ・アクション・プラン」に基づく具体的行動への努力についても言及。核兵器廃絶や被爆の実相の理解促進に尽力する日本原水爆被害者団体協議会が昨年ノーベル平和賞を受賞したことに敬意を表した。

被爆者の平均年齢が86歳を超え、戦争を知らない世代が増えている現状に触れ、「この耐え難い経験と記憶を決して風化させることなく、世代を超えて継承しなければならない」と訴えた。また、広島平和記念資料館へ世界各国の指導者や若者の訪問促進に取り組んでいる状況を報告した。

首相は、「核戦争のない世界、核兵器のない世界の実現と恒久平和の実現に向けて力を尽くす」と述べ、原爆犠牲者や遺族、被爆者、市民の平安を祈念した。

最後に首相が詩を読み上げ、締めくくった。その詩は歌人の正田篠枝（しょうだ・しのえ）氏によるもので、「太き骨は先生ならむ そのそばに 小さきあたまの骨 あつまれり」という一首である。これは平和記念公園内に建つ「原爆犠牲国民学校教師と子どもの碑」に実際に刻まれている。

この詩は、原爆投下で犠牲となった教師と子どもたちを悼み、無念の死を遂げた多くの犠牲者への哀悼と鎮魂の思いが込められている。首相はこの詩を「万感の思いを持ってかみしめ、追悼の辞といたします」と述べ、厳かに詩を引用した。