6月の米消費者物価指数(CPI)は、5か月ぶりに大きく上昇したが、関税が物価上昇を引き起こしているかについては、依然として判断が難しい状況だ。
アメリカ労働省労働統計局(BLS)によると、住居費指数が6月に前月比0.2%上昇し、今回のCPI上昇の主な要因となった。一方で、住居費前年比の上昇率は3.8%に低下した。
エネルギー価格もCPIを押し上げた要因の一つで、5~6月にかけて0.9%上昇した。中でもガソリン価格は1%の上昇を記録した。ただし、これは中東の地政学的リスクにより原油価格が一時的に急騰した影響とみられており、原油はその後値下がりし、紛争前の水準を下回っている。
食品価格も0.3%上昇したが、年初に急騰した卵の価格は4か月連続で下落し、6月には7%以上の大幅な下げとなった。
関税が物価に与える影響については、今回のデータでも明確な結論は出ていない。
新車と中古車の価格指数はそれぞれ0.3%、0.7%下落した。一方、関税の影響を受けやすい衣料品の価格は0.4%上昇した。サービス価格のインフレ率は、1年以上ぶりに上昇に転じ、年率換算で3.8%となった。
市場は冷静に反応 利下げの可能性は残る
金融市場の反応は限定的だった。ダウ平均株価は寄り付き前の取引でほぼ横ばい、ナスダック総合指数はプラス圏を維持した。米10年債利回りは4.42%付近で推移。ドル指数はわずかに上昇し、98.00を上回った。
ナイトライト・アセット・マネジメントの最高投資責任者、クリス・ザッカレリ氏は大紀元へのコメントで、「今回のインフレ指標は概ね予想通りであり、食品とエネルギーを除いたコア指数は、インフレが抑えられていることを示している」と述べた。
市場参加者は、今回のCPIがFRB(連邦準備制度理事会)の今月の政策決定にどう影響するか注目している。
CMEフェドウォッチによると、市場は9月の利下げを高い確率で見込んでいる。ただし、ザッカレリ氏は今後のインフレデータ次第で見通しが変わる可能性もあると指摘した。
「インフレが今の水準で抑えられ続けるなら、FRBは9月にも利下げに踏み切れるかもしれない。だが、今後の指標がそれに反する内容なら、利下げはさらに先送りされるだろう」と述べた。
注目すべきは「傾向」
7月のCPIについて、クリーブランド連銀のインフレ予測モデルでは、総合インフレ率が2.7%、コアインフレ率が3.1%になると見込まれている。
一方、膨大なリアルタイムデータに基づく民間のインフレ推計Truflationでは、インフレ率は2%未満とされている。
ベッセント財務長官は、インフレの評価において「単月の数字に過度に依存すべきではない」と強調。7月15日にブルームバーグの番組で「大事なのは数字の『傾向』だ」と語った。
同氏はまた、関税が大幅な物価上昇を引き起こすとした専門家の予測は外れたとし「そのような事態は起きていない」と指摘した。
関税の影響 これから本格化か
ソーンバーグ・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネージャー、ジョシュ・ルービン氏も「関税の影響はまだ見極めが難しい」としている。
「関税の影響が経済全体に行き渡るまでには時間がかかる。特に、小売業者や仕入れ業者が、関税やドル安によるコスト増を商品価格に転嫁し始めた時点で、影響がはっきりしてくるだろう」
トランプ大統領による大規模な関税導入に先立ち、多くの企業が急いで輸入を進め、在庫を積み増していた。これにより、当面のコスト上昇は抑えられてきたが、在庫が尽き次第、関税対象の輸入品に切り替わる。
その時、企業がコスト増を消費者に転嫁するのか、自社で吸収するのかが今後の焦点となる。
ルービン氏は「関税は、アメリカ企業と海外企業に非対称な影響を与える可能性があり、その影響が今後さらに表面化してくるだろう」と述べた。
今週の物価指標が次の手がかりに
今週は、企業が支払う価格の動きを示す生産者物価指数(PPI)と貿易物価指数がそれぞれ7月16日と17日に発表される予定だ。
市場予想では、PPIは前月比0.2%上昇、輸入物価は0.2%上昇、輸出物価は2か月連続で0.1%下落すると見込まれている。
先週、ホワイトハウスの経済諮問委員会(CEA)は報告書を発表し、「関税がインフレの主因であるとはいえない」との見解を示した。
同報告書によると、2024年12月~25年5月の間、CPIにおける物品価格は年率1.0%、FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数では0.1%の上昇にとどまっている。
「3月以降、輸入部品の価格は下落傾向にあり、物価全体はほぼ横ばい、またはわずかに上昇したにすぎない」と、報告書は結論づけている。
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