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パナマ運河港の売却 中共弾圧が李嘉誠氏へ 三つの重大な影響

2025/04/03
更新: 2025/04/03

香港の富豪、李嘉誠(りかせい)氏が港湾事業を売却し、中国共産党(中共)の弾圧が激化した。この動きは、米中対立を深め、外資撤退を加速させる可能性がある。その背景と影響を詳しく解説しよう。

李嘉誠氏の動きに対する中共の反発

3月4日、李嘉誠氏が率いるCKハチソン・ホールディングスは、同社が世界23か国に所有する43の港湾資産を総額228億ドルで、アメリカの資産運用会社ブラックロックが主導するコンソーシアムに売却する計画を発表した。この中には、パナマ運河の両端に位置するバルボア港とクリストバル港の90%の株式および運営権も含まれていた。

3月13日、15日、17日、21日、中共の影響下にある香港の「大公報」は、李嘉誠氏を厳しく批判する4本の評論記事を連続して発表し、「全ての中国人を裏切り、売り渡した」と非難した。

3月18日、ブルームバーグは、中共政府が国家市場監督管理総局や商務部に対し、この取引に関する国家安全保障上のリスクや独占禁止法違反の審査を指示したと報じた。

3月19日、「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、習近平が李嘉誠氏によるブラックロック主導のコンソーシアムへの売却について、強い怒りを示したと報じた。

習近平が、不満を抱いた主な理由は、CKハチソンが事前に中共政府に相談しなかったためである。この行動により、中共政府は、重要な交渉カードを失い、パナマ港湾問題をアメリカのトランプ大統領との交渉材料として、利用する計画が狂ったとされる。

3月27日、ブルームバーグは、中共当局が中国本土の国有企業に対し、李嘉誠氏およびその家族関連企業との新たな協力関係を一時停止するよう指示したと報じた。

3月28日、「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は、情報筋の話として、CKハチソンが4月2日に予定していたパナマ運河港湾運営権の売却契約署名を見送ることになったと伝えた。

同日、中共国家市場監督管理総局は、この取引について審査を行うと発表した。

中共による李嘉誠氏への弾圧がもたらす三つの影響

この行動は、中共にとって、以下の三つの結果をもたらす可能性がある。

1.アメリカとの直接対立

2025年1月20日に就任したトランプ米大統領は、中共がパナマ運河を支配していると指摘し、「必要であれば軍事力も辞さずにパナマ運河を『取り戻す』」と述べた。

トランプ氏がパナマ運河を重視する理由は何か。

パナマ運河は太平洋と大西洋を結ぶ重要な航路であり、1904~14年にかけてアメリカによって建設された。トランプ氏はこの運河を「アメリカ史上最も高価なプロジェクトの一つ」とし、多額の資金が投入され、建設中には3万8千人のアメリカ人労働者が命を落としたと述べている。

1977年、アメリカとパナマは「パナマ運河永久中立および運営条約」を締結し、一時的な共同管理を経て1999年に正式にパナマ政府に引き渡された。

この運河は、アメリカの経済と国家安全保障において非常に重要な役割を果たし、大西洋から太平洋への商船や軍艦の迅速な移動に欠かせない。アメリカはこの運河の最大の利用国であり、通過する貨物の70%以上がアメリカの港との間で取引されている。

1997年、香港の李嘉誠氏が率いるCKハチソンが、パナマ運河の両端港湾の運営権を取得し、2021年にはさらに25年間の契約を更新した。

2017年、パナマは台湾との国交を断絶し、中共との国交を樹立した。中国・パナマ国交樹立から8年で、40以上の中共企業がパナマのインフラや物流などの分野に進出していた。

トランプ氏が「中共がパナマ運河を支配している」と主張した際、多くの人々はその言葉を軽視した。しかし、中共による李嘉誠氏への弾圧が、この指摘の正当性を裏付けることになった。

李嘉誠氏は民間企業家であり、その事業は、個人または家族によるものである。CKハチソンの登録地は、香港や中国本土ではなく、イギリス領ケイマン諸島である。さらに、李嘉誠氏自身は中国籍ではなくカナダ籍であり、彼のパナマ両端港湾の売却は、中共とは無関係であった。しかし、中共は、李嘉誠氏が中国香港に居住し、中国本土で事業を展開していることを理由に、彼やその家族の事業を自らの利益と結び付け、従属を強要したのだ。

外国籍企業家である李嘉誠氏に対し、中共が意向に従うよう強要する行為は、明らかに横暴であり、威圧的かつ脅迫的である。

中米間で戦争が勃発すれば、中共は李嘉誠氏に対し、パナマ運河の両端の港を閉鎖するよう命じる可能性がある。これはアメリカの経済と安全保障にとって重大な脅威となる。

中共による李嘉誠氏への圧力は、トランプが指摘した「中共がパナマ運河を支配している」という見解が正しいことを示している。「パナマ運河の取り戻し」がアメリカの経済と安全保障にとって重要な課題であることの証左である。

李嘉誠氏はすでにパナマの両端の港をブラックロック社に譲渡する準備を進めていたが、中共の介入は、中米の直接対立を引き起こす危険な状況を生み出している。

2.民営企業を恐怖で逃げさせる

1978年に中共が改革開放を実施して以来、民営経済は急速に成長し、その役割は「56789」の特徴で要約されることが多い。すなわち、民営経済は中国経済の50%以上の税収、60%以上のGDP、70%以上の技術革新、80%以上の都市雇用、90%以上の市場主体数(市場に関わる経済主体の総数)を支えている。

しかし、2017年の中共第十九回全国代表大会以降、党は「党政軍学民、東西南北中、党はすべてを指導する」と強調し、国有企業優先の政策を推し進めている。その結果、資源配分における党の権力の影響力が一層強まっている。

一方、中国の民間企業はしばしば行き詰まりを見せていた。

「2019年秋の企業シンポジウム」で、全国工商連農産商会の元代表である蔡曉鵬氏は、「民営企業は良い状態で過ごしていると思うか? 私はそうは思わない。私の知る2千人以上の民営企業家の中で、良い状態だと言う者は一人もいない」と、述べた。

2020年8月、中共は不動産企業の債務リスクに対し「三つのレッドライン」の監督を求め、多くの企業が財務危機に陥った。その結果、恒大、碧桂園、緑地など30社以上が破綻した。

2020年10月24日、アリババの創設者である馬雲氏が、上海金融サミットで中共の金融監督を批判し、当局の怒りを買った。この影響で、アリババ傘下のアントグループによる340億ドルのIPOは中止され、2021年4月10日には、アリババに182.28億元の反トラスト法違反の罰金を科した。

2021年7月4日、中共は「滴滴出行」アプリの削除を命じた。高圧的な状況下で、滴滴は2022年6月10日にニューヨーク証券取引所から上場廃止を余儀なくされ、わずか1年で3800億元の市場価値を失った。

2021年、中共の突然のテクノロジー業界への圧力により、中国の著名な民営企業は、数兆ドルの市場価値を失い、また、同年7月24日の「双減」政策禁止令によって、活況を呈していた教育業界も数百億ドルの市場価値を瞬時に失った。

近年、一部の民営企業家が中共により財産を没収され、刑務所に送られる事例が見られ、河北大午グループの創設者である孫大午はその代表例である。

2023年、中国経済は株式市場、為替市場、不動産市場、債券市場の四つの市場すべてで、同時に危機的状況に陥った。2024年、中共は、様々な経済刺激策を試みたが、効果はほとんどなかった。

2025年には厳しい経済状況に直面し、中共は再び民営企業家に助けを求めざるを得なくなった。2月17日に民営企業家座談会を開催し、3月4日には新華社が習近平を称賛する長文「私は一貫して民営企業を支持している」を発表した。

そのような状況下で、中共が民営企業家である李嘉誠氏に対し、強硬な弾圧を行ったというニュースが突如として報じられたのだ。

中共の意図は明白である。共産党の統治下では、重要な取引はすべて報告し、許可を得る必要がある。許可が下りれば取引は成立するが、許可が下りなければ失敗する可能性がある。また、取引を強行すれば、中共からの制裁が下される可能性もある。

要するに、「民営企業家は中共の指示に従えば円満に解決するが、従わなければ良い結果にはならない」ということである。

このような中共の「権力経済」に対する認識から、李嘉誠氏は、習近平政権の下で徐々に中国から資金を撤退させる措置を講じた。現在、李嘉誠氏は、収入の80%以上をイギリス、カナダ、オーストラリアなどの海外市場から得ていた。

中共による李嘉誠氏への弾圧は、中国の民営企業家たちの信頼を失わせ、彼らがあらゆる手段で逃げ出し、災難を避けようとする結果につながった。

3.外資の中国離れを加速させる

李嘉誠氏が今回の港湾取引で提携したのは、アメリカのブラックロックグループである。香港の評論家・陶傑氏によると、ブラックロックは、中国企業との深い協力関係を築いており、具体的な例は以下の通りである。

・ブラックロックは、中国のテンセント(騰訊)の最大の米株株主である。

・ブラックロックは、アリババ(阿里巴巴)の最大の米株株主である。

・ブラックロックは、中国建設銀行の最大の外資株主である。

・ブラックロックは、中国平安保険の最大の米株株主である。

・ブラックロックは、中国のシャオミ(小米)の最大の米株株主である。

・ブラックロックは、ネットイース(網易)の第一の米株株主である。

・ブラックロックは、上海における第一の米資本不動産業者である。

・ブラックロックは、美団(メイトゥアン)の最大の外資株主である。

ブラックロックは、かつて中共の「古くからの友人」として知られていた。2021年、中共が「極端なゼロコロナ政策」を実施していた際も、同社は中国への投資を拡大していた。

しかし、中国のビジネス環境が悪化する中、2024年にはブラックロックが中国市場からの撤退を示唆し始めた。

2024年1月、ブルームバーグの報道によると、ブラックロックは、2018年に上海の黄金地帯で購入した商業ビルを、購入価格の70%で売却する意向を示した。

2023年9月、ブラックロックのアジア太平洋地域最高投資責任者ハミッシュ・マクドナルド氏は、「現在、中国は当社の投資ポートフォリオに含まれていない」と述べた。

中国人民銀行が多くの措置を講じても、世界の投資家の信頼を回復するには至らず、オフショア市場や国内市場でも、中国物件には買い手が、ほとんど付かない状況である。

そのため、ブラックロックは、まずオーストラリア、日本、シンガポール市場を検討し、顧客はアジア太平洋市場に注目しつつも、グローバルな投資ポートフォリオの多様化を望み、追加リスクを避けたいと考えたのだ。

2024年には、外資が中国から1680億ドルの純流出を記録し、これは過去最高である。また、中国への外国直接投資額は、わずか45億ドルにとどまり、1992年以来の最低水準であった。このように外資が大量に中国から流出し、外国企業による対中投資が急減している中で、中共は、外国企業への投資促進策を模索するのに留まった。

2025年3月28日、習近平国家主席は、北京で数十社の外資系企業の代表と会談し、習は演説で、「中国は、外商にとって理想的で、安全かつ有望な投資先」

「多くの外資系企業は疑念を払拭し、自信を持って中国で発展し、中国の発展機会を共有することを望んでいる」と、述べた。

同日、中国国家市場監督管理総局は、李嘉誠氏とブラックロック間の取引について審査を行うと発表した。

中共が、李嘉誠氏とブラックロック間の取引に介入し、この成立間近な売買を妨害しようとしていることは、ブラックロックや同様の外資企業が中国から撤退する動きを加速させ、外資が他国や他の地域へ流れる結果を当然招くだろう。

結論として、中共が李嘉誠氏に圧力をかけるのは必然であり、「党がすべてを指導する」という方針の具体的な表れである。しかし、この方針は、毛沢東時代に中国経済を崩壊寸前に追い込んだ原因でもあった。

1978年以降、中共が改革開放政策を実施した際、鄧小平は「党が管轄すべきでないことまで管理していた」との歴史的教訓を語った。鄧が中共の厳しい経済統制を少し緩めただけで、中国経済には活力が戻った。

しかし、今日の中共は再び「党がすべてを指導する」という道に戻り、本来党が管理すべきでない事柄まで統括しようとしている。

市場経済は、市場が資源配分において決定的な役割を果たす経済体制である。しかし、中共の「党がすべてを指導する」は、実質的には権力が資源配分において、決定的な役割を果たす「権力経済」に他ならない。

このような客観的な規律に反する権力経済は、かつてソ連や東欧諸国の共産党政権崩壊の重要な原因であった。

今日、中共は、客観的な規律に逆行する権力経済路線を再び歩み始めた。この動きは、李嘉誠氏への圧力やアメリカとの直接対立を引き起こし、結果的に中共自身の崩壊が加速するという事だ。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
王友群