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トランプの相互関税 世界経済の再編とその影響

2025/04/04
更新: 2025/04/04

4月2日、アメリカは全面的な相互関税政策を開始した。各国製品への関税引き上げが、世界経済に波紋を広げた。株価の下落や金価格の上昇など、市場は混乱する中で、アメリカの政策意図と各国の対応、そして世界経済の未来を徹底分析しよう。

トランプ氏が実施する相互関税 今後は中共に対してさらに厳しくなる

ベテランジャーナリストの郭君氏は「菁英論壇」で、今回のアメリカの全面的な相互関税は、単なる措置ではなく、単純に関税を相互に課すものではないと指摘する。むしろ、関税、国家補助金、外国製品の国内進入に対するリスト管理など、一連の措置に対する総合的な反応であるという。

例えば、中国がアメリカから輸入する自動車の関税は15%であるが、外国自動車の販売には、多くの非関税障壁が存在する。指定販売価格や特許など、すべて政府の特別な承認が必要なのであり、さらに、大部分の合弁企業は、政府と密接な関係を持つ企業であるため、中国でアメリカ車を購入すると、その価格は、アメリカでの販売価格の何倍にもなると言う。これが非関税障壁の実態であった。

かつて、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した際、非関税障壁の撤廃に関する条項を明記した。しかし、中国共産党(中共)は、20年にわたりこの約束を果たしてこなかった。これが2018年以降の米中貿易戦争の根本的な原因の一つであった。今後、中国に対する貿易措置は、単なる相互関税を超え、より厳格なものになる。中国が同じ関税率を求めることは、もはや現実的な目標とは言えない。

郭君氏は、「1980年代にトランプ氏がインタビューで関税引き上げを訴えていたことを覚えている。彼は、全世界がアメリカ人の利益を享受していると考えていた。なぜなら、アメリカの消費者が多くの国の経済を支えているからだ」と、述べた。

市場経済の循環は、投資、生産、消費から成り立っており、各段階が不可欠である。しかし、アメリカの消費から生まれた利益は、国内に再投資されず、外国に流れ、他国の投資と再生産に変わってしまう。

これにより、アメリカ経済は断絶してしまった。しかし、第二次世界大戦後、アメリカの経済規模は、非常に大きく、世界のGDPの約40%を占めていたため、小さな損失は目立たなかった。現在でも、アメリカのGDPは29兆ドルで、輸出入は約6兆ドル、国際貿易はアメリカ経済の20%を超える程度に留まり、この割合は依然として世界で最も低いのだ。

しかし、もう一つの重要な数字は、貿易赤字であった。貿易赤字は、アメリカの消費者の支出が、国内の生産力に転換されず、他国の生産力に流れていたことを示した。

2024年、アメリカの貿易赤字は約1兆ドルに達し、GDPの3.2%を占めた。これは歴史的な最高値ではないものの、依然として高水準である、問題は、アメリカが第二次世界大戦後の姿を失いつつある点にあった。2024年のアメリカの世界GDPに占める割合は約26%であり、2011年から割合がかなり回復している。

しかし、この回復は、主に日本とヨーロッパの成長停滞によるものである。アメリカが国際的な地位を維持するためには、軍事力だけでなく、経済の絶対的な優位性が求められるのだ。特に製造業の強化が不可欠であり、そうでなければ将来的な問題は、深刻化する可能性が高いという言う事だ。

郭君氏は、左派にはグローバリズムの理想があるが、右派にはアメリカ優先の立場を取ることであり、この国の優位性を維持する必要があるため、対外貿易のバランスが特に重要であると指摘した。

関税戦争は前例がなく アメリカに最も影響を与える

台湾のマクロ経済学者、呉嘉隆氏は「菁英論壇」で、アメリカが関税を引き上げることで、財政収入に大きな影響を与えると述べた。

関税の基本的な経済機能は、二つの次元に分かれ、それぞれ二つの目標と効果がある。第一の次元は、貿易赤字の削減と重要産業の保護を目的とした従来の経済観点である。これは保護主義の手段であり、伝統的な経済理論に基づいていた。

第二の次元では、関税の新たな経済的効果として、財政収入の増加と外国の製造業をアメリカに誘致し、工場を設立することで、関税を回避させることを認識した。

呉嘉隆氏は、トランプ氏が強調しているのはこの二つの機能であり、これは経済学の教科書には記載していないと指摘する。教科書では、関税が財政収入を得るためのものであり、関税を引き上げる目的が他国の投資を促すことだとは述べられていない。したがって、関税は本来経済的な手段であり、政治的な手段ではない。

さらに、第三の次元として非経済的目標を追加した。これは他の政治的な議題を指す。現在判明していることの一つは、EUに国防予算を増やさせることであり、つまりNATO加盟国に国防予算を増やさせることである。

国防予算が増加すれば、関税は若干減少する。国防予算と関税を結びつけるのである。もう一つは、カナダやメキシコの不法移民や麻薬に関する問題である。国境管理が円滑に進めば、関税は低下する可能性があり、このように、関税と他の問題を結びつけた新しい方法論なのである。

さらに、ベネズエラのエネルギー製品に関しては、これは二次または次級関税と呼ばれる。ベネズエラとアメリカの直接貿易は少ないが、中国がベネズエラからエネルギー製品を購入する際には関税が課される。また、イランが核兵器協定を受け入れなければ関税を課す可能性があり、ロシアがウクライナ戦争を終結しなければ同様の措置が取られると言う。関税を他の問題と結びつけることは、経済的な影響を超えるものであった。

議論には三つの次元が存在し、最初の二つは経済に関連するが、三番目は、トランプ氏の独自の発想である。この結果、関税という手段は、アメリカにとって有益な効果をもたらすことになり、最も影響を受けるのはアメリカ自身であった。

次に影響が大きいのはカナダ、メキシコ、中国の三国である。これらの国々は、アメリカの貿易赤字に対して最も大きな影響を与える。第四の国としてベトナムが挙げることもあるが、多くの中国企業がベトナム経由で輸出を行っているためであった。

呉嘉隆氏は、かつて関税が政治的観点から考えられ、関税を課すことが報復を招くという見方があったと述べた。その結果、世界の貿易問題は深刻化し、貿易は急激に縮小し、経済大恐慌を引き起こした。

この事態を受け、第二次世界大戦後に関税貿易総協定(GATT)が設立され、今日のWTOへと発展した。現在、アメリカは、すべての国に対して関税を課し、相互関税を追加するという前例のない状況にある。したがって、現状の分析は「戦いながら進む」しかないと言わざる負えない。

呉嘉隆氏は、関税の影響が台湾にとってそれほど大きくなく、むしろ好影響をもたらす可能性があると指摘する。ただし、これは台湾に特化した場合に限る。台湾は半導体産業のみならず、多くの伝統産業もTSMCとともにアメリカに投資する必要があり、かつて台湾の余剰資金は中国本土に流れていたが、現在は、逆にアメリカへの大規模投資へと向かった。

台湾とアメリカの経済的結びつきは深化し、相互の交流も拡大するだろう。また、台湾は、中国本土への依存を低減し、多くのサプライチェーンが移転し、より多くの資本が直接アメリカの投資市場へと向かうことになった。これは非常に良い傾向であり、その投資規模は相当なものになると考えられている。

呉嘉隆氏は、中国が受ける影響は極めて深刻であり、関税の引き上げが特に中国に焦点を当てているため、他国とは大きく異なると述べた。

この結果、中国の関税は極めて高い水準となり、元々の平均20%から2月と3月にそれぞれ10%ずつ引き上げられ、現在は40%に達している。

さらに、二次関税が加わることで、ベネズエラからの石油購入時には合計60%に達し、ロシアやイランからの購入に対しても同様に高い関税が課される。

この状況が続けば、中国の関税は、最高水準に達し、最も影響を受ける国となるだろう。

世界経済は大きな変革を迎える

呉嘉隆氏は「菁英論壇」で、3月上旬にアメリカが2月の消費者物価指数(CPI)を発表した際、トランプ氏がすでに就任しており、その結果が3~2.8%に低下したと指摘した。

トランプ氏は直ちに関税を引き上げたが、インフレは発生しなかった。

一期目の関税引き上げ時には、人民元が1ドル6.4元から7.2元に下落し、約12%の価値が減少した。これは関税の影響に対処するための動きであった。

現在、各国がドルに対して通貨の価値を下げ、関税の影響を緩和しようとしているため、ドル指数は上昇傾向にある。最近、ドル指数は103から104へとゆっくり上昇し始めていた。

したがって、関税の影響によりグローバリゼーションは変質し、事実上その終焉を迎えたと言える。世界貿易機関(WTO)も実質的にその役割を終えた。

現在、アメリカは国際経済秩序を再構築し、貿易ルールの見直しを進め、この結果、アメリカは産業ごと、国ごとの交渉の必要性を減らすことになる。

呉嘉隆氏は、アメリカの関税引き上げが、世界経済をスタグフレーションに陥れるかどうかは、他国の対応に左右されると指摘した。

ヨーロッパ、日本、韓国、台湾、インド、ロシアなど、各国が対応策を模索しており、前例のない状況が続き、報復的な関税を課せば、さらなる報復を招く可能性があり、かつての大恐慌を再現しかねない。世界経済の急激な悪化も避けられないだろう。

この影響により、3月全体でアメリカ株と台湾株が下落し、各国の株式市場も軒並み下落した。3月初めから月末にかけて、関税の影響や市場の反応への不安が高まり、売りが加速した。

このような状況で、最も懸念すべきはインフレではない。たとえ最終的に輸出価格の調整が必要になったとしても、それは短期的な対応に過ぎない。ただし、関税が恒常的に引き上げられる場合は別である。

その場合、アメリカは他国に対する関税を15〜20%に設定する可能性がある。特に中国に対する関税は今後も引き上げられる可能性が高い。中国がこの状況を乗り越えたとしても、さらなる引き上げが続き、中国が耐えられなくなるまで続くだろう。その影響は、中国経済に深刻な打撃を与えることになる。

次に問題となるのは、世界経済への影響で。中国経済が収縮すれば、デフレーションが発生し、他国へデフレ圧力が波及して、その結果、世界経済の減速は、一層深刻なものとなるだろう。

呉嘉隆氏は、アメリカへの投資が確実に増加し、それに伴いアメリカ経済が改善すると述べている。

ゴールドグリーンカードについては、初期段階で100万枚が販売され、長期的には700万人に販売される可能性がある。一人あたり500万ドルとすると、総額は35兆ドルに達する計算になると言う。

現在、アメリカの国債残高は36兆ドルに上るが、ゴールドグリーンカードの発行により国債の圧力が緩和される可能性が高いということも見逃せない。

この関税政策の背後には、大規模な財政計画が存在する。関税は単なる貿易問題ではなく、財政問題を解決する手段の一つでもある。

アメリカのベッセント財務長官は、金融危機の予防について言及している。金融危機は、債券市場の混乱から生じるため、連邦政府の赤字や債務負担の軽減が必要となる。これこそが関税政策の背景にある目的であった。アメリカは、財政危機の解決を急ぎ、中国との対立に備え、自国の負担を軽減する必要があったのだ。

郭君氏は、現代の世界経済が実体経済と金融経済の二つに分かれていると指摘する。金融経済の規模は、実体経済の2〜3倍に達し、アメリカは最も発展した金融経済を有する国である。2024年には、アメリカの最大の輸出品は金融および金融サービスとなる見込みであり、それに伴い貧富の差と金融市場の不安定性という二つの課題が浮上するだろう。

戦争や重大な問題が発生すれば、金融市場は急落する可能性もあり、この現象は、かつてのイギリスにも見られたものであった。そのため、アメリカは製造業を復活させ、実体経済の優位性を取り戻そうとしている。国内の製造業を支援し、実体経済の強化を図ることが急務であり、これこそが、トランプ氏が関税を引き上げる理由であった。

郭君氏は、世界が今後大きな変化を迎えると予測する。第二次世界大戦後に確立した国際秩序は、新たな段階へと移行し、従来の手法が通用しなくなるだろう。しかし、具体的にどのように発展し、どのような結末を迎えるのかは誰にも分からない。この不確実性が世界経済に与える影響は計り知れないものだ。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。