経済産業省は、出生時の性と性自認が一致しないトランスジェンダーの50代の職員に対し、勤務先のフロアから2階以上離れた女性トイレを使わせていた制限を撤廃したことが分かった。
経産省は8日、職員に対し庁舎内にある全ての女性トイレの使用を認めると伝えた。昨年7月に最高裁が出した同省の対応を違法とした判決を受けたもの。
事の発端は、経済産業省に勤務するトランスジェンダーの職員が、2009年に職場でも女性として認識されることを希望し、女性用トイレの使用を求めるも、同省が職場から2階以上離れた女性用トイレのみを使用するよう制限していたことだった。
この対応に不満を持った職員は、人事院に処遇の改善を求めたが、認可されなかったため、2015年に国を相手取り提訴。
昨年7月11日、最高裁判所は、一審判決を覆し経産省の対応を適法とした東京高裁の判決を破棄し、同省の判断を違法とした。原告が女性として生活し、職場でも女性の服装で勤務していたこと、原告が使用を認められたトイレを利用しても、他の職員との間でトラブルが生じていなかったこと、経産省が原告のトイレ使用に関する処遇を見直すための調査や検討を行っていなかったことなどを理由に、東京高裁の判決を覆した。
職員は生物学的には男性だが、性同一性障害の診断を受け、2008年頃から女性として生活している。
武藤経産相は12日の記者会見で、「速やかに当該職員本人と面談を行い、トイレの制限を解除する旨を伝達している」と明かした。
経産省では、職員や来訪者の多様なニーズに対応するため、車椅子利用者や高齢者、乳幼児連れの方、性的マイノリティの方々などユニバーサルトイレを庁舎内の各フロアに設置している。
経産省のトイレ使用許可、懸念点残す
経産省で、ジェンダー女性が女子トイレを利用できるようになったが、懸念点が残る。
ジェンダー女性が女子トイレを利用する際、他の女性職員が不安を感じるケースがある点だ。ジェンダー女性は生物学的に男であるため、同性であることで安心感を得ていたトイレ利用のプライバシーが保たれるかどうかを心配する声もある。
トイレの多様性をめぐっては、昨年4月に東京・新宿の高層複合施設「東急歌舞伎町タワー」で性別に関係なく利用できる「ジェンダーレストイレ」が設置されたことが物議をかもした。
東急は、警備員による巡回、防犯カメラによってトイレ共用部を常時監視、SOSボタンの設置などの防犯対策を打ったが、4月の開業直後から「安心して使えない」「性犯罪の温床になる」などと抗議が殺到。SNS上でも否定的な意見や懸念の声が続出した。
わずか4カ月で失敗に終わり、昨年8月にジェンダーレストイレを廃止し、男女別のトイレへ改修した。
暫定的な対応として、女性用エリアにパーティションを設置するなど、安全性と利用者の安心を重視した変更が行われ、現在は男女別のトイレとして運用されている。
歌舞伎の共用トイレの例以外にも、昨年3月に東京都渋谷区幡ケ谷で新たに建て替えられた公衆トイレに女性用トイレが設置されていなかったことが波紋を呼び、SNS上で性犯罪・被害を危惧する声や女性差別・蔑視を訴える声が多数挙がっていた。
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