中国経済 市場のセンチメント(人々が抱いている感情的な評価や態度)が……

分析:中国経済 刺激策の持続は難航か 構造改革が不可欠と専門家が指摘

2024/10/01
更新: 2024/10/01

中国経済は、経済刺激策により短期的な回復を示すも、長期的な持続性には疑問が残る。専門家は、消費と投資のバランスを見直し、構造改革を実行することが不可欠であると指摘する。

中国経済の成長原動力が徐々に失われつつあり、中国共産党は最近、一連の経済刺激策を発表し、中国株は大幅に上昇した。しかし、9月に発表された中国の製造業PMI(Purchasing Manager’s Index:購買担当者景気指数とは、企業の購買担当者らの景況感を集計した景気指標)は、需要の収縮が顕著であることを示している。専門家は、この刺激策の波は持続が難しく、中国経済を支えるためには消費と投資の構造改革が必要であると指摘するが、中国共産党の指導者がそれを簡単に手放すことはないだろう。

先週、中国共産党政府は経済を刺激するため、銀行の準備率の引き下げ、利下げ、量的緩和という三つの政策を同時に発表した。さらに、中国共産党の政治局会議では、まだ具体的な規模が明らかになっていない「財政」措置を導入することも約束された。

先週の政治局会議では、中国経済が多くの「新しい問題」に直面していることが認められ、新しい財政政策を導入して経済成長を刺激することが確認された。会議では、不動産業の持続的な下落を抑制し、市場の「安定を取り戻す」目標を達成することも強調された。

会議の当日、ロイターは独自の報道で、中国の財政部が2兆元の特別国債を発行する計画を明らかにした。このうち1兆元は、既存の消費財や大型商用機械の更新を支援し、二人以上の子供を持つ家庭には、子供一人につき月800元の補助を提供する予定である。

株価は急上昇、製造業のデータは弱い

この政策の後押しにより、中国株式市場は珍しい回復を示した。しかし、最近発表された他のデータからは、中国経済の持続的な弱さが見て取れる。

9月30日に政府が発表した9月の製造業PMIは49.8で、需要の顕著な収縮を示している。

また、国家統計局が9月27日に発表したデータによれば、8月における一定規模以上の製造業の利益は前年比で17.8%減少し、今年最大の落ち込みを記録し、連続4か月の上昇トレンドを逆転させた。

9月30日、中国株式市場の上海総合指数は8.1%上昇して3300ポイントに達し、深セン成分指数は10%以上上昇し、1万ポイントの大台を突破した。上海および深センの市場全体の取引量は前週金曜日から約80%増加し、約2.59兆元に達した。

一方、網易財経によると、9月22日から9月28日の間に、146社のA株上場企業が合計280件の株式売却公告を発表し、一部の上場企業の株主は株価が急騰している時期に株式を売却したとのことである。

「ウォール・ストリート・ジャーナル」の記事では、中国の家庭は、アメリカ人に比べて株式市場への投資が少なく、不動産市場や貯蓄への投資を好むと指摘している。このような状況下で、政府が株式市場を押し上げる政策を実施すると、市場のセンチメント(人々が抱いている感情的な評価や態度)を反映する株式市場の情報価値がさらに低下する可能性がある。

刺激策は短期的には効果があるものの、長期的な展望は変わらず

ロイターの報道によれば、中国共産党政府が大規模な財政政策を推進し消費を刺激することで、今年の中国の経済成長率が約5%に回復する可能性があるとされている。しかし、この政策が、長期的な展望を変えることはほとんどないと考えられている。

現在の中国の社会経済政策の枠組みは、消費を支えるよりも、投資を支援するように設計されている。

中国は企業に対して25%の税率を課しており、これはインドの30%やアメリカの37%よりも低い。しかし、中国は世界で最も個人所得税率が高い国の一つであり、最高税率は45%に達している。

中国の戦略的産業に属する企業は、しばしば中央政府や地方政府から税金の減免やその他の奨励措置を受けている。これらの戦略的産業、すなわち中国共産党が「新しい生産力」と呼ぶ分野、例えば電気自動車(EV)、クリーンエネルギー、ロボット技術などは、国家の安全に不可欠な技術進歩の一環と見なされている。

記事では、多くの経済学者が、中国の1980年代以降採用してきた成長モデル(投資主導型経済モデル)が、不動産、基礎インフラ、工業投資に過度に依存し、消費者の利益を犠牲にしていると指摘している。

経済学者たちは、この成長モデルが、基礎インフラと製造業の過剰能力を生み出し、世界金融危機以来、投資収益が減少する中で、急激な債務の増加と持続不可能な状況を引き起こしていると警告している。

野村証券の中国首席経済学者である陸挺氏は、中国の不動産市場の現状を分析し、「完成していない住宅よりも、売れたが未完成の住宅の方が20倍も多い」と述べ、政府は「完成保証」を優先すべきであると提案している。

カーネギー中国センターのマイケル・ペティス氏は、「中央政府は、おそらくさらに数年間は、財政移転を支援できるだろう」とも語っている。

「しかし、北京が成長モデルを変えなければ、不均衡はさらに悪化し、その結果、中国は将来、現在と同じ問題に直面することになるであろう。そして、それを管理するための健全な中央政府の資産負債表は存在しない」という。

中国経済は構造改革が必要、習近平は容易に手放さない

「ウォール・ストリート・ジャーナル」の記事によれば、中国は医療保障制度の強化など、大規模な経済改革が必要であり、それによって経済の主導権を消費に移すことができるとされている。

記事によると、多くの経済学者は、消費が中国の投資密集型経済においてより重要な役割を果たすようになれば、持続可能な成長へと導かれると考えている。しかし、そのためには大規模な経済改革が必要である。具体的には、医療保障や社会保障の役割を拡大することが挙げられる。

しかし、習近平が「共同富裕」のために中止した改革計画を再開することは考えにくい。「共同富裕」計画を進める中で、習近平の最も顕著な行動は、民間企業や裕福なエリートに対する圧力である。

さらに、習近平は、西側式の「福祉主義」が自らの技術強国という目標と矛盾していると考えている可能性があるという。

楊旭
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