「ひと山いくら?」 進む森林のデジタルデータ化 = 第4回次世代森林産業展レポート

2024/09/26
更新: 2024/09/26

林野庁のウェブサイト情報によると、日本は国土の約7割が森林に覆われている。豊かな森林資源は世界有数であり、有効活用のための法整備も進められ、今後の発展が期待されている。

「山勘(ヤマカン)」という言葉の語源が「山を直観に頼って見積もる」ことという説があるように、山林の分野は、従来、アナログ的なイメージが強い。しかし、IT・デジタル技術の発展がその現状を変えようとしている。

今月18日から20日まで「第4回 次世代森林産業展」が東京ビッグサイトで開催された(産経新聞社主催)。日本の山野を測定しデジタル解析するサービスを展開する2社のブースを大紀元記者が訪ね、話を聞いた。

「山勘」をITで実現 ヤマハ発動機

ヤマハ発動機株式会社(静岡県磐田市)は、スマート林業の支援サービスとして無人ヘリコプターによるレーザ計測を行い、高精細な森林情報を取得する森林計測サービスを行っている。サービス名は、「RINTO(りんと)」。森林の持続的な維持・管理に貢献するサービスだ。

農業分野における豊富な実績を誇るヤマハ発動機の産業用無人ヘリコプターに、業界最高水準の最新鋭LiDARを搭載。LiDAR(ライダー)とは、「Light Detection and Ranging(光検出と測距)」の略称で、離れた場所にある物体の形状や距離をレーザー光を使って測定するセンサー技術だ。

無人ヘリの機動性・飛行制御技術と最新計測機器のマッチングにより、広範囲の森林に対して、効率的かつ精度の高い計測を実現した。

対象森林の上空を、長時間、安定的に飛行し計測を行い、地形に追従しながら、低空、低速で飛行し、広角にレーザを照射することによって、森林内部まで数多くのレーザを到達させるヤマハ発動機独自の計測技術を確立したという。これにより、従来手法では困難であった、上空からの計測だけで、幹や地表面など、森林内部まで高密度の点群データを獲得し、森林に立ち入ることなく、上空からの計測で森林内部の3次元形状をスキャンして3次元デジタルデータ化を実現する

獲得した点群データを解析し、対象森林全域で幹を識別。位置情報、樹高、幹直径、材積、樹種など、立木1本ごとに定量データ化する。データは、実測値に匹敵する高い精度を誇るという。

「ひと山いくら?」を簡単に マプリィ

株式会社マプリィ(兵庫県丹波市)は、「森林資源の見える化」を実現するためのきめの細かい林業ICTサービスを提供する。

作業道計測、外周測量、プロット調査地の設置、主伐、皆伐等の毎木調査や山買いの検討、危険箇所の把握、高精度な座標取得など、森林管理の様々な課題を解決するソリューションを提供する。

サービスは、アプリケーション、ハードウェア、プラットフォーム、点群解析の4つのカテゴリーに分類されており、それぞれに製品が展開されている。

同社ソリューションサービスの特徴は手軽に始められることだといい、スマートフォンや簡単な計測器を使って計測するだけだ。女性でも背負える計測器を使って森林の中を歩くだけで半径40mが計測できる軽量(2.5kg)なものから、車載型、ドローン型、森林内を走行する電動クローラー型までそろっている。

計測した樹木等のデータは解析され、「一山いくら」といった情報を簡単に算出できる。現在、日本の山の30%は「捨て山」と言われる状態だという。捨てられていた森林が再び活用され、良い循環が生まれるための便利な現状把握のためのツールになることを同社は願っているという。

エポックタイムズ記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。