三菱商事は4月3日、最大1兆円を上限とする自社株買いを実施すると発表した。この計画では、発行済み株式総数(自己株式を除く)の約17%に相当する6億8900万株を取得する予定で、取得期間は2025年4月4日から2026年3月31日までとなる。取得した全株式は2026年4月30日に消却される見通しだ。
今回の自社株買いは、資本効率の向上と株主還元の強化を目的としている。同社はこれに加え、2026年3月期の年間配当を1株あたり110円に増額すると発表した。これは前年度の100円から10円の増配となる。さらに、同社は28年3月期までの中期経営計画も公表し、連結純利益を現在の7千億円から1兆2千億円へ引き上げる目標を掲げている。この目標達成に向けて、過去最大規模となる4兆円以上の投資枠を設定し、天然ガスやバイオマス資源など成長分野への積極的な資金投入を計画している。
発表後、三菱商事の株価は大きく反応した。午後1時時点で一時前日比4%(96円50銭)高の2711円50銭を記録し、その後2660円で取引を終えた。これは日経平均株価が3%下落する中で逆行高となった形だ。市場では、この自社株買いと増配が好感されており、投資家からの支持が集まっている。
三菱商事は自己資本利益率(ROE)の向上にも取り組んでおり、28年3月期には12%以上を目指すとしている。同社のROEは24年3月期が11.3%と大手商社5社中4位であり、25年3月期も10.4%に低下する見通しだった。この課題克服に向けた取り組みとして今回の施策が位置づけられている。同日行われた記者会見で、中西勝也社長は「チャレンジングな目標だが達成可能性がある」と述べた。
三菱商事によるこの大規模な自社株買いと増配施策は、企業価値向上と株主への利益還元という観点から注目されており、市場でも今後の動向が期待されている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。