中国のロボットカーはアメリカ人をスパイしているのか?

2024/07/18
更新: 2024/07/18

フォーチュン誌が発表した新しい調査によると、中国の自動運転車(いわゆる「ロボットカー」)は2017年以降カリフォルニア州で180万マイル(約290万キロメートル)走行しており、テキサス州とアリゾナ州でも試験走行が承認されている。

これらの車両にはカメラ、マイク、GPS、LIDARレーザー、RADAR、およびAIセンサーが搭載されている。ロボタクシーなどの自動運転アプリケーションで、道路の地形や運転状況をナビゲートし記録できる。

しかし、他にどんなセンサーが搭載されているか、何を記録しているか、誰がアクセスできるかは誰にもわからない。そして、新たに出現する技術が軍事や情報収集のための二重用途に使われる可能性についても誰にもわからない。

データは中国に送られる可能性が高い。これは米国人のプライバシー権を侵害する。中国の法律によると、中国共産党(中共)は中国から逃亡した反体制派のWi-Fiパスワード、顔認識、ナンバープレート追跡など、データに完全にアクセスできる。スパイ活動の観点からロボットカーが特に危いのは、米軍基地や機密情報を持つ企業の近くなど、どこにでも運転して行くことができ、記録、データを盗むことができるからだ。

アップルの元従業員3名を含む米国のロボットカー事業に携わる中国人が、自動運転のデータを盗んだ容疑で起訴されている。うち1名は有罪判決を受けたが、刑期はわずか4か月だった。これでは、何十億ドルもの価値があるデータを盗む泥棒を止めることはできないだろう。このことは、米国の技術とデータを踏み台にして中国企業が米国企業を飛び越えることを可能にしている。中国の電気自動車企業は、シリコンバレーで最初に開発した自動運転技術を 中国に持ち帰り、計り知れないほど拡大させてきた。

もう一つの大きな問題は相互主義の欠如だ。私たちは中国のロボットカーメーカーに詳細な道路データ、高解像度の地図、テストのため米国への入国許可を自由に与えている。これに対し、中国はアメリカの自動車企業に対して同様のデータ、地図、入国許可は与えられていない。このため、中国の自動車メーカーは成長市場であるアメリカにおいて有利な立場に立っている。米国のロボットカーが中国で競争するのはほぼ不可能になっている。

テスラは唯一の例外だ。それでも必要なデータに直接アクセスできず、開発目的でデータを中国国外に持ち出すこともできず、差別されている。その結果、百度(中国最大の検索エンジン)の自動運転部門などの中国企業は、百度の本拠地である中国(将来的には世界最大のロボットカー市場)でテスラに最大3~5年のリードを保っている。

中国ではすでに米国よりもはるかに多くのロボットカーをテストしている。中国自動車工業協会によると、 2030年までに中国で販売される新車の20%が自動運転になるという。さらに70%は高度な運転支援技術を使用する。そうすると、2030年に中国で販売される新車のうち、完全に人間が運転する車はわずか10%になる。

このことから明らかになったのは、中国国籍のエンジニアや中国のロボカー企業がアメリカで活動することのリスクを軽減するために、米国政府が多くの対策を講じていないことだ。

アメリカ下院の4人の議員、ティム・ウォルバーグ氏、デビー・ディンゲル氏、ボブ・ラッタ氏、マーク・ヴィーシー氏は、この問題に注目している。2023年7月18日、4議員はプレスリリースと書簡をブティジェッジ運輸長官とライモンド商務省長官に送り、中国のロボットカーに白紙小切手を与えることのリスクを警告した。

書簡には、「中国はすでに世界基準の設定、サプライチェーンの構築、そして独自技術の展開に向けてその空白を埋めつつある」書いてある。

さらに「これらの車両が収集する膨大なデータは、中共に米国に対する前例のない優位性を与える可能性がある。北京政府はすでに国内の反体制派を特定するためにビッグデータ分析の利用を先導しており、我々はこうした戦術が国内外で展開されることを懸念している」と付け加えた。

下院議員たちが書簡を送って以来、  CNBC と 日経アジアレビューは米国における中国のロボットカーのテストを報道してきた。しかし、1年間、米国政府は米国民と米国企業を守るために具体的な行動を取っていない。

ライモンド氏は5月に、「少なくとも今秋には、中国にデータを送信する米国のネットワーク接続車に規制を課す」と述べた。しかし、これでは規制が少なすぎるし、遅すぎる。中共は歴史上、他のどの敵よりも我々を苦しめている。

 

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
時事評論家、出版社社長。イェール大学で政治学修士号(2001年)を取得し、ハーバード大学で行政学の博士号(2008年)を取得。現在はジャーナル「Journal of Political Risk」を出版するCorr Analytics Inc.で社長を務める傍ら、北米、ヨーロッパ、アジアで広範な調査活動も行う 。主な著書に『The Concentration of Power: Institutionalization, Hierarchy, and Hegemony』(2021年)や『Great Powers, Grand Strategies: the New Game in the South China Sea』(2018年)など。