「祖父の銀行を受け継ぐ」 小学生発言に中国国有銀行が騒然

2024/06/16
更新: 2024/06/16

中国で、ある小学生の将来の夢が「私も銀行長になって家業を継ぎたい」という発言をめぐり、激しい論争が巻き起こった。

4月3日、中国のソーシャルメディアプラットフォームWeiboには、ある小学校の教室で撮影された児童の将来の夢を発表する映像が人気ランキングの上位に入り、多くの注目を集めた。

この動画には、一人の少年が登場し、「僕は将来、中国農業発展銀行の行長になり、父の跡を継ぐつもり。なぜなら、祖父が中国農業発展銀行の行長であり、母が同銀行の副行長だからだ」と述べている。

中国農業発展銀行は中国唯一の農業分野の国有銀行であり、国務院の傘下に位置する中央金融機関だ。農業・農村・農民の発展を目指し、農業分野の中小企業融資などを扱う。またグローバル投資家を対象に債券を発行し、政策資金を調達する機能も行う。

少年が国有銀行を「一族の資産」とした発言は、ソーシャルメディアはもちろん、多くの現地メディアを通じて報道され、注目を集めた。この発言によって波紋が広がる中、中国農業発展銀行はまだ公式な立場を明確にしていない。

ただし、銀行関係者によると、少年の主張は事実ではないと報じられている。

中国紙「金融時報」はこの銀行関係者にインタビューし、「銀行が独自に調査した結果、子供の祖父はある支店で20年近く勤務した後、退職した元職員であり、母親も普通の幹部であることが分かった」と報じた。

経済専門誌「金融一線」は会社関係者を通じて「本社では事実ではないことを確認した」とし、「現在、銀行側が全支店を対象に関連内容を緊急調査中」と伝えた。

現地の法律界では、少年の発言がどこまで事実か確認されていないが、もし少年の祖父と母が同じ金融機関に勤務している場合、問題の可能性が大きいという立場だ。

上海で活動するジュダン弁護士はメディアのインタビューで、「少年の祖父と母親が同じ部署に勤務しているのであれば、中国公職機関の人事発令親族忌避原則に違反したことになる」とし、「内部制裁の対象」と話した。

北京のヤン・インチャオ弁護士は、「家族2世代が中国国有銀行の高位職に就いている場合、公的な領域に親族関係という私的な要因が影響する可能性がある。人事発令親族回避原則に違反する可能性がある」と評価した。

ソーシャルメディアでは、銀行側の発表をそのまま信じるのは難しいという反応とともに、当該ニュースを伝えた記事に批判的なコメントが続いた。

あるネット民は「この子は飾らずに本音を言ったのだ」とし、「我が家の財産なのに、どうして他人に与えることができるのかという意味だ」と解釈した。

別のネット民は「これが今の銀行圏の人脈主義の現実」とし、「(人脈採用が)他の支店に分散されただけで、子供の言葉は間違っていない。この子も大きくなって銀行に就職することになるだろう」と主張した。

「そんなことはないのか? 子供を信じるべきか、銀行を信じるべきか」「幼い頃から『知識は運命を変える』と教えられてきたが、現実はそうではない」「3代にわたるタバコ公社の世襲、3代にわたる税務機関の世襲、3代にわたる鉄道公社の世襲がすべてニュースで報道された」と書いた人もいた。

 

徐天睿
エポックタイムズ記者。日米中関係 、アジア情勢、中国政治に詳しい。大学では国際教養を専攻。中国古典文化と旅行が好き。世界の真実の姿を伝えます!