27日にソウルで開催された日中韓首脳会談では、日中韓自由貿易協定(FTA)交渉の再開と、地域的な包括的経済連携(RCEP)の推進で合意がなされた。3カ国の自由貿易は、日本経済にどのような影響をもたらすのだろうか。大紀元の取材に答えたベテラン外交官は、中国が共産政権であることを念頭にしつつ、日本企業は短期的な利益に走らないようにと警告する。
日中韓と東南アジア諸国からなるRCEP。全体のGDPに占める中国の比率は61.8%とされ、日本の14.1%をはるかに上回る(国際協力銀行、24年2月資料)となる。また、日中韓3国で、人口、GDP、貿易総額において世界経済の3割程度を占める。
人口と貿易総額を牽引する中国だが、コロナ以降は経済の失速が顕著になっている。中国国家統計局によると、2023年第1四半期の国内総生産(GDP)成長率は前年同期比で4.5%増にとどまり、市場予想の5.3%増を下回った。
経済の失速に加え、米国の対中姿勢がますます硬化しているなか、中国共産党はFTAやRCEPを通じて、日韓との距離を縮めようとしているとの見方がある。
外交評論家の武内和人氏はX(旧ツイッター)で、「中国国内の有効需要が低迷している中で、米国が政治上の理由から保護貿易に動いているため、中国は新たな貿易パートナーを求めています」と指摘している。
台湾の中興大学の劉易鑫研究員は、中国が韓国と日本に恩を売り、米国との差別化を試しているとみている。
「中国は米国に挑戦する条件を整えているが、同盟国の支持を欠く。同盟関係は経済的要求と条件の交換だけでなく、地域の安全保障と軍事的要因も伴う。中国が日米韓を分断するのは容易ではないだろう」と28日付のボイス・オブ・アメリカ(VOA)で述べた。
経済低迷と政治的な抑圧によって外資も中国から脱出している。商務部の統計によると、2023年1月ー4月の外国直接投資(FDI)は前年同期比で3.2%減少し、30年ぶりの低水準となった。特に製造業へのFDIは同23.2%減と大幅に減少した。
日本企業は、将来的なビジョンを見定めることが試されている。アジアに造詣の深い外務省の元ベテラン外交官は、大紀元の取材に対して次のように語る。
「中国経済が下降傾向にある現在、日本企業は中長期的に対応することが必要だ。ビジネスは短期的な損得で動く傾向があるが『政治的な環境がよくなれば経済面もよくなる』とは考えられなくなっている。中国は今後も共産党政権だ。日本は将来の状況への正しい見通しが必要だ」
3カ国の交渉には政治的な駆け引きも働くが、中国がロシアと連動させて講じる日本からの水産物輸入禁止についても、FTAの枠組みが撤廃に「つながるかは不明だ」と指摘した。
4年半ぶりの3カ国首脳会談だが、「友好」や「再出発」などの共産党に甘言に惑わされることなく、日本は懸命な判断が求められてる。
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