コロナ禍のソーシャルディスタンスは科学的証拠に基づいていない 米NIHの元所長が証言

2024/05/24
更新: 2024/05/24

米国立衛生研究所(NIH)のフランシス・コリンズ元所長の証言によれば、6フィート(約2メートル)の社会的距離を置くというルールには科学的根拠が欠けていたという。

5月16日、新型コロナについて調査する特別委員会を率いるブラッド・ウェンストラップ委員長(共和党)は、1月に米議会で非公開のセッションで行われた際のコリンズ氏の証言を公開した。

コリンズ氏は、新型コロナウイルスの起源を巡る研究室からの漏えい説や6フィートの社会的距離のルールなど、コロナをめぐる各種各様の質問を受けた。

その中で、委員が1月に行われた米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ元所長とのセッションに言及した。ファウチ氏は、6フィートの社会的距離のルールは「ただ浮かび上がってきただけ」であり、科学的データに基づくものではなかったと認めていた。

「6フィートという距離を裏付ける科学や証拠を覚えているか」と尋ねると、コリンズ氏は「覚えていない」と返答。

委員が「6フィートを裏付ける証拠は記憶にない、あるいは見当たらないということか」と確認すると、コリンズ氏は「証拠を見たわけではない」と答えた。

コリンズ氏の証言から、パンデミックの最盛期にガイドラインを発行した米公衆衛生当局の関係者は明確な科学的根拠によって裏付けられていないまま、決定を下していたということになる。

ソーシャル・ディスタンスや隔離は科学的か

2020年に新型コロナウイルス感染症が急速に拡大するにつれて、米国疾病予防管理センター(CDC)はソーシャル・ディスタンスについて説明するガイドラインを発表した。

CDCのコロナに関するガイドラインには、人との間に物理的距離を置くことで、呼吸器ウイルスを蔓延させるリスクを下げることができるとしていた。

ウイルスの流行は様々な要因に左右されるため、「安全が保たれた距離を定義する唯一の数値は存在しない」とガイドラインには書かれている。

しかし、2024年3月18日に更新されたCDCの医療環境に関する最新のガイドラインでは、6フィートのソーシャルディスタンスについて何度も言及している。例えば、歯科施設では、新型コロナ対策として、「患者用椅子どうしの間隔を最低でも6フィート確保する」ことを推奨している。また、個人間の「密接な接触」について「SARS-CoV-2の感染者と6フィート以内に15分以上いること」と定義している。

エポックタイムズは、コリンズ博士の証言についてコメントを求めるとともに、新型コロナの予防ガイドラインに6フィートという数字を取り入れた科学的根拠を明示するようCDCに求めた。

また、CDCは今年3月、コロナの陽性者向けのガイドラインを更新し、5日間隔離する必要はなくなったと発表した。

多数の医師がCDCに対し、5日間の隔離勧告を取り下げるよう求めていたが、2月中旬になっても、CDCは取り下げを保留し続けていた。

多くの専門家や研究者らが、パンデミック時の長期隔離の弊害について警告している。例えば、昨年11月、アメリカ心理学会はアメリカ人はパンデミックに関する「集団的トラウマ」に苦しんでいると発表した。同学会は、新型コロナの流行に対する強硬的な防止策(ソーシャルディスタンスに加え、隔離、学校閉鎖、事業閉鎖、マスク着用の義務など)が、人々の心身の健康に悪影響を及ぼしたことを示唆する研究を引用した。

ロックダウンに関する様々な研究を調査した別の研究では、このような措置は新型コロナのパンデミックを抑制する効果的な手段となりうるが、それは「長期的な巻き添え被害を無視する必要がある」と結論付けている。

研究者たちはまた、ロックダウンに関する反対意見が広く検閲されていることにも警告を発している。科学界は間違いを正さなければ、科学に対する社会的信頼を損なうと指摘した。

The Epoch Times上級記者。ジャーナリズム、マーケティング、コミュニケーション等の分野に精通している。