JPモルガン・チェースの最高経営責任者（CEO）であるジェイミー・ダイモン氏は、株主宛の年次報告書において、アメリカが中国への依存によって直面している3つのリスクを指摘し、西側諸国が中国共産党の脅威を軽視していると警告した。

米中間の地政学的な緊張が高まる中、ダイモン氏はアメリカの経済依存と国家安全保障のリスクに光を当て、長期的で包括的な経済安全戦略の必要性を力説した。

アメリカ最大の銀行のトップであるダイモン氏は、4月8日に公開された株主宛の手紙において、米中間の地政学的な緊張が最も懸念される問題だと述べた。

西側諸国の油断と中共の影響力拡大

ダイモン氏によれば、西側の政府や企業は、中国共産党の増大する影響力とそれがもたらす潜在的な脅威を根本的に見誤っているという。彼は、西側が過去20年間にわたって油断している間に、中国は国家の経済安全を総合的かつ戦略的に強化してきたと指摘した。

中国経済は現在、多くの問題に直面しているものの、その脅威はまだ消えていないということだ。

中国で最も大きな不動産開発企業である恒大集団は、かつて市場価値が500億ドル（約7兆5912億円）にも達していたが、現在はほとんど倒産状態にあり、その債券の価格は1セント（約1.5円）未満に落ち込んでいる。中国は、深刻な不動産危機に直面しているのだ。

同時に、若者の失業率が歴史的な高さを記録しており、消費者の価格への敏感さが高まっている。その結果、人々は高級ブランドより安価な代替品へと投資の方向を変えている。

アメリカが直面する3つの主要な依存リスク

またダイモン氏は、アメリカが中国に対して抱える3つの依存度が増しているため、中国共産党はアメリカに対してある程度のコントロールを持っていると述べた。

第1のリスクは、アメリカの供給網で中国を唯一のリンクとして、企業が中国に過度に依存していることである。これにより、供給網の脆弱性が高まり、柔軟性が失われる可能性がある。

ダイモン氏は、この第1の依存関係は主に消費財やスニーカーなどで見られ、「それほど重要でも複雑でもなく、最終的には解決可能」と述べた。

第2のリスクは、アメリカが国家安全保障の面で中国に依存していることである。ダイモン氏は、これを最も重要な問題と考えている。

「アメリカは、国家安全保障に欠かせない材料を競合他国からの供給に頼るべきではない」と彼は指摘した。「レアアース、5G、半導体、ペニシリンや基本的な医薬品の原料などがその例である」

「さらに、敵が軍事力を強化する可能性がある重要な技術を共有してはいけない」とも彼は述べた。

第3のリスクは、電気自動車、人工知能、再生可能エネルギーといった重要な産業が中国に依存している状況である。ダイモン氏は、これらの産業でアメリカがリーダーシップを取るべきだと強調した。

「重要な資源や技術を潜在的な敵に渡してはならない」と彼は力説した。

ダイモン氏が提案する経済安全戦略と米中関係の未来

ウォールストリート（ウォール街）のトップに立つ68歳のダイモン氏は、中国共産党との競争においてもアメリカが明確な優位を保っていると信じている。

彼はアメリカが豊かな食料、水、エネルギー資源を持ち、平和な国境を維持している国だとし、1人当たりのGDPが年間8万ドル（約1214万円）を超え、世界で最も繁栄している経済を有していると述べた。

「何よりも大切なのは、私たちの国が本当の自由を謳歌しているという事実である」と彼は述べて締めくくった。

ウォールストリートは、中国共産党と非常に緊密な関係を築いているビジネス集団である。ジェイミー・ダイモン氏は、中国共産党が新型コロナウイルスのロックダウンを解除した後、すぐに中国を訪問した米国のビジネスリーダーの中の一人であった。米中の地政学的な緊張が高まっている状況でも、彼は引き続き対話を通じての関係維持を推進している。

ダイモン氏は、「経済の大きさを考慮すると、アメリカは中国との関係を維持するべきであり、それはアメリカと他の国々の繁栄を守るためにも重要である」と述べている。

しかし、同時にダイモン氏は、「アメリカの安全を確保するためには、長期的で包括的な経済安全戦略を策定し、実行に移すことが必要である」とも力説している。