香港の新治安条例がスピード可決へ 周庭さん懸念示す「日本人や企業にも悪影響」

2024/03/15
更新: 2024/03/16

香港の立法機関「立法会」では15日、中国共産党の影響を強く受ける治安条例の一週目の審議を終えた。「スパイ罪」や「国家転覆罪」などの法定刑を大幅に引き上げ、弁護士との接見も制限する。早ければ3月中に可決する。有識者は基本的人権への侵害に懸念を示している。

今回の立法は、香港の最高法規である「基本法」の第23条に関するもので、中国共産党に反対する行為を取り締まることが主要な目的だ。「反逆」「反乱、煽動、裏切り」「国家機密の窃取とスパイ行為」「国家安全を脅かす破壊活動」「外国勢力の干渉」の5つの重罪が設けられたが、いずれも定義は非常に広範で曖昧であると指摘されている。

香港の立法会は13日、わずか7日間で合計181条の条文からなる法律案をまとめた。香港の行政府は40項目に及ぶ修正案を提出し、より規制を厳しくする内容に修正。15日に一読会を終えた。香港の立法会では親中派が多くの議席を占めており、早ければ3月中に可決・成立となる。

香港の民主活動家・周庭(アグネス・チョウ)さんは13日、「23条によれば、扇動の意図がある行為をすると、最高で7年の懲役刑となる。暴力行為と関係なく、中国政府や香港政府への『軽蔑』や中国地域間の『憎しみ』を扇動するだけで犯罪になる」と指摘。表現の自由が大きく制限されかねないと警鐘を鳴らしていた。

また、国家安全に関わる容疑で逮捕されれば、弁護士との接見も最大48時間禁止され、最長14日間の拘留が可能になる。「23条が可決されたら、市民は弁護士に会う権利すらなくなる」と周庭さんは危惧した。

今回の立法では、行政長官と行政会議に対し、国家安全に関する附属法を制定する権限も付与する。違反者には最高7年の禁錮刑と約6万4000ドルの罰金が科される可能性がある。

香港浸会大学のジャーナリズム学部元助教授の杜耀明氏は、香港政府が突如23条の立法を加速させたことについて、「北京が主導していることを反映している。香港の高度な自治は幻想だったことが証明され、国際社会の疑念を深めるだけ」と指摘した。

すでに民主主義が大きく損なわれている香港で、自由はまさに風前の灯火となっている。香港政府は法案が欧米の国家安全法を参考にしていると説明するが、市民による政府のチェック機能は脆弱だ。

2020年6月に全国人民代表大会で「香港国家安全維持法」(国安法)が成立して以降、香港の自治権が大幅に制限され、中国共産党政府による香港への介入が強まった。同法成立を受けて、欧米諸国は香港への税制など優遇措置を停止した。

政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。
日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。