このごろ、華人圏のSNSで注目されているのは「ネット上で公然と値をつけられ販売されている、中国農村の障害をもつ若い女性」の話題である。
中国SNSの投稿をスクリーンショットした画像をみると、女性たちは「彩礼」という名目で、金額が明示されている。
ネットを使った「人身売買」
「彩礼」とは、結婚の際に男性側から女性側へ贈る金銭のことだ。言葉としては、日本における持参金や結納金に相当する。
しかし、この場合は、明らかに売られる女性の「値段」を意味している。つまりこれは、ネットを使った「人身売買」なのだ。
その値段は、およそ12.6万~18.8万元(約260万~400万円)ほど。彩礼の金額のほかに、女性の紹介文も添えられている。
それらは、例えば「少し精神的におかしい」「頭が少し弱い」「しゃべれないが頭は正常」「口がきけないが穏やかで従順」といった内容だ。こうした文言が意味するのは、ここで「販売」される農村女性は、年齢は比較的若いとしても、知的障害や身体障害をもった女性であることを含んでいる。
そうしたネット広告の最後には「気に入ったら、私に連絡すれば段取りする」という文言まである。
中国国内の情報を発信する、著名なツイッターアカウント「李老师不是你老师(李先生はあなたの先生ではない)」は4日、中国の人気動画共有アプリ「快手」に投稿された「女性たちの販売情報」に関して、自身の投稿をした。
「李老师」は、その投稿にこう書いた。
「彼女たちを待っているのは、おそらく『鎖の女性』のような運命だろう」
「鎖の女性」とは何か
「李老师」が書いた「鎖の女性」とは何か。一時世間を震撼させた「鉄の鎖の女性」事件で、首に鉄の鎖が巻かれ、自由を奪われ続けたある女性のことだ。
昨年2月、中国の江蘇省の農村で、少女の頃に拉致され、人身売買されてきたと見られる中年女性が発見された。ボランティアの人権団体に発見された当時、女性は首に鎖が巻かれた状態で、氷点下に冷え込んだ離れの小屋に監禁されていた。
女性は、8人(またはそれ以上)の子供を「生まされた」だけでなく、夫の了解または黙認のうえで、地元政府の複数の役人に凌辱されたと見られている。
当時はまだ「一人っ子政策」の時代であった。そのため、複数の子供ができた夫は、地元役人に「目こぼし」してもらう対価として、金銭の代わりに自分の妻を「使わせた」のだ。
そうした想像を絶する虐待のなかで、この女性は、精神に異常をきたしてしまった。
現在この女性は、中国当局によって、治療の名目で精神病院に監禁されているという。しかし外部からは、彼女の状況を知ることは出来ない。
この女性は、今や「中国の女性の苦難」を象徴するシンボルとなっている。ネット上で売買される障害をもつ女性がいるとすれば、この「鎖の女性」と同じように、売られた先で、すさまじい虐待が加えられる可能性が高い。
今が21世紀であることを忘れるような事実であるが、中国共産党支配下の現代中国では、世界史における「奴隷貿易の時代」のような事象が、実際に存在すると考えるしかない。
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